活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

第9回男女共同参画フォーラム

平成25年7月27日(土)午後1時
山口県総合保健会館 2階多目的ホール

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


  第9回男女共同参画フォーラムが、去る7月27日(土)に山口県総合保健会館で日本医師会主催、山口県医師会担当で開催された。

 北海道からは、深澤副会長、藤井常任理事と札幌市医師会、小樽市医師会、旭川市医師会および北海道の地域医師確保推進室からの合計10名が出席した。 今年のメインテーマを「みんなちがって、みんないい〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ〜」とし、横倉義武日医会長、小田悦郎山口県医師会長のあいさつの後、国際医療福祉大学 桃井眞理子副学長による基調講演「より良い医療のために、より良いキャリアのために」が行われた。
 その内容は、2010年から100年で人口が3分の1になると試算される日本の少子化は、40年後の2050年には若者世代が極小化する。今までのように、男性だけが社会的に頑張って支えられる時代ではない。女性を含め若者全体でも支えられないかも知れないが、数は力なりという言葉があり、数の中には能力のある者の数も多くなるので、国を支える意味で男女平等は非常に重要なことである。男女ともに人材を育てていかなければならない。
  日本の男女の労働時間は、国際比較で特に男性の労働時間が非常に長い。当然このような状況であれば、家事・労働を共同ですることは難しく、参画しようにもできない。男性の家事・労働の割合と合計特殊出生率とは比例しており、合計特殊出生率が伸びているフランスでは2%を超えている。超少子高齢化社会で、男女共同参画も重要なことではあるが、いかにして人を育てるか、外国人労働者の活用、ライフワークバランスの改善などを考え、女性の働きやすい環境を整備することも大事である。さらに適正な評価をできるようにすることも重要で、男女共同参画は新しい社会設計への挑戦で、目的は多様性を持った社会の実現である。日本も多様性を持った社会に変革できれば、働く時間なども調整できる。男女共同参画の実践を医師の世界で試してみるのも一つの方法であり、男女ともに、いかにして優れた人材を育成していくかがポイントで、リーダーシップを発揮できる人材の育成が緊急の課題である。
 日本の医療の供給体制の現状は、医療者の献身的努力によって、質の高い医療を国民に提供しており、これは国際的にも評価されているが、この働き方はさまざまな問題を含んでいる。このままでは、持続は不可能である。医療における男女共同参画の利点は、患者は同性医師を求める権利があり、女性患者は女性医師に診てもらいたい。医者の権利も患者の権利も担保された、良い医療が行われることが理想で、女性の視点に立った人材を確保することによって、継続可能な医療の提供ができる。意識改革が男女共同参画の中で良く言われるが、まず何かを強力に変えた後で意識改革がついてくると思う。
 私は、長年数多くの男女医師を育ててきて、女性研修医から「私にできるのでしょうか」という発言をしばしば耳にすることがある。このような不安を解消するためにも、上に立つものの資質が問われることになる。多くの若い女性医師が両立について悩み、選択できないことでストレスが溜り辞めていく。選択することによって、プロとしての時間の使い方ができるのだから「自信を持って選択してしまいなさい。」と言っている。キャリア形成については、自分は何が強いのか、兎にも角にも強みを作ることが必要で、両立で悩むのではなく、進路変更はいつでもできるといった気持ちが大切である。
 先輩の先生方に言いたいことは、若い先生方にストレスを与えないこと、リーダー格の先生方にそれを伝授していただきたい。今までの女性医師支援は、女性は妊娠・出産・育児で大変だから育児休暇や短時間勤務などから始まったが、今はこんな状況だということを国はしっかりと見極め、持続可能な専門職のサポートをしっかりやるべきである。また、優れた人材を育てていくというプログラムを作らなければならない。
 これからは、全ての領域で人材育成が重要なポイントとなる。管理職の男性医師は、女性医師に対して優しいが、優しさだけではだめで、時には厳しく接することも大事。男性も女性も期待をして育成していくことが肝要で、男女共同参画のこれからは男性医師も女性医師も上手に育てていける世の中にすることである。国は勇気をもって改革に取り組んでいただきたいとお話があった。
 その後、(1)日医男女共同参画委員会、(2)日医女性医師支援センター事業についての報告があり、引き続きシンポジウムでは、4名の演者からそれぞれの立場での講演があった。
 最初に、「女医は希望の星」と題して、医療評論家の行天良雄氏から、戦後の混乱期に横浜のホテルニューグランドでダスキンボーイとして働いていた時のGHQのサムス准将ら若き将校たちとの出会い、「お前がもし医学を学ぶのなら、1人や2人の患者の命を救うのも素晴らしいが、やがて時代が変わり、パブリックヘルスの向上やメディアを活用して多くの人を救うことも大事だ。」と言われたこと、そのグループディスカッションでは女性医師がいて堂々と発言していたことなど自らの半生を紹介し、1981年にNHKで放映した「日本の條件『医療』3部作」の制作当時のエピソードも紹介し、この経験が私の「医療」というものの考え方に現在もつながっているとした。
 次に、「豊かな医療人を育成するために」と題して、山口大学大学院医学系研究科 澁谷景子放射線治療学分野教授から、同大学医学部附属病院医療人育成センター男女共同参画支援部門が実施した「職員の勤務環境の現況に関する調査」の結果と、この調査で明らかとなった問題点を解決するための活動を報告し、まだまだしなければならないことは山積みであるとした。
 いしいケア・クリニックの原田唯成医師からは「ジェネレーションギャップを乗り越えて」と題して、医療者を取り巻く環境の変化を指摘し、数名の山口大学医学部の学生と研修医に行ったインタビューを紹介して、自身の経験から、勤務形態をチーム対応することで、お互いの時間をカバーし自由な時間や院外研修の時間を確保でき若いスタッフが集まる。独身者も既婚者も家族の一員であり、地域ぐるみの連携で、医療者を家族ごと支援する取り組みが必要であるとした。
 最後に「地域で取り組む男女共同参画〜山口県医師会の取り組み」と題して、山口県医師会男女共同参画部松田昌子部会長から、1.勤務医就労環境改善、2.保育支援、3.女子医学生キャリアデザイン支援、4.県内医師の連携、5.広報活動の同部会の活動を紹介し、伝える難しさとつながることの大切さを、活動を通じて感じている。医療界における男女共同参画の意義や活動の目的・内容を若い医師、学生、管理者、上司に対して伝えることは難しいが、医師会という組織の中で集まって会合し、力を合わせれば難しいと思っていたことも実現できるとした。
 その後、総合討論があり「第9回男女共同参画フォーラム宣言」を採択し、盛会裡に終了した。
参加者は、男性208名、女性355名の計563名であった。 

 本フォーラムに出席された旭川市医師会女性医師部会の長谷部部会長から、感想記をお寄せ頂いたので以下に掲載する。

旭川市医師会女性医師部会 部会長 長谷部 千登美
 山口県で開催された今年の男女共同参画フォーラムは、大変盛会であったばかりでなく、女性・男性ともに豊かな医療人をめざすという理念が明確にされ、大変有意義な会であったと強く感じました。
 今回のテーマである『みんなちがって、みんないい』というフレーズは、山口県出身の詩人金子みすゞさんの作品からとった言葉ということです。現在よくいわれる『diversity、多様性』を優しい言葉で肯定しているこのテーマは、今回のフォーラムで採択された宣言のひとつ『医師の働き方に対する多様な価値観を受け入れ、真の男女共同参画を実現する』とぴったりマッチするものであると感じました。
 今回のフォーラムの参加者リストを見ると、全国各都道府県の医師会関係者が多数来られていたのは例年どおりですが、地元山口県のさまざまな医療機関からも、そして大学医学部の学生さんや研修医の方たちも多数参加されていたことが実に印象的でした。私が以前から関わっている日本消化器病学女性医師研究者の会の会合では、山口大学の女子学生さんたちが積極的に参加してくださっていました。彼女らは自発的に、先輩の女性医師との連携と取り合い、女性医師の働き方・生き方を学んでおられるということに大変感銘を受けたことがあります。山口県ではこのように大学全体として男女共同参画に対する意識が高いように思われ、北海道でもぜひ参考にさせていただきたいと感じました。
 今回のフォーラムのなかで最も印象的であったのは、桃井眞理子先生の基調講演です。この講演では、医師の責務という点に関して明確な位置づけが示されました。すなわち、「医師資格を得る」ということは医行為の独占権を得ると同時に、医師として国民に貢献する責務を負うことを意味し、この権利と責務は一体であるという説明です。このような、国民に対する貢献責務を十分に果たすことを目的として、各種の環境整備がなされるべきであると桃井先生はご指摘されました。いわゆる「女性医師問題」というものが、女性医師の力をいかに活用するかという点に重点が置かれ、時短勤務や長期育児休暇などの目先の問題だけにとらわれがちであることを見直す努力が必要と思われます。そして、男女ともに医師として国民への貢献義務を果たすという視点で、教育・労働環境・社会環境の整備がなされるべきであるというお話でした。男女共同参画の意識というものは、決して女性医師だけの問題ではないということを、改めて強く認識させられる思いでした。
  さらに桃井先生は、若い医師への指導にあたって、期待する役割を伝えることが重要であると話されました。『困難は、解決できる人の前に来る』というお言葉は、問題から逃げてはいけないということを強調されたもので、大変心に残るものとなりました。
  フォーラムの後の懇親会も大変盛況で、山口県の各種のごちそうを堪能させていただきました。翌朝は山口県北部で記録的な大雨となってしまい、観光どころではなく帰宅の途につきましたが、フォーラム全体として、男女共同参画の意識が徐々に高まり全国に広がりつつあるという実感を得ることができ、本当に有意義な会であったと思います。来年は東京での開催予定とのことで、また是非参加させていだきたいと、楽しみにしています。


 雨に煙る瑠璃光寺(山口市香山町)五重塔(国宝) 

湯田温泉駅前でお出迎えしてくれた「ゆう太」君
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