活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会

大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会
―よりよい男女共同参画を目指して―

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 標記連絡会が去る9月26日(金)日医女性医師支援センターの主催で、日医における女性医師支援・男女共同参画に関する取り組みの周知と各大学医学部と各医学会の取り組みについての情報交換を目的に、今年度は名称を変えて、63大学および44学会の関係者、各都道府県医師会の担当役職員等269名の参加で開催された。
 北海道からは、小職と北海道大学第一内科清水薫子特任助教(北大女性医師等就労支援室員)、札幌医科大学解剖学第二講座永石歓和講師・中野正子助教、旭川医科大学からは菅野恭子二輪草センター助教が出席した。
 横倉会長(今村副会長・日医女性医師支援センター長代読)の後、高久史麿日本医学会長からは「加盟する122学会の評議員は全て男性であるが、いずれ女性医師が就任してくれることを期待している。」と挨拶があった。
 最初に、日本医師会笠井常任理事から日医の女性医師支援事業のアウトラインの紹介があり、引き続き、各大学等の取組みの事例発表があった。

長崎大学の取り組み

長崎大学男女共同参画推進センター長・メディカルワークライフバランスセンター長
副学長/教授 伊東 昌子先生

 長崎大学病院では、キャリアを継続するためにライフステージに応じた働き方を考え、週39時間未満で「フルタイム医員」「パート医員」「復帰医」の3パターンから選択する、復職&リフレッシュトレーニングを開催している。育児支援のひとつであるイブニングシッターは、夜間の医局会やカンファレンスの際に、小児科外来スペースで開設しており、今年から対象を大学病院全職員と関連病院に所属する医師に広げた。保育サポートシステムは、大学と県医師会にコーディネーターを2名配置し、女性医師やイクメンドクターからの支援申込みを受けて、登録している保育サポーターと保育の具体的な内容や条件をマッチングさせている。現在のところ、医師申込み8名、サポーター登録35名で、マッチング成立は7組である。
 学生のキャリア教育として、医学部3年生に対し医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方があることを学ぶことを目的に、1日の講義時間を設けている。
 また、潜在女性医師把握調査と女性医師ネットワークを構築し、長崎大学卒業の女性医師と長崎大学の医局に属する他大学卒業の女性医師、県医師会女性会員を対象に、勤務先・勤務状況を確認したところ、女性医師968名を把握そのうち587名からの回答があり、429名のメールアドレスを登録、就労希望者4名を復帰させた。

奈良県立医科大学の取り組み

奈良県立医科大学微生物感染症講師・女性研究者支援センターコーディネーター 
水野文子先生


 奈良県立医科大学の女性研究者支援センター「まほろば」は、平成22年度に設立し23年度の科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業」に採択された。25年度に補助事業は終了したが、大学独自予算により名称は現行のまま男女共同参画の推進を担う組織として活動を継続している。  早期離職防止としてハラスメントや人間関係の悩み、研究者が研究を継続する上で発生する様々な問題について、面談の上対応し必要に応じて心理相談員によるカウンセリングを実施している。教職員などを対象に、年2回以上、職場環境改善・ハラスメント防止に関する研修会やシンポジウムを実施している。 
 女性研究者の増加支援では、女性教員および女性研究者を増加させるため、評価が同等の場合は、女性を積極的に採用・登用するポジティブ・アクションを学長主導のもとにとったところ、教員の女性比率が医科教員の場合11.2%から15.3%に、全教員女性比率が18.0%から22.5%にと、大幅にあがり目標はクリアできた。また、女性研究者学術研究奨励賞の創設、女子中学生の医理系進路選択支援イベントの開催、内閣府との連携によるイベントの開催など、未来の女性が生命科学分野を選択するよう取組みを行っている。キャリアデザイン教育は、平成26年度より医科学3年生対象に「医学概論」の正規カリキュラムとなった。女性医師等のネットワーク作りも積極的に行い、行政も参加させ県を動かす活発な活動となるよう取り組んでいる。 
 医学部は、女子学生が多く卒後の仕事も安定しているので、政府の目標とする「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になる」の達成が一番できると考えている。

東京医科大学の取り組み

東京医科大学 医師・学生・研究者支援センター/皮膚科 大久保ゆかり先生

 東京医科大学における女性の割合は全体の21.7%、バンカラな校風であり上位職が少ないのが悩みである。医師・学生・研究者支援センターでは、広く社会に貢献する医師・学生研究者のキャリアアップの支援、育成ならびに職場環境の整備などを目的として、男女を問わず4キャンパスを含めた支援を行っている。育児支援は、建築中の新病院における院内保育施設基本計画を提出し、30名定員に規模拡大と病児・24時間保育の実施予定と、東京女子医大ファミリーサポートと連携し、平成26年4月から連携プログラムを開始した。医師がキャリアアップ、復帰するための道筋を検討し、そのステップとしてスキルアップができるプログラムを作成する「キャリア・復職支援ベーシックプログラム」は、学外にも門戸を開いており、学外の卒業生などが当学のマンパワーにつながることを期待している。就業継続や復職後のキャリアコーディネート窓口は、メンターを配置し、ワーキンググループと連携をとって相談を受付けている。 
 医師は、公的使命を持ち、国民に健康と質の高い医療を提供するために、生涯継続して自己研鑽に励まなければならない責務がある一方、育児や介護も大仕事であり、仕事との両立は困難を伴うが、人間としても医師としても男女とも成長させてくれることである。女性医師は自覚と強い意志をもって仕事を継続し、男性医師は多様性を理解し、社会で子どもを育て、支える観点を持つことが結果的に医師の確保につながると考えている。育児・介護などにより長時間労働ができなくなった医師の就業継続・復職支援を行うことは、全ての医師の就労環境の改善とその増加につながる。重要なことは、これを医師自身、その家族、職場で共有する価値観とすることである。

 続いて、日本小児科学会男女共同参画委員会委員福與なおみ先生から、大学医学部における講義とホームページにおいて、ワークライフバランスの関する記載の有無の実態を明らかにすることを目的に行った日本小児科学会主催のアンケート結果の報告と、日本医師会女性医師支援委員会委員の�狭郢卆萓犬�蕁「2014年2月に女性医師支援センターより実施した大学医学部、医学会分科会に対する女性医師支援に関するアンケート調査の報告があった。

日本医師会主催女性支援担当者連絡会で学んだこと

北海道大学女性医師等就労支援室員 清水薫子


 昨年度は自身が妊娠中であり参加を控えさせて頂いたため、今回初めて参加いたしました。昨年度参加した、当院女性医師等就労支援事業(現女性医師等就労支援室)事務担当者より「他の施設の取り組みを聞き、当院はまだまだと思いました」との感想を聞いておりましたが、全く同じ感想を持ちました。
 当院では2010年度から道の補助事業として女性医師等就労支援事業が開始となり、相談窓口事業、復職支援事業、病後児保育室開設、講演会・おしゃべりの会に取り組んで参りましたが、事業を行う分担者の立ち位置、関わりで大きく異なる取り組みだと再確認いたしました。
 保育所、病児・病後児保育機能、短時間勤務枠の設定、急な遅刻・早退時の職場の対応など一定の環境整備は必要かと思います。その上で、医局ごとに全く異なる事情に柔軟に入り込むことができればさらに良い支援が可能と思いますので、試行錯誤して行きたいと思います。(症例検討会などを日中に行って頂ければ本当に有難いと思いました。)
 現在支援が必要な女性医師への対応は必須ですが、やはり男性医師の理解の喚起ならびに男性・女性ともに学生時代からの知識、心構えが極めて重要と考えております。当事業ではおしゃべりの会として、子育て中の女性医師、研修医、すでにキャリアを形成された女性医師と医学部学生がざっくばらんに昼食を食べながらおしゃべりをする会を継続しておりますが、満足度は高いものの参加者はほとんどが女子学生です。恥ずかしながら本学ではワークライフバランス等の授業を取り入れておりませんでしたので、自分が働く環境の知識、キャリアを考える機会として意義深いと諸先生方のご講演により再認識致しましたので、組み込みの準備をしていきたいと思います。
 女性医師と一言で言っても、個々人で目標やワークライフバランスの設定は異なるため、同じコースを提供することは最善の解決策にはならないと思います。お一人お一人が納得の行く勤務形態を取ることができ、その中でキャリアを築いていけるお手伝いを微力ながらしていけるよう精進いたします。

平成26年 大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会に参加して

札幌医科大学 解剖学第二講座 永石 歓和

 このたび、日本医師会女性医師支援センター主催の、大学医学部医学会女性医師支援担当者連絡会に参加させていただきました。全国各地区の大学や医師会に加え、今回の新しい試みとして国内の多数の医学会から女性医師支援事業に携わる担当者が参加し、情報交換を行いました。
 まず、日本医師会の女性医師支援に関する取り組み内容と実績について報告されました。主な内容として、日本医師会女性医師バンクの活動(就業実績 400件)、医学生・研修医をサポートする会(平成25年度にのべ65件開催)、地方ごとの連絡会としてのブロック別会議の開催、医師会主催の研究会等に併設する託児サービスの促進、女性医師の積極的登用を推進するための事業としての2020.30推進懇話会の開催、病院や大学等の管理者を対象とした講習会、女性医師の勤務状況全般に関するアンケート調査、そして本会の開催が報告されました。多岐にわたる日本医師会の活動内容に、女性医師の就労環境の向上に期待が寄せられる一方で、これらの活動成果を反映して第一線で実戦力として働く女性医師が増え、さらには各地方の医療現場での医師不足や医師偏在の解消に繋がる施策とするには、もう一工夫が必要なのではと感じました。
 引き続き、事例報告として長崎大学、奈良県立医科大学、東京医科大学の取り組み、さらには医学会の一つとして小児科学会から取り組みが報告されました。共通するのは、学内に女性医師支援組織を設置し、女性医師の復職・就業支援、育児支援、職場全体の意識啓発等でしたが、なかでもキャリアアップの一巻として女性研究者支援に重点を置く東京医科大学の活動内容に注目しました。大学に勤務するスタッフにしめる女性の人数のみならず、女性研究者の傾向を詳細に分析し、キャリアアップの障害となる可能性のあるファクターを取り上げるという興味深い試みを行っていました。分析結果からは、女性の業績がやや少ない、筆頭論文が少ない、科研費獲得割合や研究数等は同等、などの傾向が示されましたが、これらはいずれも旧来の業績評価に準じた物差しであり、ワークライフバランスにおける物理的・時間的制約から、臨床や教育の現場で別の方法でパワフルに活躍する女性の躍進をキャリアアップに反映できる新たな評価法の確立も求められるのでは、と感じました。
 本学においては、まだ女性医師支援組織自体が殆ど存在せず、全国的な取り組みに対する遅れをますます実感するところですが、本会における情報を有効に活用し、今後の設置に向けた原動力となれば良いと思いました。本会への参加を支援して下さいました、日本医師会女性医師支援センター、北海道医師会の皆様に深謝申し上げます。

〜大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会に参加して〜

札幌医科大学 解剖学第二講座 中野 正子


 この度大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会に当講座の永石講師と共に参加させていただきました。会全体を通して感じたことは、「男女問わず医師を支援する機構が必要」ということです。一般的に出産・育児を経験する女性医師の働き方に焦点が当てられることが多いですが、男性も病気を抱えるまた親の介護に迫られるなど、ライフイベントは男女共通して起こり得るものだと思います。東京医科大学の大久保ゆかり先生のお言葉をお借りしますと、「医師は公的使命を持ち、国民に健康と質の高い医療を提供するために、生涯継続して自己研鑽に励まなければならない」、「一方育児や介護なども手を抜くことができない大仕事である」と仰っており、男女ともライフイベントを抱えていても医師を続けていけるサポート体制が必要だと感じました。実際に東京医科大学の支援センターは4年間(平成22年〜25年)で、復職支援・就業支援の相談件数が女性45件・男性9件あり、短時間勤務利用者も女性78名・男性3名と男性も少なからずサポート体制を必要としていることが分かりました。
 また大学医学部において役職に就いている女性医師が少ないことも問題点として挙げられていました。宮城県医師会常任理事の高橋克子先生のご発表によりますと、大学医学部における医師の性別割合は、助教で男性77.0%・女性23.0%、講師で男性88.8%・女性11.2%、准教授で男性93.8%・女性6.2%、教授で男性97.5%・女性2.5%と、女性の割合が圧倒的に少ないことが分かりました。その原因としては、永石講師も質疑応答で触れていましたが、従来の論文重視の業績評価法に問題があるように思いました。ライフイベントの多い女性にとっては、論文を多く執筆することは難しいことだと思われますが、臨床などにおいて専門性の高い優秀な女性を的確に評価する方法などが必要だと思いました。
 今回他大学における問題点や取り組みを学び、多くのことを勉強させていただきました。男性医師も女性医師も生き生きと活躍できる環境作りはまだこれからだと思いますが、まずは今回得た情報を様々な方と共有していきたいと思いました。この度はこのような会に参加させていただき大変ありがとうございました。

旭川医科大学子育て・復職・介護支援センター

皮膚科 菅野 恭子

 この度は大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会に参加させて頂きました。
 3大学の女性医師支援の取り組みについての事例発表では長崎大学、奈良県立医科大学、東京医科大学からの様々な取り組みを知る良い機会でした。今回は大学からの発表ということもあり研究者支援の取り組みについて知ることができ大変参考になりました。長崎大学の伊東昌子先生は以前二輪草センターに見学にいらして下さったこともあり、あじさいプロジェクトについてはお話で伺っていましたが、今回のご発表で具体的な取り組みを知ることができて良かったです。中でもイブニングシッターは魅力的で、このような制度があると院内で開催される講演会、勉強会、カンファランスに気軽に参加出来ると思いました。奈良県立医大の水野文子先生のご発表では、女性研究者の支援に特化しており、事業を開始後医学科女性教員の比率を上昇させている実績がすばらしいと思いました。政府は女性の男女共同参画を推奨していますが、大学病院では研究を行い教員のポストが得られないと参画するのは難しいのが現状ですので研究者を支援することの大切さを実感しました。東京医科大学の大久保ゆかり先生のご発表では東京医科大学でも研究者を支援しており、教員、学生に占める女性の割合が増えている実績についてお話しされていました。また、女性医師支援の考え方に女性は甘えず、男性は甘やかさず、社会が育てるという観点が必要という言葉が印象的でした。フロアから従来の業績の評価法では様々なライフイベントの多い女性に不利なのではないかとの質問に対し、調査によって女性は教育に多くの時間をかけている方が多いことがわかり、これが実績に反映すると良いのではないかとのご意見に共感し今後この様な新しい評価法が取り込まれていくことで女性のポストが増えていく可能性があるのではないかと考えました。
 福輿なおみ先生のご発表を通して大学でのワークライフバランスに関する講義、ホームページ上での記載が学生や研修医への意識改革につながることが期待される事を再認識しました。高橋克子先生のご発表ではアンケートによって大学医学部の女性医師支援の実態や医学会における女性支援や男女共同参画に関する内部組織がまだ十分整っていないことがわかりました。今回の会を通して学んだ他施設での工夫や取り組みを今後に生かしていければと思いました。この度はこのような機会を与えて頂き誠にありがとうございました。

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