活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

北海道医報第1137号 「女性と医師という職業」

コラム(北海道医報第1137号「羆熊通信〜郡市医師会だより〜」に掲載)  女性と医師という職業

恵庭市医師会 尾形病院副院長
尾形 直子


 この春、長男が中学受験し私立の中高一貫中学校に進学した。一応進学校なので選抜のクラスがあるが、そのクラスの7割ぐらいが女子だったし、入学式の総代も女子で、在校生代表も女子。全体の人数は男子の方が少々多いのに、である。つまりいかに勉強のできる優秀な女の子が集まっていることか…。そして将来の職業として男女問わず、依然「医師」は人気がある。進学校では医学部を目指す女子は少なくないし、医学部の女子学生の割合は年々増加している。 
 出席した父母会で、たまたま近くにいた同級生の保護者の上の娘さんが高校3年生で国立の医学部受験予定という話をされた。そして「医者になってよかったと思う?今満足しているの?」と質問された。一瞬答えに詰まってしまった。それは理想に燃える優秀な娘さんを前にして、多分状況に流され学生の時に考えていた医師としての道とは大きく異なってしまったという負い目を感じたから。でも健康でかわいい男の子3人に恵まれ、何事にも理解のある夫と姑のいる円満な家庭生活を得て、多くの患者さまを抱えて元気で毎日病院に勤務している自分。満足していないわけではない。結局「結婚・出産・育児を優先させてしまい医師としてキャリアを積む上であきらめたり失うものも少なくなかった。キャリアを優先させれば、結婚や出産・子どもの数をあきらめた人もいると思う。男性とは違う覚悟が必要と思う」と答えた。
 出産するなら数ヵ月の産休は不可欠となる。たった数ヵ月でも医師としての仕事は離れてしまうと復帰にはかなりの気力と強い意志が必要と思う。かつ、妊娠中も普段とはやはり体調がかなり異なり、また個人差も大きく具合が悪かったり、妊娠中毒になることもある。産後の赤ちゃんはとてもかわいいけれど世話は24時間になるし、法律で決められている産後8週間の休暇で体調がもとに戻るわけではない(回復の個人差が大きいので、個人的にはもう少し長くてもいいのにと思った)。妊娠・出産・子育てによって体力・気力を失い、それまで旺盛だった向上心が低下する…。そして自分が社会から必要とされる医師に成長できるのかどうか不安になってしまう…。 
 赤ちゃんを抱えていたときは、とにかくかわいくて楽しい気持ちがほとんどだった。「もう少し大きくなったらもっと楽になるからそれまで頑張ろう」なんて思っていた。けれどやってみて分かってきたことだが、子育てとは大変なのはベビーの時だけではない。むしろ幼児期・学童期・思春期と成長していくほど親としての責任は重くなっていく。と同時に仕事の量も責任も重くなっていく。これを何とかこ
なしていられるのには母(姑)の存在が非常に大きい。あらん限りの時間をささげてくれて全面的にサポートしてくれているから。しかしそのような母(姑)の協力が得られない人も少なくない。母(姑)を代理できるお助け制度を社会的に確立できるのだろうか??
 女性の場合は職業問わず、結婚・出産・育児等の家庭生活と仕事の両立は永遠の大きな課題であろう。しかし勤務医の場合、当直や待機がより大きな問題を発生させている。卒後15年経った私の周りを見渡してみると、家庭のある女性医師は非常勤務もやむを得ず、出産をきっかけに完全に家庭に入ってしまい医師をやめている方もいる(ここでは詳細は省略させていただく)。世間ではせっかく国のお金と時間とかけて養成した医師がもったいないと思うだろうし、女子学生が増えている中で、医師会でもそのような女性医師の活用をさまざまに画策しているのだろう。今後の女性医師の活用をどのようにしてもっとうまくやっていくのかを、女性の立場になって考えていくヒントになればと思って原稿を書いた。


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