北海道医師会

新型コロナウイルスに関する情報

コロナウイルスクラスターを経験して

2021年05月01日

コロナウイルスクラスターを経験して

旭川市医師会
JA北海道厚生連旭川厚生病院
本間 玲子

 臨時入院や夜中の緊急入院が多かった11月のある週。やっと今週の救急当番が終わると、一息ついていた金曜の23時。携帯が鳴り、ディスプレイに病院の番号表示。また救急外来かと電話に出ると、それは事務からの電話。「当院のスタッフが1名コロナウイルスPCR検査陽性になりました」と。翌日土曜日からは久々 offの予定でしたが、早朝より集合しPCR検査施行。午後にはWEB講演会の座長の予定があり、万が一のため、リモート参加の準備。幸いPCR検査は陰性でしたが、その後は皆様がご存じの通りの経過となりました。
 自身の入院患者様も、半数がコロナPCR陽性。呼吸器科Dr.に相談しつつ、SNSで治療をたくさんしているであろう同期の先生方からのreal worldの治療のアドバイス、情報を集めながら治療をしましたが、数名が重症化。糖尿病のコントロールの重要性を実感。多くの患者様が一斉に発症したために、自院で呼吸管理をする余裕がなく、何度か高濃度の酸素を投与しながら、患者様を救急搬送。防護服をfull装備で着ると、外に出たとたんに温度差でゴーグルが曇って周りが見えなくなったことを鮮明に覚えています。
 市内の基幹病院の先生方には大変お世話になりました(特に旭川赤十字病院の呼吸器科、麻酔科の先生方には本当にお世話になりました)。治療を引き受けていただいたお陰で、患者様はリハビリを経て無事に退院し、日常生活に戻られております。
感染の危険や恐怖と闘いながら、日々奮闘していた看護師、スタッフには本当に頭が下がります。率先して感染対策を頑張っていただいた、NEW感染対策チームの先生方にも。お陰で今日があるのだと思います。いろいろな意味で、本当に貴重な、2度と経験することのない、いや、したくない出来事でした。
 自分の人生を振り返ると、5年前に生死の境をさまよう大病を経て、また、今回はこのような本当に希少な経験をし、残された人生、今後の生き方を考える良い機会なのかもしれません。
 以前と同じようではありませんが、クラスターの時期に比較すると日常診療、生活が戻りつつある現在、日々の暮らしに感謝しつつ生きていこうと思う今日この頃です。

(令和3年5月1日 北海道医報 第1232号)

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