医師の就労環境づくりを支援する事業周知のための臨床研修指定病院訪問
常任理事・医療関連事業部長 藤井美穂
本事業は、女性医師等支援相談窓口事業をできるだけ多くの医師に知ってもらうことと、これから医療の現場に飛び込んでいく若い医師たちとの懇談を目的に昨年度から開始し、平成25年度は、さらに仕事と家庭の両立ができる職場環境整備と医師の健康的な就労環境づくりに必要な支援事業を紹介するとともに、北海道の地域医療に関する現状を把握するため7つの病院を訪問しました。
管理職、指導医、勤務医ならびに研修医の先生たちと話をすることができ、各病院の取り組みもお聞きすることができました。
「女性医師の意見を参考にしながら、チームでサポートする体制を作っていき、病院全体で女性医師の様々な働き方に対応していければと思う」と言う病院もあり、医師だけではなく看護師や事務職員も参加して要望を聞く機会を設け、男性・女性に関係なく責任を持って働く職場環境つくりが進んでいることを感じました。
各病院の様子は、訪問したコーディネーターからそれぞれ報告します。
市立稚内病院
[平成25年7月18日(木)]
常任理事・コーディネーター 藤井 美穂
今年度最初の訪問先、市立稚内病院では、川村副院長ほか勤務医、研修医、事務職員方と宗谷医師会の伊坂理事に参加していただきました。
当会からは、長瀬会長と小職が出席、安藤コーディネーターも出席の予定でしたが、JR北海道の特急サロベツの運休のため、残念ながら出席できませんでした。
研修医のお二人は、市立札幌病院からの地域研修中であり「大変そうなのは札幌も稚内も同じだが、病院全体が応援してくれて、医師同士のつながりが温かく、面倒を見てくれる雰囲気が医療だけでないと感じている」とお話されていました。
オブザーバーで出席していただいた宗谷医師会の伊坂理事からは、稚内市の開業医誘致助成制度を利用して開業した経緯と、大都会で勤務されていた頃と地域医療の違いなどをお聞きしました。
川村副院長が、札幌在住の女性医師が稚内に来ることはないと思っていたが、ご主人の転勤に伴って着任した女性医師が、制限のある勤務を希望した場合に短時間正社員制度などの雇用システムがなくても、給与面・待遇面で条件のある勤務体系が案外簡単にクリアでき、多様性のある働き方を試みて、意外に抵抗なくできることが分かり、女性に限らず男性医師にとっても多様性のある働き方のシステムができると分かったとお話されたことが印象的でした。
留萌市立病院
[平成25年8月15日(木)]
コーディネーター 安藤 敬子
8月15日の午後、留萌に向かうバスに乗った。一昔前のような古いバスだったが、車窓からの景色は広々と美しく、しばしの解放感に浸ることができた。留萌市立病院は、病気治療にはとても環境が良さそうな近代的で立派な建物だった。病院側からは、笹川院長はじめ各科の責任者や研修医など9名が出席され、また留萌市医師会の川上会長も出席して下さった。
初めに、道医の長瀬会長から、「この事業は女性医師支援を目的に始めたが女性医師にとまらず、男女とも勤務医が働き易い環境にしなければならない。地域医療が大変な状況の中で、勤務医に大きな負担がかかり地域から離れてしまうこともある。道医としても何とかしなければと考えている。これから地域枠の卒業生が出るので、良い方向に向かってくれたらと思う」と挨拶があった。
笹川院長は、「当院は今も厳しい状態ではあるが、今年になり女性医師が産休・育休中も含めて4名から8名に倍増したので、就労環境を整備しなければならない。今後も女性医師は増えると思うので、先ずはロッカールームや女性トイレなどの環境整備を計画している。今後の課題をあげてもらい、可能な限り対応したい」と挨拶された。
意見交換では、地方病院としての利点や問題点、多くの勤務医が不満に思っているであろう事情、女性医師に共通の悩みなど率直な意見が出された。
利点としては、留萌では医師同士の交流や良好な関係を築きやすいことが挙げられた。女性医師は、院内託児室にすんなり入れて良かったと言っていた。札幌では、大学内の保育所は空きがないことが多くて利用できなかったし、市内の保育所も年度途中での預け入れは難しく、復職したいと思った時の保育所探しは大変だったそうである。別の会合でも、札幌は働きたい女性に対する保育所対策が冷たいという意見があったことを思い出した。院内保育所は、母親の負担を軽くし、安心して仕事をするための必要条件と思う。
問題点としては、人手不足があげられた。急には応援医師を頼めない状況なので自分の体調管理には気を遣う、子どもが急病の時などは、もう1人の医師に何とか対応してもらってしのいでいる、などの意見が出た。笹川院長も、代わりの医師がいることは、お金以上に大事だと思うがなかなか探せないとおっしゃっていた。
また、勤務内容を正当に評価してほしいという意見があった。個々の医師によって日常的な忙しさが違う、時間外に呼ばれる頻度も違う、これを何らかの方法で是正しないと医師は疲れてしまうし、不満が大きくなる。これは、勤務医に共通の問題と思われるが、特に地方都市の基幹病院には切実な問題であろう。
色々と考えさせられた訪問であったが、将来とも地域医療を頑張りたいという若手医師の言葉が嬉しかった。
北見赤十字病院
[平成25年8月29日(木)]
コーディネーター 足立 柳理
北見赤十字病院からは、吉田茂夫院長、荒川穣二副院長をはじめ勤務医、研修医、事務職員の方13名が出席されました。また、北見医師会からは林事務長にご出席いただきました。そして、道医師会からは長瀬会長、小熊副会長、後藤常任理事と私が出席いたしました。
冒頭、長瀬会長のご挨拶の中で「この事業は、当初女性医師支援を目的で始めた事業ではあるが、今は女性医師支援に留まらず、男性も女性も勤務医が働きやすい就労環境を作る必要がある。そのため道医師会としては、各地域の病院を訪問して懇談会を開催し、貴重な意見をいただきながら今後の事業活動に生かしていきたい」とのお話をいただきました。
その後、各自の自己紹介、医師会事業の内容説明、女性医師等女性医師支援相談窓口について現時点での活動報告を行い意見交換会に入りました。
北見日赤病院は、道北、オホーツク地域の基幹病院として重要な役割を果たしている病院ですが、6年前に起きた内科医の総辞職問題は、この地域の医療に携わる関係者に多大なショックを与えた事件でした。この問題の一番の原因はコンビニ受診がきっかけで、その負担が医師への負担増に繋がって大問題に発展したとのことでした。この問題の解決のために日赤病院では、各科の診療部長との意見交換を密に行い、北見医師会の働きかけによって北見市側も夜間急病センターの設立を行うことで、市民のコンビニ受診に対する意識も変わって、良い方向へ転換することができたとのお話でした。その当時、院長として道から派遣された吉田院長をはじめ、その時期を一緒に頑張ってこられた医師およびスタッフの皆様の御苦労は並大抵なものではなかったと推察いたします。
こちらには、現在3名の女性医師が勤務されておりますが、皆さん出産後も復職されており、24時間体制の保育所も完備されていて医師の子供も受け入れてくれているとの事でした。また、ご夫婦で出張の場合には、休日に関しても考慮してくださっているようでした。年間の救急車の搬送数は約2,800件にも及ぶ忙しい病院ですが、細かな面での女性医師の受け入れ体制はかなり完備されてきているという印象を受けました。
この地域から得た教訓は、道医師会の今後の活動に大きな示唆を与えてくれるものであると思います。従来からの地域医療体制を踏襲し、医師は天職なのだから患者さんの為に24時間拘束されるのが当たり前であるという考えでは今の若い先生方は集まってこないのは明白です。働く医師の為の環境整備をしっかり行う事は、地方での医師確保には欠かせない必要最低条件である事は確かですが、救急医療、コンビニ受診に対する市民への啓発活動、患者教育、そして行政への対応は、日々行っていかなくてはならないと考えさせられた訪問でした。
市立旭川病院
[平成25年9月4日(水)]
相談窓口コーディネーター 坂田 葉子
市立旭川病院からは、青木秀俊院長、大場淳一・斉藤裕輔両副院長をはじめ勤務医10名、研修医3名、事務職員5名の参加をいただき、道医師会からは長瀬会長、小熊副会長、伊藤常任理事、市立旭川病院をホームグラウンドとする安藤コーディネーターと私が出席いたしました。
まず長瀬会長が「女性医師支援だけにとどまらず、男性も女性も勤務医が働きやすい就労環境を作っていくために、忌憚のない活発な意見を聞かせていただきたい」と挨拶され、次に青木院長が「当院では、看護師に対してはワークライフバランスを認めており、医師の事務補助についても現在20:1ではあるが、間もなく15:1になる状況である。女性医師支援については、安藤先生にご協力をいただいているが、まだ課題が多く、この機会に医師会の考えを聞かせていただきたい」と話され、意見交換が始まりました。
意見交換は、『仕事と家庭の両立』、『勤務環境』、『将来のライフプラン』についてなどが話し合われました。
『仕事と家庭の両立』:この問題は医師に限らず働く女性にとって永遠の課題です。若い女性医師からは、「独身の女性医師は男性医師と同じように働き、さらに子供のいる女性医師をカバーしている。結婚・出産されている女性医師を羨ましく思っている。最近は支援制度も整ってきているので、結婚・出産もありだなと思っている」「よくばりと言われるかもしれないが、キャリアを積みたいし家庭も持ちたい。復職支援が充実していると、育休を取得しても復職はスムーズにできるという安心感がもてる」という意見が出ておりました。どの場においても、女性医師が仕事と家庭を両立させるには「ご主人の協力、職場の人の協力、病院の支援体制」の3つが必要だと言われております。理解のある上司が徐々に増え始め、院内に保育所を持つ病院も増えました。復職支援制度の充実や短時間正職員制度は、実際に利用するか否かは別として制度の存在自体が心強い味方になっています。また、現在子育て中の女性医師からは「もっと利用しやすい病児保育を」と言う声が上がっていました。最近旭川でも、かなり質の高い利用しやすい病児保育を行う施設が増えてきています。体調が悪いお子さんを安心して預けられるように、我々のほうからもっと情報を発信していかなければと思いました。一方、若い男性医師からは「世間的には男性も子育てに参加しようという流れにはなってきているが、まだ医療の現場は男性が育休を取れる状況ではなく、看護師の妻には退職して家庭に入ってもらうことになるだろう」という意見も出ていました。
『勤務環境』:「救急当直の翌日でも、外来があるので実際は休めない状況である。また、休んでいる医師もいない」「救急当直が二次救急にあたっていると、寝られないこともあるので大変だ」といった意見が複数聞かれました。現在は勤務医の疲弊を防ぐため、当直の翌日は有休を取れる規定になっています。しかし、なかなか規定通りにはいかないというのが現実です。当直の翌日は、外来は担当させず、半日で帰宅させている病院も増えてきているようですが、よほどのマンパワーがなければやはり難しいようです。「管理者は時間外手当の支給がないので、市の条例を変更していただく必要があるのでは。」という意見も聞かれました。
『将来のライフプラン』:はっきりとした後期研修後のプランまで考えている若い先生はいらっしゃらないようでしたが、出身大学に戻り、医局に属し、医局の人事に従おうと考えていらっしゃる先生が多いのには驚きました。
また、今年結婚を控えている医師からは、「専門医取得との絡みで、どのタイミングで出産すればいいのか」と質問も出ました。現在多くの女子医学生・研修医たちが抱えている問題です。「専門医を取得してから子供を持った方がいい」と言う女性医師は多いですが、自分なりのライフワークバランスで、子育てと専門医取得両方をがんばっている方たちもたくさんいらっしゃいます。身近な先輩たちの姿を参考にし、自分なりのライフワークバランスを作っていってほしいですね。
最後に伊藤常任理事が、『勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール』を紹介し「医師の健康支援のためには、適切な労働条件整備と労働環境改善を行い、労働管理の視点をより充実させることが重要である。医師は労務や法律に疎い。病院には改善できるところから取り組んでいただき、医師には、何か困ったときには自分たちは法律に守られるということを覚えておいていただきたい」と話され、閉会しました。
KKR札幌医療センター斗南病院
[平成25年9月11日(水)]
常任理事・コーディネーター 藤井 美穂
奥芝副院長からは、研修医の半分が女性で、勤務医でも子供がいる医師が15名程、女性医師がこれ程多くなると、女性医師の意見を参考にしながら考え方や対応の仕方などを学び、女性医師だけでなく、男性医師も協力してチームで協力していける就労環境を整えなければならないとお話がありました。
また、男性研修医の方からは「もし結婚相手が医師であれば、結婚後も仕事は続けてほしい。社会的にも女性医師の力が必要とされているので、積極的に働ける環境を整えてほしいと思う。育休については、職場の環境が許されるのであれば自分も取りたいと思う」と、家庭と仕事を両立させる前向きなお話をされていました。
また、月に1回研修医全員を集めて開催する研修管理委員会で出された相談や報告はすぐに全体委員会で報告して、その場で解決する仕組みにしており、初期研修医制度が始まり、女性医師が多く研修に来るようになってからは、アメニティや環境が劣悪だという意見が積極的に寄せられ、少しずつ改善に向かっている。勤務環境は、週末の当番制を徹底することで臨時の対応をし、病棟業務は、きっちり役割分担をしている。外科では初期研修医、後期研修医、指導医、それ以上と階層分けをして、屋根瓦方式で初期研修医には後期研修医が指導し、後期研修医には指導医が指導する形をとっているので、今後、パートタイムやフルタイムで外科に復帰を希望する医師が現れた場合、ブランクが大きい医師でも立場の近い医師から指導が受けられるので、復職しやすい。条件付きの勤務でも女性医師の力は必要なので、受け入れられる体制は常に整えておきたいと病院の取組みについて説明がありました。仕事と家庭の両立への理解があり、支援体制も充実していると感じました。
帯広厚生病院
[平成25年10月31日(木)]
コーディネーター 足立 柳理
秋に訪問した先は帯広厚生病院でした。厚生病院では、菊池英明院長、山本真副院長をはじめ、勤務の先生方、研修医の皆さん、事務職員の皆さん計12名が出席されました。
また道医師会からは深澤副会長、伊藤常任理事と私の計3名が出席いたしました。
まず、会の冒頭深澤副会長からご挨拶があり、その後自己紹介の後に道医師会の事業説明が行われました。今回は、前期・後期の研修医の方が6名と、とても多く出席されていましたので、なぜ厚生病院を皆さんが選ばれたのかお話しをお聞きしました。ここは規模も大きく診療科が多い、そして救急も経験でき、その上大変魅力ある職場で、病院の第一印象がとても良かったという理由もあげられました。年間4,000台の救急車の受け入れがあり、道東十勝地区の基幹病院でもあり、研修プログラムも大変充実しているとの事で、忙しくても研修医の方はその内容に十分満足しているという印象を受けました。しかし、今後残って地域医療に携わるかどうかについては、医局の人事の事や、大学での研修に魅力を感じている事もあり、期間限定であれば地域医療に携わっても構わないという意見も出されました。
病院における女性医師受け入れ体制としては、院内に保育所が完備しており、出張医が子供連れであっても対応可能との事でした。現在育児中の2名の女性医師の勤務状況ですが、一人は外来のみを週3回、もう一人は日中のみの勤務と限定されておりました。女性研修医の方は、当面結婚の予定も無く将来の展望も確定していないため、男性医師と同じように勤務できるとのことでした。
いろいろな話をしていく中で、研修医の先生にとって厚生病院が働く職場としての環境整備を十分に行っていると言う意見も寄せられ、その上、札幌圏から電車で2時間半で来られるという恵まれた環境などを考慮すると、他の地域よりは少しアドバンテージがあるかなという印象を受けました。
また、伊藤常任理事から日本医師会作成「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール〜勤務医の健康支援を目指して〜」についてのご紹介があり、和やかな中にも充実した内容の話し合いができました。
北海道社会保険病院
[平成25年11月21日(木)]
常任理事・コーディネーター 伊藤 利道
長瀬会長の挨拶のあと、岸院長からは「勤務医の労働環境が厳しいので、当院でも医師の募集には苦労している。今日は、貴重な意見を聞いて今後に繋げていきたい」と挨拶があった。
<事業内容説明>
深澤副会長から、北海道医師会の組織の概要、学術活動、会員福祉制度について、説明があった。道医事務局から、北海道医師会女性医師等支援相談窓口の育児サポート事業、復職サポート事業、相談窓口事業について説明を行った。
<意見交換>
・研修医の勤務環境について「(当院は)厚生労働省の基準どおり、初期研修医は17時以降働かなくていいという基準にしている。研修医は、基本的に一人で全部診るということはない。必ず指導医と一緒に診るようにしている。当直に関しても研修医一人ということはない」との説明があった。
・育児休暇について「出産をしてもなるべく長期間休まないようにしたいと思っている」「結婚願望はある。結婚・出産をしても医師は一生続けていきたい」「産休は産前が7週、産後は8週休むことができることになっている。院内保育所では病児保育も行っている」などの意見が出された。
・地域医療での研修・勤務については「研修プログラムの中には、倶知安厚生病院での1ヵ月間の研修を組んでいる」「(倶知安厚生病院での地域研修では)熱心に教えてくれる先生が多く、当院とは違うやり方や考えを経験できたので、とても勉強になった。何年間かは地域医療に携わっても良いと感じた」「地域研修はこれから行く予定だが、1年くらいの期限付きであれば地域で働いてもいいと思っている」などの意見が出された。
最後に、広瀬副院長から「勤務医は仕事量が多く本当に大変である。医師会が勤務医の就労環境整備に動いてくれているので、引き続き支援・協力をお願いしたい」との話があり閉会した。
岩見沢市立病院
[平成26年2月13日(木)]
常任理事・コーディネーター 藤井 美穂
年が明けて最初の訪問先は岩見沢市立総合病院で、中島院長をはじめ副院長など5名の勤務医と事務局の方、岩見沢市医師会から伊藤副会長、宮本顧問に参加していただきました。
お子さんが3人いらっしゃる子育て中の女性医師からは、周りが「子育てもあるからしょうがないか」と思ってくれる雰囲気があると気持ち的に楽で、日々、申し訳ないと思って働くことは心理的に大きな負担となる。大学病院に勤務していた頃は、周りから早く帰ってゆっくりしていると思われ、暇だと誤解されることが一番辛かった。また、同僚や上司に相談できる環境が大切で、フルタイムで働いていないと、どこか後ろめたい気持ちがあり相談もしづらくなるので、何でも話せる職場の雰囲気があればとても助かる。極端な話、ホームステイのような支援があれば良いと思う。子育てが終わった家庭に医師が家族ごとステイして、仕事中はステイ先の方に子どもを見てもらえれば当直もできる。このような支援があれば、子どもをもつ女性医師でも地域での勤務が可能になると思うとお話がありました。
また、自治体の行政職員は医療制度の仕組みを理解していないので、医師の苦しみをわかっていないのが現状との意見が勤務医からあり、自治体と病院の連携は、市町村の規模によっても違い、市であれば、医師の勤務環境や支援の方法がテーマになるが、町村では医師の確保が一番のテーマになってくる。地方の市町村は、医師がいないことに一番困っているので、医師のホームステイなどの案を出せば、協力してくれると思う。北海道医師会が医師の考えを地方に伝えていければ、熱心に取り組んでくれる市町村はきっと出てくるはずであると、岩見沢市医師会から提案がありました。
当会から、全道各地で行われている病院を支援する市民団体の活動と、北海道医師会が開催している「地域医療を守る住民活動に関するシンポジウム」を紹介し、市民団体への投げかけも必要で、こうした市民団体が、医師の子どもの面倒を見てくれるようになれば地域へ行く医師も増えると思うし、地域住民が一体となっている成功例をもっと全道に周知することが必要だと思うとお話しました。
また、地方で医師を続けていくためには、病院だけではなく地域全体のサポートがないと難しいと思うが、働く時間というより仕事の量が多いので、患者の数が減らなければ休みを増やしても仕事が溜まってしまうだけというお話も勤務医からあり、日本医師会が作成した「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」を紹介して、医師の健康支援のための適切な労働条件整備と労働環境改善について説明しました。
最後に中島院長から、これから益々増えていく女性医師への支援と、勤務医が働きやすい環境をどう整えていくかが今後の課題であり、北海道医師会には、支援事業の取組みに関する報告を各病院にフィードバックしていってほしい。特に自治体病院は、病院独自の判断で動くことは出来ないので、情報を与えてくれるととても助かる。医師会の今後の活動に期待したいとお話がありました。
独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター
[平成26年2月27日(木)]
コーディネーター 新谷 朋子
北海道医療センターからは、院長の菊池先生、副院長の伊藤先生、統括診療部長の長尾先生ほか女性医師3名、初期研修医の男性医師3名、事務職員の方々、当会からは会長の長瀬先生、副会長の小熊先生、常任理事の藤井先生と私が参加いたしました。
長瀬会長、菊池院長のご挨拶、各々自己紹介のあと藤井常任理事の司会のもと意見交換を行いました。
女性医師のお二人は、現在2歳から小学生の子育て真っ最中で、常勤医として仕事を続けられています。勤務環境は勤務時間のシフト、当直などでの協力などの医局の医師たちと理解、院内保育園が完備しており柔軟な対応をしてくれること、ご家庭では遠方にいるご両親やご主人の協力もあるが、救急患者の対応など定時に終わらないことも多く大変で、工夫しながら両立されているとのことでした。
キャリアを継続するためには常勤医で時間短縮での勤務形態が認められることや、病院内で当直に対する取り決めに対する文書などがあるとより女性医師が働きやすいだろうとの要望がありました。
お二人とも育休はとっていませんが、男性も含めて育休をとるのは望ましいという一方で、育休が長いと手術や診療の勘が鈍りブランクが長くなるのは心配などの意見もありました。
研修医の先生方は結婚相手の勤務や自身の育休についての具体的なイメージはないとのことですが、今回のような話し合いが今後の就労環境について考えるきっかけになればよいと思いました。
その後、長瀬会長からは北海道医師会について勤務医のサポートも含めてお話があり、私から北海道医師会女性医師等支援相談窓口の育児、復職サポート事業、相談と支援の実績について報告いたしました。
続いて小熊副会長から日本医師会の「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」についてのお話がありました。
今回の訪問では、女性医師からも様々な要望がありましたが、菊池院長は勤務環境整備等を大変積極的に考えていただいており、女性医師、研修医の支援体制について短い時間ながら充実した話合いができたと思います。
お忙しいところ時間を割いてご参加いただいた皆様、ありがとうございました。