活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

平成24年度女性医師支援事業連絡協議会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 標記連絡協議会が去る2月22日(金)日本医師会で開催され、昨年9月から本年2月にかけて全ブロックで開催された女性医師支援センター事業ブロック別会議の全体総括発表ならびに都道府県医師会での特徴的・先進的な取り組みが紹介された。

  北海道・東北ブロックは、小職から平成23年6月に開設した相談窓口の事業の柱である1.育児サポート事業、2.復職サポート事業、3.相談窓口事業について事業の内容を説明し、この事業を有効に活用していただくために積極的な広報活動と事業周知のための臨床研修指定病院訪問、日医共催の医学生、研修医をサポートするための会、医学生との座談会を開催したことを報告した。 
   また、北海道医師会では女性医師支援に限らず、医師不足が深刻となっている地方で小中学生に医療に興味をもってもらう活動を開始したこと、潜在する女性医師を掘り起し、女性医師支援事業と地域への診療応援事業をあわせた事業「北海道女性医師等復職支援センター(仮称)」構想について、来年度から行政と医師会の二人三脚で女性医師支援に地域医療の診療応援を組み合わせた新事業の実現に向けて検討を開始する案があることを報告した。

 その他のブロックの報告は、次のとおりである。

関東甲信越・東京ブロック
群馬県医師会 今泉 友一理事
 群馬県医師会では、子育て中の女性医師の離職を防ぐため、地域医療再生基金をあて、平成24年に「保育サポーターバンク」を設立した。既成のファミリーサポートセンターと違い、医師会独自の女性医師就労支援であり、利用者は医師に限定し、保育サポーターは可能な限り「同じ人」が継続して支援することを基本としている。サポーターの支援内容は、保育と併せてできる範囲であれば家事も含めて制限がなく、報酬は標準単価を参考に医師と保育サポーターが話し合って決める。1人の女性医師に対して2〜3名のサポーターがチーム体制で支援することで、発熱などで急な呼び出しにも対応できる。利用する医師と保育サポーターの調整は、子育て支援相談員がきめ細かく仲介し多忙な女性医師への配慮を最大限行う。
 また、子育て支援助成制度は、保育サポーターの利用料の一部を補助するもので、実質的な自己負担額は1時間あたり800円と低価で利用することができる。その他、子どもの送迎等に使用したタクシー料金の一部を助成する制度、保育サポーターに対してチャイルドシートを貸与する制度、保育サポーターのインフルエンザ予防接種料金の助成など豊富な支援制度を展開しており、今後も活動財源の確保に努めると報告された。


中部ブロック
 1.富山大学医学部小児科 市田 蕗子准教授
 富山大学では、総合的周産期医療プログラムにより、富山大学附属病院内に院内保育所「スマイルキッズ」をオープンし、学会やセミナー参加時の乳幼児保育の援助や、休日の日直および当直の時に学内保育所でベビーシッターによる保育を行う「ベビーシッタープーリングシステム」を開始、2010年には病児・病後児保育室「たんぽぽルーム」を開設した。事業開始による環境整備後は、ほぼ全員の女性医師が出産後4〜12ヶ月で職場復帰し、富山大学の卒業生も出身地に戻らず富山県内に残るようになった。今年入学した学生は女性が4割を超えており、今後は30代の女性医師の就業率を持ちあげる施策が必要であり、最終ゴールは、女性ばかりではなく医師全体のワークライフバランスの実現であり、意識を変えていくことである。

 2.石川県女性医師支援センター 魚谷 知佳コーディネーター
石川県女性医師支援センターでは、医療現場において助言者・ロールモデルとなるメンター制度を導入し、現場の女性医師の連帯感・主体性・意識が高まった。また、病院・卒後臨床研修センター訪問と医学生へのアンケートを実施し、医師を「職業」として選択しており、支援を受けてまで過酷に働く気はないとの回答があり、以前は医学部1年生を対象に行っていた講義を、平成24年から医師の卵となる6年生に変更し、女性医師支援センターが「医師のキャリアアップと継続」をテーマに1コマ授業を担当している。

 3.福井県医師会 月岡 幹雄理事
 福井県は、平均寿命と合計特殊出生率を上位でキープしている「健康長寿の福井県」で、女性の就業率が全国2位の51%、共働き世帯の割合が全国1位の56.8%、三世代同居世帯割合が全国2位の20.2%である。勤労者別世帯収入は、東京に次いで全国2位である。飛行場も新幹線も何もない福井県は、よく働くという地域性がある。女性医師支援事業は、復職支援と医学生・研修医をサポートする会の開催、簡単なレクレーションや情報交換をするママドクターの会があり、徐々に参加者の輪が広がっている。

近畿ブロック 大阪府医師会 上田真喜子理事
  平成24年9月30日に開催した近畿ブロック会議で報告のあった各府県医師会の取組みを報告。 兵庫県の神戸大学医学部附属病院では医師の復職支援と病院内就労中の看護師やコメディカル、事務職員の出産、育児、介護と仕事の両立をサポートする「ブラッシュアップセンター」を開設した。滋賀県では、保育等の情報を掲載した「支援BOOK」の作成を検討中、奈良県の女性医師支援事業の中心である、奈良県立医科大学女性研究者支援センター「まほろば」と和歌山県が積極的に行っている報道機関や地元女性医師との懇談、京都府は、KMCC京都府地域医療支援センターで就労環境等の改善支援・再就職支援などに取り組んでいること、大阪府は、女性医師支援プロジェクトの成果として大阪府内基幹型臨床研修病院での院内保育所の設置が86%となり、病児保育室の設置が39%となった。

中国四国ブロック
徳島県医師会 岡田 博子常任理事
 徳島県医師会では、女性医師復職研修支援事業とドクターバンク事業を県医師会事務局内で整理して設置し、相談窓口の拡充を行い、各々の担当委員が必要に応じて相談にのる体制である。子育てなど保育支援に関することや就業支援、誌就職に向けての研修に関することなど、医師をサポートするためのあらゆる相談についての窓口を設置している。女性医師支援を目的とした講演会ではマミールームを完備して、会員は無料、非会員はひとり500円で子どもの預かりをしている。保育支援事業では、託児施設の割引利用と、女性限定で出産年度の翌年度1年間の会費減免、出産祝い金10万円支給制度があり、医師会の会員になって会費を払っても保育支援制度を利用する方が年間負担は少なく、平成20年の制度実施より、保育支援を受けることを目的で医師会に入会した者は7名であった。結婚支援活動も行っているが、男性の参加割合が少ないのが問題点であり、独身医師に限り会員1名以上の推薦があれば参加を可とし、会員以下3親等以内であれば職業不問としている。

九州ブロック
沖縄県医師会 依光 たみ枝女性医師部会長
沖縄県医師会では、平成19年8月21日に沖縄県女性医師部会を、女性医師の交流の場となるメーリングリストの立上げ、女性医師の支援、女性医師バンクの設立などを目的に発足した。役員全員で役割を分担し、沖縄県女性医師フォーラム、女性医師の勤務環境整備に関する病院長等との懇談会、県内の医療機関を訪問する女性医師部会出張プチフォーラムを開催しており、メーリングリストに登録している250名のうち学生を含む非会員が約半数である。

   最後に質疑応答と総合討論があり、活発は意見交換が終了した。 




 勤務医の過酷な労働環境改善に求められるのに対応し、女性医師支援は都道府県医師会、大学、学会レベルなど多領域にわたり、次第に進んできた。
地域によりユニークな支援も実施されているが、北海道はその広域性を考慮し進めなければならないのが特徴である。
 少子高齢社会の日本で、子どもを産み、次世代を支えていく若い医師が医師というプロフェッションを、誇りをもって続けていけるように、女性医師支援に新しい企画を取り込み、行政と協力しながら実現していきたい。


記事一覧を見る

アーカイブ一覧

TOPに戻る