活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

女子医学生、研修医をサポートする会「道医報1086号」

「医学生VS先輩医師との懇談会」
3大学開催報告 
常任理事 藤井美穂

医学部女子学生、女性医師の比率は年々上昇し、平成20年の医師国家試験合格者中の女子学生比率は34.5%となった。平成18年の女性医師比率は17.5%となり、平成20年の30歳未満の日本医師会会員の女性比率は38.3%を占めている。これらの数字が示すように、若い世代では4割に達する勢いの女性医師構成である。
しかし、この急激な女性医師の増加に医療の現場は対応しきれていないのが現状である。若い世代の医師、特に女性医師は出産・育児という現実と、難関を通り勉強してきたあと、これから夢を実現するためのキャリア形成の時期が重なるというハンディを越えていかなければならない。
日本医師会男女共同参画委員会では平成18年度から「女子医学生との懇談会」開催に助成金・講師などの派遣を含め、学生・研修医のモチベーション向上を図る目的で応援している。北海道医師会ではこの事業を毎年、主催・共催の形でバックアップしており、長瀬会長自ら懇談会に赴き、学生・若い医師たちとの熱いディスカッションに参加している。
本誌では、平成20年度に開催された道内3大学における「懇談会」の報告を開催順に守内順子先生(北大分)、坂田葉子先生(旭川医大分)、伊藤友紀さん(札幌医大医学部3年学生:札幌医大分)にお願いした。男子学生も含めた医学生、また若い医師たちの生の声が少しでも伝わるように、同時に行ったアンケート結果も掲載した。
伊藤さんは国際医学生連盟IFMSA)の委員として、女性医師問題に取り組んでおり、今回の「懇談会」の主催を引き受けてくれた。学生自身がコーディネートしたものであり、その主体的な取り組みに今後も期待したい。

女性医師の今〜女性医師はいかに生きているか?」を開催して
北海道女性医師の会 会長守内順子
  昨年10月24日金曜日の夕方、北海道大学の教養食堂“はるにれ"で「女性医師の今〜女性医師はいかに生きているか?」というタイトルで講演会・懇談会を開催しました。医師国家試験の合格者の3分の1が女性になった現在、学生や若い医師の方々にとって、先輩女性医師の話を聞くことは将来に大きく役立つと考え、この会を企画しました。北大でこのような会を開催するのは初めてのことだと思います。会を計画した段階で、多くの学生さんや研修医・若い医師の方々に呼びかけたいという思いでポスターを作り、道内3大学に掲示を依頼するとともに、札幌市内の研修指定病院に配布しました。ところが開催当日になって急に冷え込みが強くなり、さらに日中は強い雨風!果たして人が集まってくださるのかと不安な思いを募らせました。しかしそんな不安を払拭するように北大・札幌医大・旭川医大の学生さんがずいぶん大勢来てくださいました。これから医学部を目指す予備校生の学生さんの参加もありました。その上、大学のみならず一般病院の若い医師の方々も多数参加いただき、本当に嬉しく胸躍る思いをしました。
まずは卒業年度が約10年異なる3人の先生に、医師としてのキャリアアップ、家庭生活と仕事との両立(いわゆるワークライフ・バランス)をどのように考え行ってきたかを講演いただきました。
最初は足寄町の我妻病院・院長の池田千鶴先生のお話で、地方で医療を行うことになった経緯や、在宅医療を含めて地方で医療を行う喜びが紹介されました。医師はとても良い職業で、努力は達成感をもたらし、大変さはやりがいに通じること、またプライマリー・メディスンは女性に向いていて、無理なく働ける分野であることが話されました。最後に「自分の人生を上手にデザインし、自己実現に向けて努力しましょう!」と池田先生から後輩達に向け力強いエールが送られました。
2人目は北大第一内科・准教授の別役智子先生でした。先生はご自分の夢を一つ一つ実現されたその課程を症例報告のように話され、場内は和やかな雰囲気に包まれました。医師になった後で何度か岐路に差しかかった時も、ご自分の夢に向かって進むためにいろいろなものを取捨選択して現在に至っている、というお話は非常に印象深いものがありました。小さな頃からの夢であった米国留学で大きく人生観が変わったこと、家族を持つことや子育ては最大の喜びであること、子育てとは子供がごく幼い時だけではなくずっと続くものなのであると述べられました。子供が小さいから仕事を辞めるという道を選択するよりも、状況に応じて仕事の量やペースを変える方が賢明であることを痛切に感じました。
最後は若手の病理医として北大病院で活躍中の久保田佳奈子先生で、2歳のお子さんの育児をしながら、病理医としての仕事をこなされている日常を紹介していただきました。子育ての大変さを毎日実感されている今、24時間対応してくれる“北大病院保育園ポプラ”と同僚の方々の理解にずいぶん助けられていると繰り返し述べられました。学生時代に各医局をローテートしている間に、既にその医局の就労・職場環境を細かくチェックされていたそうです。女性医師が働きやすい環境を整えることは、女性医師の仕事に対するモチベーションを維持するのに役立つだけではなく、医師数・戦力が増えることにより男性医師にとっても仕事をしやすい勤務環境になるのだという思いを強くしました。
講演のあとは学生さんと医師達が入り交じって4グループに分かれての懇談になりました。どのグループも和気藹々話がはずんでいましたが、会場の関係で、話が盛り上がっている最中に終わりの時間が来てしまったことは、残念でした。最後に北海道医師会の常任理事で、当会の理事もお引き受けくださっている藤井美穂先生から「仕事も家庭も両立させて生き生きと頑張りましょう!」というお話をいただきました。会が終わってからも、皆様まだまだ話が尽きないといったようで、会場のあちこちで話の輪ができており、「次回は1月10日に札幌医大で会を開きます」とアナウンスしましたところ、是非次の会にも参加したい、とおっしゃる方がたくさんおいでになり、本当に開催して良かった、と嬉しく思いました。会の開催に努力くださいました当会の理事の塚本江利子先生(セントラルCIクリニック)、別役智子先生(北大第一内科)、新谷朋子先生(札幌医大耳鼻咽喉科)に感謝いたします。
この会は日本医師会・北海道医師会に共催いただきました。北海道医師会の方々には、当日お手伝いいただきましたことをこの場を借りてお礼申し上げます。


「第5回医学部医学生と女性医師の語る夕べ」の報告
旭川市医師会女性医師部会坂田 葉子
旭川市医師会女性医師部会の主要な活動の一つ、旭川医科大学の女子医学生との懇談を目的とした「医学部医学生と女性医師の語る夕べ」が、11月12日(水)、医師および学生計43名の出席を得て、旭川医科大学機器センターカンファレンスルームにて行われました。5回目となったこの会の今年のテーマは「女性医師を支えるパートナーとして」。昨年までは、「生涯において、いかに女性医師という仕事を継続させていくか」を中心とした懇談が主でしたが、今年はちょっとコーヒーブレイク的な話題としてみました。 まず、旭川医大二輪草センター特任助教堀仁子先生に「旭川医大医学部学生の育児に関する意識調査結果報告」をしていただき、次に、旭川厚生病院小児科主任部長坂田宏先生に、「僕たち二人の歩んできた道─自分流のサポートの仕方─」と題したお話をしていただき、小グループに分かれ、グループディスカッションを行いました。和気藹々とした、賑やかな会話に時を忘れてしまうほど。参加される学生さんたちの数は決して多くはありませんが、皆さん、しっかりとした目的を持って会に参加されるようになってきたように思われます。自分の将来設計を頭に描きつつ、熱心に質問していた男子学生(奥様は研修医なのだそうです)も印象的でしたが、今年は、社会人入学された方の参加が目立ちました。医学部全体の方針で社会人入学の方が増加してきているようですが、彼女らの話を通して、女性の場合は男性と比較し、自分の年齢がひとつの足かせになってしまう可能性があり、きちんとした対策の必要性を改めて感じました。時間を忘れてしまうほど、あっという間の2時間半でした。共催していただき、いろいろご協力いただいた旭川医大二輪草センタースタッフの皆様に深謝いたします。 参加された学生さんたちの感想を紹介させていただきます。また、旭川医大二輪草センターの堀先生の「旭川医大医学部学生の育児に関する意識調査結果報告」はとても面白い内容でしたので(土地柄のせいか、九州では全く違う統計が出るそうです)、併せてご紹介させていただきます。 (参加された学生さんの感想から)
・1年生:出てみるだけ出てみようと思った程度の気持ちで参加しましたが、大変勉強になりました。女性医師のお話を聞けて、これからの指針を考えるのにとても参考になり、またこのようなグループ懇談を行っていただけると嬉しいです。
・2年生:ご先生方の貴重なお話を聞くことができ、有意義な時間になりました。将来を考えて不安に思うことが多かったのですが、たくさんの選択肢があることを知り、心強く思いました。
・3年生:とても参考になる貴重なお話をありがとうございました。講演会、懇談会ともにとてもためになりました。また機会がありましたら、ぜひ参加させていただきたいと思います。
・4年生:開業医、市中病院・大学病院での勤務医など、さまざまなところで働いていらっしゃる女性医師の方たちの話を、ロールモデルのようなかたちでもっとお聞きしたいです。
・5年生:現役の先生方のお話を直に聞けるのは、貴重でした。来年度は、男子学生を巻き込んでの開催ができると、さらに良くなると思います。【旭医だよりNo.118】にも掲載されております。


第3回女性医師と医学生のおしゃべりフォーラム 
─医師のさまざまな働き方─
実行委員会代表 札幌医科大学医学部3年 伊藤 友紀
 日時平成21年1月10日(土)3:00〜16:00
 場所札幌医科大学基礎医学研究棟5階大会議室

開催趣旨 
女性医師の占める割合が増えてきている今、女性医師の働く環境や家庭生活との両立についてみんなで考えていくことが大切であると思う。性別に関わらずすべての医師・医学生が女性医師の働く環境について考えることは、現在の日本の医療をより良いものにすることにつながると考える。
しかし、医学生が将来に対する疑問や不安、悩みを打ち明ける場があまりにも少なく、将来どのように働くかイメージしにくいのではないかと感じる。医学生が自由に医師と話をして、自分たちの将来を考え、医師として働くことについての疑問や不安を共有できればと思い、開催に至った。

講演会-懇談会の状況 
実行委員会代表、北海道医師会会長である長瀬清先生、北海道女性医師の会会長である守内順子先生からの開会挨拶後、講演に移った。昨年のフォーラムで、多くの参加者からさまざまな立場の先生のお話を聴きたいという意見が挙がったので、今年は「医師のさまざまな働き方」をテーマに、さまざまな年代、性別、立場にある5名の医師に講演をしていただいた。
藤井美穂先生(札幌時計台記念病院産婦人科)、永石敏和先生(国立西札幌病院消化器科)、矢嶋彰子先生(札幌医大第一外科)、湯野暁子先生(勤医協中央病院内科)、正木智之先生(札幌医大耳鼻咽喉科・第二病理)よりそれぞれ医師としての働き方や家庭との両立について話していただいた。女性医師の置かれている現状やキャリア形成の話から、仕事と家庭を工夫して両立している様子など幅広い経験談を伺うことができ、とても参考になったという声がたくさん聞かれた。
講演の後、脳外科女医会のアンケート結果について、笹森由美子先生(高橋脳神経外科病院)から紹介していただいた。また、濱田啓子先生(北祐会神経内科病院)からは、北海道女性医師史「北の命を抱きしめて」についての紹介をいただいた。残り時間が少なくなってしまったが、最後に4グループに分かれてフリートークを行った。話がはずみ楽しい時間を過ごすことができた。学生からは先生方の本音を聞けてよかった、勇気をもらったという感想が聞かれ、医師からも学生がどのようなことを知りたがっているのか分かってよかったという声が聞かれた。

アンケート結果について 
フォーラム終了後、参加者に感想と「勤務環境の整備について、勤務先に望むこと」という題で意見を書いてもらった。詳細は、アンケート結果4のとおりである。 多くの学生や医師が、24時間保育所が必要であると考えていることがわかった。医師としての仕事と育児とを両立するためには必要不可欠であると考えられる。しかし、24時間子供を預けられるという理由で長時間勤務をさせられるということが起こってはならず、職場の理解や配慮が大切になると思う。また、男女問わず産休や育休が取りやすいことや復職支援の仕組みも必要である。これらを利用するための情報もまた必要であり、今回のフォーラムも情報交換の場になったのではないかと思う。
全体を通して、多くの学生が将来医師として働くことや家庭との両立について不安を持っており、さまざまな働き方を知りたがっているということがわかった。それぞれ工夫しながら充実した医師生活を送っている多くの先生方のお話を伺うことができ、学生はとても励まされたと思う。また、日本における女性医師の勤務環境はまだ改善される余地がたくさんあるということも認識されているので、今後も学生としてできることを行動に移していければと思う。
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