スポーツや仕事、勉強のあとに、私たちはよく疲労を感じます。疲労は心身の消耗を知らせるサインですから、休息や睡眠をたっぷりとって早めの回復をはかることが大切です。疲れているのに無理を重ねるとやがて過労となり、体力や抵抗力が弱まって思わぬ病気になることもあります。多忙でストレスの多い生活を送っている人は、疲れを翌日までもちこさないよう注意し、疲労回復の効果がある食品をじょうずに利用するなど、食生活にも工夫しましょう。

 疲労が重なって、病気になる人が増えています

●疲労には次のような分類法があります。
精神疲労と肉体疲労…もっとも一般的な分類のしかたで、勉強やデスクワーク、精神的な緊張によっておこるものを「精神疲労」、スポーツやからだを動かす作業によっておこるものを「肉体疲労」といいます。からだを動かすときには、筋肉に指令をだす中枢神経系がはたらくことから、精神疲労もいっしょにおこるといわれます。
急性疲労と慢性疲労…ひどく疲れたという感覚があっても普通は2〜3日で回復します。こうした一過性の疲労を「急性疲労」といいます。これに対して回復しないうちに次の疲労がかかり、それが蓄積してしまった状態を「慢性疲労」といいます。慢性疲労がさらにひどくなると「過労」とよばれる状態になり、体力と気力が低下して日常生活に影響がでるほか、生命にかかわる重大な病気につながることもあります。
部分疲労と全身疲労…腕や足の筋肉痛、目の疲れなど、からだのある部分を酷使したときにおこるのが「部分疲労」です。一方、だるさや脱力感がからだの全体におよぶのが「全身疲労」で、これは軽い作業を長時間行ったときにおこりやすいといわれます。

疲労の分類
精神疲労
肉体疲労
→勉強、デスクワーク、精神的な緊張によっておこる
→スポーツ、からだを動かす作業によっておこる
急性疲労
慢性疲労
→2〜3日で回復する一過性の疲労
→疲労が重なり蓄積されてしまった状態
部分疲労
全身疲労
→腕、足、目など、部分的におこる疲労
→だるさや脱力感が全身におよぶ

多くの現代人が精神疲労を感じている!
疲労の分類のなかで現代人に増えているのが精神疲労です。仕事や人間関係などのストレスが大きな原因とみられ、総理府の世論調査でも半数以上の人が何らかの精神疲労を感じていると回答しています。精神疲労は肉体疲労に比べて回復しにくいというやっかいな性質をもっています。軽い運動をしたり、趣味を楽しむなど、自分に合った方法で気分転換をはかることが早期回復につながります。

●中高年になるほど疲労に弱くなる!
若いうちは仕事をしながらでも疲れをとることができますが、中高年になるとそうはいきません。年齢とともに回復力が衰えて、疲れを自覚する感受性も鈍くなるためで、知らず知らずに疲労をためこんでいる場合もあります。その対策として毎日十分な休息と睡眠をとり、週に2〜3度のペースで運動すると、基礎体力が向上して疲れにくくなり、回復力が増すといわれます。ただし、運動のしすぎや疲れているときの運動は、かえって逆効果になるので自重しましょう。

●疲労が限度をこえると当然死の原因に。
疲労がもたらすもので最もこわいのが突然死(過労死)です。一見、元気そうにみえる人が当然倒れて命を落としてしまうもので、働き盛りのビジネスマンに急増しています。積もり積もった疲労が負担となり、高血圧や動脈硬化が悪化して、それが直接の死因となる心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を引きおこすと考えられています。多くの場合、突然死にいたる前には頭痛、めまい、手足のしびれ、胸痛、息切れなどの前ぶれとなる異常があらわれるといいます。このような症状があるときは心身を休め、症状が重いときはすみやかに医師の診察を受けるようにします。

極度の疲労感におそわれる慢性疲労症候群
ここ数年、「慢性疲労症候群」という病気が関心を集めています。患者はビジネスマンや若い女性に多く、微熱、のどや関節の痛み、記憶力の低下などの症状があり、健全な日常生活を送れないほどの疲労感や脱力感が長期に渡ってつづくといいます。原因としてウイルス感染説、ストレス説、免疫異常説などが挙げられていますが、はっきりした解明はされていません。いずれにせよ、原因不明のひどい疲れが長引くときはこの病気を疑い、内科などで一度検診を受けましょう。


 疲労回復のため食生活にも工夫しましょう。

●疲労回復を早める糖質を適度に。
米やパンなどの主食、いも類、菓子類に多く含まれる糖質はからだのエネルギー源になる栄養素です。疲れたときには甘いものを食べたくなるという生理現象もおこるように、糖質には血糖値を高め疲労回復を早める作用があります。糖質が不足すると基礎体力が低下して疲れやすくなるので、毎日の食事から適量(男性約400g・女性約330g)をとりましょう。スポーツやからだを動かす仕事をしている人はエネルギー消費量が多いので、それよりもやや多めに補給するのが理想です。

●糖質といっしょにビタミンB1の補給を。
ビタミンB1は「疲労回復のビタミン」ともいわれ、体内で糖質を分解してエネルギーに変えるはたらきをします。体内に蓄積することができず、不足するとエネルギーの代謝が悪くなって慢性疲労や気力減退などの原因になるので、毎日の食事から必要量(男性約1mg・女性約0.8mg)をとりましょう。豚肉、そば、玄米、魚類、豆類などがビタミンB1を多く含む代表的な食品です。



●すっぱい食べもので疲労の予防と解消を。
すっぱい食べものには、クエン酸や酢酸などの有機酸という成分が含まれています。有機酸をとると老廃物の排泄がうながされて疲れにくいからだになります。また、糖質の代謝がよくなり、疲労素といわれる乳酸がすみやかに分解されて疲労回復が早まります。疲れやすい体質の人や疲れぎみの人は、ウメ干し、酢、レモンやみかんなどの柑橘(かんきつ)類を毎日一品以上とるよう心がけましょう。

●こんな食べものも疲労回復に効果あり!
そのほか疲労回復に役立つ食べものに、ニンニクやニラ(ビタミンB1の消化吸収を高めるアリシンを含む)、やまいもやゴマ(滋養強壮作用にすぐれ、全身疲労をとる)、ショウガ(全身の倦怠感や脱力感をとる)、もち米(高エネルギーで活力が出る)などがあります。これらの食品をうまく組み合わせて料理にしたり、糖質、ビタミンB1、クエン酸の豊富なものと食べ合わせると、いっそう効果が高まります。

牛乳には疲労に効く栄養素がたっぷり!
完全栄養食品といわれる牛乳には、からだのエネルギー源となって疲労回復を早める乳糖(糖質)、目の疲れをとるビタミンB2、気持ちのイライラを静めて精神疲労をやわらげるカルシウムなどの栄養素がバランスよく含まれています。さらに消化吸収率のよいタンパク質と乳脂肪も豊富です。タンパク質と脂肪が不足するとスタミナや気力が低下して疲れやすくなるので、疲労を予防するという意味からも毎日コップ1〜2杯の牛乳を飲みましょう。牛乳を飲んでいると胃がんや大腸がんなどの発生率が低くなることも医学的な研究で明らかになっています。