活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

平成26年度女性医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会 −女性医師がいきいきと仕事を続けていくために−

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


 9月4日(土)午後4時から旭川市において、女性医師が働きやすい職場環境を整え、全ての医師の勤務環境の改善を図ることを目的に、勤務環境整備に関する講習会を開催した。
 当日は、旭川市内と近郊の病院の院長ならびに事務長など、遠くは遠軽町の先生にも出席いただいた。
 長瀬会長より「北海道医師会では、キャリア続けていきたい女性医師への支援を3年前から行い、今年から無料職業紹介事業も始め、多くの方の相談を受けている。国会でも5人の女性の大臣が出るなど、女性が活躍しないと成り立たない世の中になっている。今日は、小森常任理事をはじめ、様々な立場からのお話を聞くことができるので、今後の勤務環境整備に役立てていただきたい」と挨拶があった。

1.講演
「明日の医療は貴女が創る」
日本医師会常任理事 小森 貴


 国立社会保障・人口問題研究所によると、日本は85年後には江戸時代の人口になり、さらに減少を続ける傾向にあると推計されている。2075年の北海道の人口は、170万人代まで減少するとのデータもある。上川中部医療圏では、2025年の5疾病の推定患者数は精神及び行動の障害以外の患者は増加している。これまでは常に国が決定してそれをおろす形であったが、これからは地方の実情にあわせて地域医療ビジョンを策定し、国に上げるという仕組みにしなければならない。
 女性の年齢階級別労働力率のM字カーブはOECD諸国の中で日本と韓国だけができている。他の諸国は女性の就業率は日本よりずっと低かった。それを伸ばしていく過程で、M字カーブはできなかった。出生率と女性の労働率の関係も、日本と韓国は下がり続けているのに対して、他の諸国は下げ止まっている。女性医師の就業率は一般の女性よりは高く、30代の男性が少し下がっており、そこにヒントがあるのかもしれない。
 国の調査による全ての男性の育児休暇取得率2.2%に比べて、男性医師の取得率は2.6%であり、男性医師が先進的な意識を持っているとは言えない。院内保育所が設置されていても利用する方は4割にも満たず、まだまだ使い勝手が悪い。群馬県医師会には、1人の医師に対し2,3名のサポーターがチーム体制で支援するというシステムがある。学童保育の問題も深刻で、小学校低学年の子どもは学校にいる時間より学童保育所にいる時間の方が長く、学童保育所の設立を促すことが今後重要になってくる。
 日医女性医師支援センター事業の「医学生、研修医等をサポートするための会」は年々開催が増えており、さらに、昨年度大変盛況であった大学医学部女性医師支援担当者連絡会を、今年度は120ある日本医学会にも声をかけ開催を予定している。その他にも「短時間勤務正職員制度の導入」「平成27年度からの医師臨床研修制度の見直し」などにも取り組んでいる。
 患者は女性が5割、男性も5割、医師も女性が5割、男性も5割であることが理想だと考えている。未来を開く医学・医療は、6200万人の男性で創るより、1億2800万人の国民全員で創る方が良い。女性医師の勤務環境の整備は、壁ではなく未来を開く扉である。女性医師も男性医師も手を携えて、明日の日本の医療を創っていきましょう。

2.北海道内の病院の取り組みについて
「女性医師がいきいきと仕事を続けていくために:ARCレディーズと女性医師部会のご紹介」
旭川赤十字病院 消化器内科 長谷部 千登美


 旭川赤十字病院は、道北における救急を主体とした急性期医療を担う地域医療支援病院であり、病床数は一般546床、医師は常勤が99名、研修医が16名の比較的大きな病院である。女性医師数の推移をみると、常勤医師の女性の比率は5年前の6.7%に比べ、倍以上の17.2%となっている。研修医の比率はさらに高く、16名中5名の31.3%が女性である。
 女性医師の半数以上が、週50時間以上勤務している。女性だからといって勤務時間を短くしてもらっていることはなく、むしろ男性と同等に働いている女性医師が多い。女性医師のもつ悩みとしては、「家事と仕事の両立」「勉強する時間が少ない」と、家に帰ってからの家事・育児等で自分の時間がとれないという悩みが多い。仕事を続ける上で必要と思う支援対策で一番多かった意見は、医師の増員であった。これは単に休みがとりやすくなるからではなく、自分が休むことによって仕事に穴をあけてしまうことを心配することの表れだと思う。
 旭川市医師会では、平成14年に女性医師部会を立ち上げ、「女性医学生との集い」「市民向け講演会」「部会員対象の研修会」を活動の三本の柱として行っている。特に女性医学生との集いに力を入れており、毎年様々なテーマを取り上げて、将来医師となる女性医学生に自分の将来像を考えてもらう機会を作っている。今年も11月に予定しているのでぜひ参加していただきたい。

「旭川医科大学二輪草センターについて」
二輪草センター長 山本 明美


 二輪草センターは、国の政策をきっかけに平成19年に開設された。組織の環境をより働きやすいものとするため、エレファントバイト方式で、とりあえずできそうなことから始めようという手法で7年間やってきた。努力をしていると色々なところからチャンスが巡ってくることもわかり、現在、看護宿舎にある病児・病後児保育室も、最初はできそうにない病後児保育室から始めた。それから経験を積み、実際は病後児だけではなく病中の方も預かっているという状況ができたのをきっかけに、今年7月から病児も対象にすることができた。  学童保育が重要だと小森先生のお話にあったが、365日の学童は無理だが、できることからと夏休みや冬休みの間に2,3日間キッズスクールを開催している。子育ては、大学全体で助ける姿勢をアピールすることが大切だと考えている。大学がひとつの地域社会として子育てを支援し、日本の未来を支えていく意識改革ができてきたと感じている。その他、男性の育児参加を促すための「イクメンプロジェクト」など色々な企画を行っており、子育てだけでなく、さらに介護と仕事を両立するために、看護部長等の体験談を聞く機会も作っている。 
 医師不足というのは絶好の機会であり、これを利用すると男女共同参画を推進することができる。医師不足の解消と言うと国民も必要なことだと理解してくれるので、これを梃子にして、女性医師の活用・平等参画を実現する推進力にする。マイナスのものをプラスに変える絶好のチャンスだと考えている。みなさまの施設でも、ぜひ取り組んでいただきたい。

3.情報提供
「仕事と家庭の両立支援の助成金について」
北海道労働局雇用均等室地方短時間労働指導官 曽根 浩太


 事業所内保育施設の設置・運営等に対する助成金は、設置費、増築費、運営費に大きく分けられる。施設が一定の要件を満たしていることが受給要件のため、認定申請が必要となる。学童保育所は、対象外となる等の要件があるので注意してほしい。
 子育て期短時間勤務支援助成金は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる短時間勤務制度を導入し、利用者が出た場合に支払われる助成金である。支給要件を満たした制度を導入している必要があるため、予め労働局に連絡・相談をしていただきたい。
 中小企業両立支援助成金は、常時100人未満の労働者を雇用する事業主が利用できる助成金である。代替要員確保コースは、育児休業取得者が出て代替要員を確保し、育児休業取得者が復職した際に支給される助成金で、看護師の休業によく使われている。期間雇用者継続就業支援コースは、契約期間の定めのある労働者が正社員と同様の条件で育児休業ができるよう支援する助成金である。契約社員など非正規労働者を多く雇用されている事業主は検討していただきたい。
 次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受け、「くるみん」を取得した事業主は、新築・増改築をした際に割増償却という税制優遇を受けられる。両立支援の取組みとして、法定どおりの制度があるかを確認し、明文化していただき、制度利用に向けた働き方の見直しや、効果的に利用される職場づくりをお願いする。
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