活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日本医師会共催:医学生、研修医等をサポートするための会「医学生・研修医と語る会」〜「女性医師も男性医師も輝いて生きるために 〜もしも自分が厚生労働大臣なら、北海道知事なら…」

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


 北海道医師会では、医学生・研修医が意見交換を通じて、男女共同参画やワークライフバランスについて、性別を問わず、若い時期から明確に理解してもらうことを目的に「医学生・研修医と語る会」を開催しており、本年度は11月22日(金)に北海道医師会の理事会室で開催した。
 当日は、医学生8名と研修医2名が参加し、研修医と医学生によるピア・エデュケーション形式で「女性医師も男性医師も輝いて生きるために」をテーマに討論していただいた。
 参加者から、KKR札幌医療センター斗南病院の研修医近藤知大さんとIFMSA-Japan(札幌医科大学3年)石畠彩華さんの2名に進行を務めてもらい、討論が始まった。
 なお、この会には長瀬道医会長、深澤・藤原両副会長、伊藤常任理事、女性医師等支援相談窓口のコーディネーターがオブザーバーとして参加した。

話題提供「女性医師も男性医師も輝いて生きるために」

 討論開始の前に、討論のきっかけとなるように「男性育児休暇について」と「夫婦別姓について」の2つに絞りデータを提示した。

(1)女性医師の国家試験合格者は年々増加しており、全体の約3割にまでなっているが、女性医師比率は全体の約19%程度である。女性医師が結婚相手に求めるものは、お互いの仕事を理解し合えること、家事育児への積極的分担、義父母など実家との関係、ある程度の教養や学歴・収入となっている。
  育児休業の取得については、条件が合えば取得したいと考えている男性が約4割もいるが、男性が育休を取得できる雰囲気はなく、理解度が低いのが現状である。育休の取得は、夫婦や家庭にはプラスだが職場や家計にはマイナスだという考えが強い。日本男性の育休取得率が低いわけは、昇進に影響するため、社会的に恥とされているため、妻が専業主婦である場合が多いため、法律や制度が育休取得を阻んでいるためなどが考えられる。

(2)女性医師から、結婚後も旧姓で働きたいという声が上がってきている。結婚することで名前が変わると、どこか働く女性として抵抗を感じるようである。医師会の加入は、戸籍上の名前でのみ入会を認めており、国民健康保険の旧姓加入についても認められていない。組合の健康保険の場合は、独自のルールで旧姓使用を認めている場合もある。



テーマ「もしも自分が厚生労働大臣なら、北海道知事なら…」

■男性の育児休暇について
○男子学生(3年)
 育児休業取得率の推移について、女性医師が取得できているのであれば、制度次第では男性医師の育休取得も可能であると思う。
○女子学生(3年)
 同級生の男性を見ていると、家事も何もできず、自分の身の回りのことですらままならない男性が多いので、学生の時から将来を意識して過ごしてほしいと思う。
○男子学生(3年)
 私は、できれば育児休業を取得したいと思う。勤務先が育休を取得しやすい環境であれば良いが、研修医の時などはどうしても取得しづらいと思うので、学生時代に子供を作ってしまいたいと考えている。学生の内であれば休学してでも育児に参加したい。
○女子学生(5年)
 育児休業を取得することによって、昇進に影響すると考えることは納得できる。日本の社会には、そのような風潮が残っていることは事実だと思う。知り合いの女性医師は、育休を取りたいが二人の上司が育休を取得中なので、苦しい立場にいると言っていた。育休を取るようただ勧めていくだけでは意味がなく、周りの医師に負担をかけることは避けなければならない。全員が育休を取得し、みんなが順番に負担を負うようなシステムがあれば上手く回っていくと思う。
○男子学生(5年)
 男性医師が育休を取得しやすくするには、上司が先頭をきって育休をとるなど、ロールモデルが多く出てくれば、男性医師の意識も変わってくると思う。
男子学生(5年)
 私たちは、最初から男女共同参画について耳にしているが、上司の先生方はそうではないと思う。今の学生や研修医が、将来役職に就く頃には男性の育休取得も活発になっているのではないかと楽観的に考えている。時間が経てば、きっと解決している問題だと思う。
○女子学生(5年)
 男性医師の育休取得に限らず、子育てや家事を夫婦で協力して行うことは、その後の医師としての仕事にも必ず役立つと思う。男性は仕事、女性は家庭というのではなく、お互いに尊重し理解し合えることにも繋がる。女性医師が育休を取るから、男性医師に負担がかかっているとよく言われるが、男性医師が育休を取った場合、男性同士でも同じことを言うのか聞きたい。根本的に育休は女性が取るものという考えがおかしいと思う。育休を取得した医師の内、どのくらいの期間休んでいたかのデータを知りたかった。
○研修医
 私は今まで、男性で育休を取っている医師を見たことも聞いたこともない。子供が生まれる時に休むことさえ許される雰囲気ではない。研修医なら尚更、立場的にも育休を取得することは不可能ではないかと思う。病院によっても理解の度合いは大分違ってくると思う。
○男子学生(5年)
 「育児休業」と聞くと休むというネガティブなイメージが強いので、ポジティブな印象を受けるような上手い言葉に変えてみてはどうか。
○男子学生(3年)
 一般的に、男性が育休についてどのようなイメージを持っているかはわからないが、私は、子育てにすごく興味がある。仕事を休んでまでも、子育てに関わることの大切さや楽しさをアピールする普及活動があってもいいと思う。
○男子学生(3年)
 私は、子供の時に父親が野球の練習に付き合ってくれていたことが、大切な思い出となっているので、自分の子供に対しても同じことをしてあげたいと思っている。
○女子学生(5年)
 普段、同級生と話していて思うことは、専業主婦の母に育てられた人は、育休を絶対取りたいと考えていて、働いている母に育てられた人は、育休は最小限にして短期間で復職したいと考えている学生が多い。また、育休の対象を自分の子供だけではなく、孫まで広げれば、教授などの上司も育休を取得でき、良い雰囲気作りに繋がるのではないか。 
○女子学生(3年)
 育った環境によって、結婚相手の働き方について求めるものが変わってくるということなので、男性も女性も賢く自分のパートナーを選ぶという視点が大事だと思う。全てが希望どおりにいくことはなく、自分の人生なので、優先順位を決めて選択していかなければならないと感じている。
○男子学生(3年)
 アメリカでは、国民が野菜を食べないということで、ウィークデイベジタリアンという毎日ではなく週に3日だけ野菜を食べるようにしていた。育休も例えば1ヶ月丸々休むのではなく、週3日の休みを3ヶ月間などにしてはどうか。
○研修医
 当院の放射線科の女性医師は、木曜日の午後からは休みになっている。職場によっては、色々な働き方が可能だと思う。
■夫婦別姓について
○男子学生(3年)
 私の妻は外国人なので、妻は結婚しても名前が変わらず、私と同じ名字がつかないことを不満に思っている。結婚して名前が変わることを喜ぶ人もいるので、どちらか選択できると一番いいと思う。
○藤井常任理事
 旧姓で医師免許を取得し、結婚していても旧姓のまま働きたいと思うか。
 また、医師免許証は、結婚して名前を変更すると医籍番号だけではなく取得年月日まで変更になってしまうので、医師としての経験年数が浅く見られてしまうことがある。
○女子学生(3年)
 個人差があると思う。私は、名字が変わったところで他は変わらないので気にしない。
○女子学生(5年)
 私も全く気にならないが、例えば10年目、15年目とかに名字が変わり、患者さんがわからなくなってしまうのは不安に思う。免許の名字はどちらでもいいが、勤務先では旧姓のままにできれば一番いい。
○女子学生(3年)
 母は医師で、医師になるのであれば医師免許を取得する前に結婚した方が良いとよく言われていた。免許取得後に名前を変更してしまうと、空白の期間ができてしまい、同期より劣っていると思われるので不満だと言っていた。
○男子学生(5年)
 免許の取得年月日が変わってしまうのはおかしいと思うが、同じ名字になってこそ家族という印象を持っている。勤務先だけ旧姓のままなど、柔軟に対応できればいいと思う。
○男子学生(5年)
 もし自分が厚生労働大臣・北海道知事なら、法律自体を変えるのは難しいと思うので、医師免許については戸籍名を使用し、医師会の加入については旧姓のままでも認められるようにしたいと思う。そうすれば、医籍番号の変更も不要になるのではないかと思う。
○研修医
 当院で最近結婚した医師は、論文に力を入れてきたので、結婚して名字が変わり、今までの実績が無くなることが不満だと言っていた。どのタイミングで結婚するのかが重要になってくるのではないかと思っている。
■その他
○男子学生(5年)
 男性の育休取得や夫婦別姓については、学生等にもっと周知してほしい。男性医師が育休を取得した経験談や夫婦別姓による医師免許の問題など、知らない人は多いと思う。
○男子学生(3年)
 育児休暇については、みんなが取得できるような環境が望ましいが、一方で、子供を作らないで一生医師として働いていく選択をした人も尊重されるような職場環境でなければならない。
○女子学生(5年)
 子どもがいない医師にとって、子どものいる医師の地位を向上させようという動きは、必ずしも快いものではないと思う。子どものいない医師の考えや意見を聞くことも大切ではないかと思う。
○女子学生(3年)
 私は、今日のテーマを聞いたときに、厚生労働省というより文部科学省に働きかけたいという気持ちがあった。大学では、医師として働いていく上でのワークライフバランスについて考える講義等がないので、今問題になっていることや先輩医師の経験談等を学ぶことができる時間を学校教育として作ってもらいたい。
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