活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

北海道医報第1131号「報告:女性医師等就労支援事業周知のための臨床研修指定病院訪問」

常任理事・医療関連事業部長 藤井美穂


臨床研修病院訪問を平成24年8月から始め、4つの病院で研修医、指導医、管理者の先生たちと話をすることができました。女性医師等支援相談窓口事業をできるだけ多くの医師に知ってもらうことと、これから医療の現場に飛び込んでいく若い医師たちと話をすることは何かを模索していく2つの目的でした。考えていた以上に得られるものが多い訪問事業となりました。
臨床研修病院訪問で、研修医たちから選択した理由を聞くと「責任を持たされる医療に参加できる」「救急医療に積極的な病院だから」という意見が多くあり、学生生活から実践の場に飛び出した研修医たちの熱い思いが伝わってくるとともに、日々の多忙な臨床にもかかわらず各病院の指導医の先生たちの、真剣に受け止める姿勢に頭が下がりました。研修医たちがこのような環境の中で教育を受け、専門医や学位を取得し成長した後、再び地域の臨床の現場に戻ってきてくれることを期待させる姿を確認することができた熱い時間でした。
つぎに、臨床研修指定病院を訪問したコーディネーターから、その様子を報告します。

砂川市立病院
[平成24年8月17日(金)午後5時30分]
相談窓口コーディネーター 安藤敬子

8月17日臨床研修指定病院との懇談のために、砂川市立病院を訪問させていただいた。
この企画の最初の訪問先だったが、小熊院長はじめ幹部の先生方には大変温かく迎えていただいた。また、1年目研修医2人、2年目研修医4人を含めた若手医師8人の出席があった。医師会からは、長瀬会長、藤井常任理事、安藤コーディネーターの3人が出席した。
初めに長瀬会長から、「出産・育児で医療から離れた女性医師に現場に戻ってほしいと考えて、復職研修支援事業を開始した。今回、お聞きした意見をこれからの医療や相談窓口事業に役立てたい。勤務していない女性医師を掘り起こしたいが、個人情報保護法の関係で同窓会として、臨床に戻る道筋作り、復職までのバックアップをしたいので、勤めていない女性医師をご存知ならば是非知らせて欲しい。」との心強い挨拶があった。
小熊院長は、「当院の常勤医は85名で、うち女性医師は研修医を含め10名以上いる。夫の転勤についてきた育児中の女性医師が2名おり、小児科と内科で午前中勤務をしている。その都度希望にそえられるようにしている」と現状を説明された。
その後、藤井常任理事から質問する形式で意見交換した。まず、「なぜ、砂川私立病院での研修を選んだのか?」という質問に対しては、研修医の答えに男女差はなく「救急でも何でもやらせてくれる」「短時間で多く学べる」「研修医に色々なことをさせてくれる」「研修中は辛いが自信がつく」など先輩研修医からの口コミ情報のウエートが大きかったのに対して、副院長が「当院の特徴は、研修医を全面に出し、必ず指導医が見守る態勢で2年目を中心に実際の診療を行うので、これがやりがいにつながるのだと思う」と答えられた。
次に、育児中の女性医師の大きな負担となっている当直については、50歳以上と女性医師および40歳以上の医長は、救急当番を免除され管理当直のみである。
しかし、主治医制については、臨機応変に対応はしているものの、特に内科系は主治医制ではないと難しく、休日は待機の医師が診ても夜間は主治医が診るそうである。
いつも感じることではあるが、出産前はほとんどの女性医師が意欲に燃えて、自らハードな勤務を望んで頑張っているにもかかわらず、出産後は半日勤務や当直免除など周囲に負担をかけるとともに、自身のキャリアが遅れることも余儀なくされている。
最近、増えている院内保育所は砂川市立病院にも設置されており、女性医師がキャリアを継続できる環境は改善されつつあるが、医師不足の即効薬としても女性医師が現場を離れる期間が短くなること、できるだけ早くフルタイムに戻れる環境が整うことを望んでいる。

医療法人渓仁会手稲渓仁会病院
[平成24年8月29日(水)午後6時30分]
相談窓口コーディネーター 澤田香織

手稲渓仁会病院において、長瀬清会長、畑俊一副会長、コーディネーターとして星井桜子先生と参加してまいりました。田中繁道院長、および浦信行副院長、研修医1年次3名、2年次1名、3年次2名、4年次1名、5年次2名、12年次1名の12名の医師にお集まりいただきました。
長瀬会長および田中病院長の挨拶後、自己紹介から始まりました。
畑副会長より、北海道医師会の組織概要、学会活動、会員福祉制度についてパンフレットに基づいたご紹介に続き、コーディネーター澤田より女性医師等支援相談窓口の3つの事業:育児サポート事業、復職サポート事業、相談窓口についてご紹介させていただきました。特に質問を受けたのは育児サポートです。
育児サポートは、北海道医師会とNPO法人北海道子育て支援ワーカーズが事業者業務委託を行い、保護者に代わりサポートセンターへの支援依頼をいたします。診療の予定外の延長、患者の急変などで迎えに行けない、また子どもの発熱などによる緊急呼び出しがあっても迎えに行けないといった時などしばしばございます。そんな時の保育施設へのお迎え代行支援です。
1)援助が必要な時、保護者、または保育施設から北海道医師会(以下、医師会)へ連絡
2)医師会で聞き取り、支援事業者へ依頼。支援スタッフを調整し、決定した支援スタッフへ伝達
3)医師会に支援スタッフ名を報告。医師会より保育施設へ迎えに行く支援スタッフ名を事前連絡
4)迎えにいった支援スタッフは会員証を提示し、子どもを利用者自宅で預かる
5)保護者は帰宅時に支援スタッフに報酬、実費交通費、実費経費を支払う
6)支援スタッフより医師会へ報告
実際にはこのような流れです。また、病児に対しても、時間内であれば、かかりつけ小児科への受診も可能です。
なお、子育て支援ワーカーズとの事前面談の必要があり、顔の見える方が安心と感じておりましたが、この面談も「医師会が質を担保しているなら不要」という意見もありました。
意見交換では、若い研修医において、具体的に今後入園する保育施設についての不安や、これからの育児を考えると憂鬱な気分になるといった、出産も含めて漠然とした不安がある一方で、出産育児に関して、「先輩医師としてロールモデルになるように指導医から出産を勧められる」、また結婚していない先生からも「休みをとりたい先生がいればサポートしたい」といった肯定的な意見が聞かれました。また、実際にベビーシッターを利用している先生の経験は、まさしく明日から使える実用的な情報で、本当に集約していきたいのはこのような情報と考えます。実際の時短生職員制度、当直及び当直明けの勤務状況は、医療機関にとっても異なりますが、今後の情報として必要と感じました。
医師が仕事と家庭を両立可能にするためのサポート事業の今後の課題として、利用するハードルをもっと低くしなければなりません。手続きの簡素化といった合理的な考え方も導入する必要があります。
そして何よりも、この支援を利用してくださる医師の皆さまが、臨床や研究の場面でご活躍してくださることが最も大切です、「なぜこの手稲渓仁会病院を選んだか」との質問に対して、研修医の皆さまが「輝いてみえる研修医」、「魅力的な指導医」の存在を挙げておられました。
熱意あるそして、無限の可能性のある若い先生を引きつける手稲渓仁会病院、今後もますますのご発展をお祈り申し上げます。このたびは貴重なご意見を心より感謝申し上げます。
資料として配布したポスターは、最近の医報には毎回掲載されております。まだまだ周知が不足と感じておりますが、この機会に、ホームページを是非開いてくださいますようにお願いいたします。

医療法人王子総合病院
[平成24年9月12日(水)午後6時]
相談窓口コーディネーター 星井桜子

苫小牧、王子総合病院に、長瀬会長、藤井常任理事とともに訪問しました。
会合はグランドホテルニュー王子で、おいしいお弁当をいただきながら行われ、研修医を中心とした若い先生方に、たくさんお集まりいただきました。
大岩院長から「遠慮せずに好きなことをお話するように」とご挨拶があり、藤井常任理事の巧みな進行で、終始なごやかな雰囲気で行われました。
研修病院としての王子病院は救急医療も体験でき、また指導医が多いことから、非常に人気が高いようです。
現在育児中の方は少なかったのですが、若い医師たちの将来のライフプラン、希望する勤務環境などについて、率直で積極的なご意見を伺うことができました。
最後に、長瀬会長から女性医師等相談窓口の周知についてお願いし、閉会となりました。
新米コーディネーターとして、多く勉強する機会をいただいたことを感謝いたします。

社会医療法人北斗 北斗病院
[平成24年10月29日(月)午後5時]
相談窓口コーディネーター 足立柳理

10月29日、道東方面は朝から強風が吹き荒れ、JRが運休するのではないかという不安をいだきながらそそくさと午前中の診療を終わらせて釧路駅に向かいました。列車は幸運なことに遅れもなく定刻に発車して帯広へ到着。
会場の北斗病院は明るい雰囲気に包まれて大変綺麗な施設でした。
藤井常任理事が北海道医師会の事業内容の説明をした後、私が女性医師等支援事業の内容の説明を行い意見交換に入りました。井出院長と藤井常任理事が同期であることもあり、和気藹藹と進行しました。要約しますと、北海道の女性医師の割合は全国で下から2番目で、それと相俟って広大な地域の中に医療が必要な地域が拡散しており、適正な医療体制を維持することにむずかしさがある。そして、そのような環境下での女性医師が働く場の環境整備、研修医の受け入れ態勢、潜在女性医師の発掘等の問題が山積みしており、今後どのように対処するかという事にも言及されて討論は多岐におよびました。特に北斗病院では固定医、研修医ともに道外から来ており、先生方が道外から帯広を選ばれた理由や研修医を確保された秘訣などお聞きしました。
女性医師が一度仕事を離れ、復職する条件もさまざまであり、個々の先生に合った支援が必要であると考えさせられました。
今は女性医師が少数であった時代から多数派に変わりつつある変革期で、今後は確実にその数を増していきます。年々増え続ける女性医師のマンパワーを有効活用しなかればこれからの医療は成り立っていかないことは明白です。女性として二人目のノーベル賞に輝いたアメリカのロサリン・ヤロー女史は、1977年に「ペプチドホルモンのラジオイムノアッセイ法の研究」でノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、彼女はストックホルムの講演で「私達を取り巻く多くの問題を解決しようとするなら、この世の中の人間の持つ能力の半分になるものを無駄にするなどできるはずがありません」と話しております。
今回は普段は聞くことのない男性医師からの率直な意見も大変参考になりましたし、女性医師が、離職しなくてもいい環境を作っていくためにはまだまだ改善されるべき点はいくつも存在します。
また、モチベーションを高く持ち続けることの重要性を痛感しました。
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