活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

平成25年度女性医師支援事業連絡協議会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂
 

平成25年度の標記連絡協議会は平成26年2月21日(金)に日本医師会で開催され、6ブロックで開催された女性医師支援センター事業ブロック別会議の開催報告として、各ブロック会議で報告された特徴的・先進的な取り組みが紹介された。
北海道からは、小職と札幌医科大学解剖学第二講座永石歓和講師、旭川医科大学の菅野恭子二輪草センター助教が出席した。

(1)北海道・東北ブロック
山形県医師会 神村 裕子理事
 山形県医師会では、女性医師支援センター等の特別な部門を持たず、県の地域医療対策課と連携を図り勤務医部会が「女性医師が働きやすい環境はすべての医師が働きやすい環境である」という理念のもとに活動している。育児支援制度について県内各病院にアンケートを行ったところ、各病院とも女性医師支援策を整備しつつあるが、実際は状況に応じてその都度協議しており、支援制度があっても周囲への遠慮から利用できないとの声があった。「医師会活動を考えるシンポジウム」では、女性医師支援だけではなく、負担の大きくなる勤務医への支援も必要との意見があった。山形県医師会では、病院近隣の開業医や大学医局からの人的支援が、病院勤務医の働きやすさや女性医師支援に繋がると考え、開業医や勤務医との連携を推進している。

(2)関東甲信越・東京ブロック
茨城県医師会男女共同参画委員会 青木 かを里委員長
 茨城県医師会では、女性医師の勤務状況や各病院の女性医師に対する支援策などを把握し情報提供のための基礎資料とすることを目的に、女性医師の勤務体制に関する調査を行った。回答のあった病院の約50%が病院内保育所を設置しており、その内約34%が24時間保育体制をとっていたが、病児保育は全体の約74%が設置しておらず、女性医師用当直室は65%が設置していないとの回答があり、まだまだ女性医師に対する環境整備は整っていなかった。
 また、茨城県医師会保育サポートセンター事業に対しての設問では、夜間の保育サポート、病児保育へのすばやい対応、学童保育時間の延長など、緊急時のサポートの要望が多く、保育サポートの充実には、行政との協力が不可欠であるので、医師会の様々な会議に参加してもらい、行政とのかかわりを多くもつようにしている。


(3)中部ブロック
岐阜県医師会 戸谷 理英子常務理事
 岐阜県医師会では、平成25年3月に県内の22の研修病院を対象にアンケート調査を行った。その結果、女性医師の割合は、在籍医師総数の内、常勤15%、非常勤23%であった。勤務環境整備状況は、院内保育・当直免除・短時間正規労働などが多くの病院で取り入れられており、勤務環境は整備されつつあるが、今後の課題は、講演会等に若い医師に多く参加してもらい、勤務医の生の声を聞き情報を取り入れ常に病院関係者とコミュニケーションを取ることである。女性医師の勤務環境は整備されつつあるが、医師全体のワークライフバランスの実現には、社会全体の意識改革が必要であり、医療に携わるにあたって医師という職業に誇りを持ち、社会的使命を全うするために研鑽し続けることが大切である。

(4)近畿ブロック
兵庫県医師会 渡辺 弥生理事
 兵庫県医師会の女性医師再就業支援事業は、兵庫県の委託事業で平成19年9月に開始され現在まで7名の実績がある。平成25年4月1日に開始したベビーシッター料金一部負担制度は、県内の医療機関に勤務する研修医、勤務医が通常利用している保育施設の時間帯以外にベビーシッターを利用した場合に、1回の支払額の25%を負担している。
 また、郡市医師会女性医師との懇談会を開催し、平成25年までの5年間で、5郡25市の14ヵ所を訪問した。郡市の女性医師からは、医師会からの情報をもっと提供してほしい、将来は女性医師だけではなく男性医師のサポートも必要になるので、医師のワークライフバランスは学生時代に教育すべきとの意見が出された。

(5)中国四国ブロック
愛媛県医師会 今井 淳子常任理事(女性医師部会長)
 中国四国ブロックの岡山大学では、県の委託を受けて医療人キャリアセンターMUSCATプロジェクトを行っており、大学の復帰支援制度導入後、女性医師の就業割合が徐々に増えてきている。徳島大学のAWAベビーシッター制度は、研究者を対象にシッターとのマッチングを支援している。愛媛県医師会女性医師部会では、愛媛大学医学部附属病院・総合臨床研修センターと連携し、女性医師の離職を防ぎ、復職を積極的に支援することによって地域医療に貢献できる医師を確保することを目的に「地域のマドンナ・ドクター養成プロジェクト」を平成19年度から実施している。これは、単一の診療科での研修を基本とし、勤務日数も希望により柔軟に対応し、所属は総合臨床研修センターの医員となる研修制度で、結婚・出産を契機として離職した女性医師の復帰や再就職を支援している。研修中は専属のメンターが支援する。

(6)九州ブロック
宮崎県医師会 荒木 早苗常任理事
 宮崎県の女性医師支援事業は、相談窓口・託児サービス、女性医師メーリングリストと平成22年からは、医師会・県・大学のメンバーで構成する「地域医療現場における働きやすい環境を考える会」を開催し、医師不足や医師の過重労働など地域の医療問題を解決するためにも、女性医師が活躍できる環境を男女共同参画の視点から整備していくことが重要と考え活動している。
 また、医学生に医師会や医療制度について知識を付けてもらうこと、普段接する機会のない開業医と交流できることがメリットと考え、平成20年から広報委員会に医学生も参加してもらっている。広報委員の医師も、変化し続ける医学生のカリキュラムや研修制度を知ることができ、今の医学生のためにも将来の医療制度を整えなければならないとの意識が芽生え、何よりも会議等を企画する際に、医学生とのつながりがあることはとても助かっている。

 最後に質疑応答と総合討論があり、日本医療機能評価機構『病院機能評価機能種別版評価項目解説集』の改訂について、短時間勤務制度は複数主治医制でなければ成り立たないので、日医から働き掛けを行って欲しいとの要望があった。また、小職からは、北海道の場合、都市部と地方で女性医師の比率が大きく違う要因の一つに、女性医師をサポートするためのインフラ整備が地方では整っていないことが考えられるので、大学における地域医療学講座の役割について質問した。
 
 当日参加された先生から、感想記をお寄せいただいたので以下に掲載する。

札幌医科大学 解剖学第二講座
永石 歓和
 このたび、日本医師会女性医師支援センター主催の、女性医師支援事業連絡協議会に参加させていただきました。全国各地区から、各大学や医師会の女性医師支援事業に携わる担当者が参加し、情報交換を行いました。
 昨年各地でブロック別会議が開催されており、6つの医師会から各々特徴的・先進的な取り組みが報告されました。男女共同参画委員会あるいは同等の組織を設置し、女性医師支援、とくに再就業支援や相談窓口の設置、保育サポート等に取り組む現状が報告されました。ただ多くの地区に共通した問題として、女性医師支援制度に基づく短時間正規労働、院内保育、当直免除等の就労環境や制度の整備は進んでいる一方で、該当する医師あるいは利用する女性医師が少なく、就労支援策の理解促進が不足していること、とくに対象となる若い医師への周知困難から、制度が効率よく利用されていない現状も報告されました。これらの解消を目的として、学生や研修医をターゲットとして早期から情報提供しサポートする試みや、復職を希望する医師と現場のニーズをきめ細かく支援するメンター制度の導入など、様々な工夫がなされていました。
 これまでいくつかの男女共同参画事業に関連する会に参加させていただいた印象として、医師全体のワークライフバランスの実現には、全ての医師、医学生、そして社会全体の意識改革が必要と思われます。しかし、より重要なのは、女性・男性を問わず医師自身が社会的使命を自覚し、生涯にわたり研鑽し続けるモチベーションの維持であり、育児や介護等でこれが実行困難な状況におかれた場合に、個々のニーズに対応して物理的・時間的・経済的・精神的に最大限サポートするシステムこそが、真に魅力的で実践的な女性等医師支援事業であると思われます。制度整備が形骸化しないためにも、当事者が申出るのを待つだけでなく、病院管理者やメンターが柔軟に積極的介入することで、制度利用が普遍化・日常化するような医療界全体の意識改革の必要性を感じました。
 本会への参加を支援して下さいました、日本医師会女性医師支援センター、北海度医師会の皆様に深謝申し上げます。


旭川医科大学子育て・復職・介護支援センター 皮膚科
菅野 恭子
この度は平成25年度女性医師支援事業連絡協議会に初めて参加させて頂きました。
 議事は女性医師支援センター事業ブロック別会議の開催報告で各ブロックから医師会の様々な取り組みを知る良い機会でした。中でも印象に残ったのは愛媛県医師会で行われている『地域のマドンナ・ドクター養成プロジェクト』です。平成19年度から実施されているこのプロジェクトは様々な理由でいったん離職した女性医師の段階的な復職を支援する研修を、附属病院・総合臨床研修センターがコアとなって提供されているもので、総合臨床研修センターを通じて希望の診療科にて研修した後、地域医療機関への再就職を支援するプロジェクトです。専属の女性医師メンターを配置し能力が円滑に向上しやすいよう配慮しているとのことでした。我々の二輪草センターでも復職支援教育プログラムは存在しており看護師はうまく機能していますが、医師は科が多岐にわたっているため系統だったプログラムの作成は困難であり充分に機能しているとはいえない状況でした。今後臨床研修センターと提携することで同様のプログラムを作ることは可能ではないかと考えました。
 兵庫県医師会からはベビーシッター料金一部負担制度について紹介されていました。
 県内医療機関に勤務されている研修医、勤務医にベビーシッターの一部を負担するもので、通常の保育施設を使用している時間帯以外に発生した場合を対象としています。子育て中は働くにあたって色々と出費がかさみますが、働き方によっては支出が収入を上回ってしまう時期もあるかと思います。このような助成があるとありがたいと思いました。
 茨城県医師会からは茨城県は医師不足が問題となっているとのことですが、気になったのは皮膚科医の常勤医師の男性が19名と最も少なく、常勤医師の女性26名、非常勤女性医師32名というアンバランスな状態です。インフラの不足、たまたま育児中の女性医師が多かったなど色々と理由はあるかと思いますが、同じ皮膚科医としてこのままの状態が続くと常勤医師の負荷が増えるのではないかと危惧しました。質疑応答では参加者から活発な意見が多数あり大変参考になりました。今回の会を通して様々な支援センターの工夫や取り組みを知り今後に生かしていきたいと思える良い機会であったと思います。このような機会を与えて頂きありがとうございました。

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