活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

大学医学部女性医師支援担当者連絡会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 標記連絡会が去る9月27日(金)日医女性医師支援センターの主催で、日医における女性医師支援・男女共同参画に関する取り組みの周知と各大学医学部の取り組みについての情報交換を目的に、今年度初めて、全国80大学のうち62大学の関係者、各都道府県医師会の担当役職員等200名の参加で開催された。
 北海道からは、小職と札幌医科大学解剖学第二講座永石歓和講師、泌尿器科の西田幸代診療医、旭川医科大学からは山本明美二輪草センター長と、菅野恭子二輪草センター助教、北海道大学からは女性医師等就労支援事業の事務局が出席した。


 最初に、日本医師会小森常任理事から「明日の医療は貴方が創る−日本医師会の女性医師支援に関する取り組みについてー」と題して、平成19年1月に厚生労働省から受託した「医師再就業支援事業」により開設した女性医師バンクと、女性医師の勤務継続支援に重点を置いて展開している女性医師支援センター事業の説明があった。
 また、日本医師会でこれまで取り組んだこととして、臨床研修中の産休・育休の規定の整備について厚労省に要望した結果、産休を含めて述べ90日間の研修の休止については厚労省の省令に明記され、臨床研修中の妊娠・出産・育児等による中断についてのルールが明文化され、厚労省より各地方厚生局に対し詳細なルールを周知する通知が出されたことの紹介があった。
 続いて、各大学の取組みの事例発表があった。

東北大学の取り組み
東北大学加齢医学研究所老年医学研究分野
 助教 海老原 孝枝先生
 3つの柱の1.育児短時間勤務医員制度、2.病後児保育、3.院内保育所をコアとし、その他保育園送迎のための駐車許可証優遇発行や、保育所入所時に必要な勤務証明書のEASY発行などの支援を行っている包括的女性医師支援戦略について説明。
 育児短時間勤務医員制度は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する医師を資格要件に、時給1,405円の週30時間上限勤務の時間雇用医員で、免除を願い出た者は必ず宿日直勤務は免除し、超過勤務は原則として命じない制度である。
 病後児保育室は、大学病院および医学系研究科教授を除く教職員、医員、大学院生からなる教室会会員と看護部の要望に応え平成13年2月に開設された。当初は、教室会のボランティアにより運営されていたが、平成18年文部科学省科学技術振興費「女性研究者支援モデル育成事業」による「杜の都女性科学者ハードリング支援事業」の一環として拡充が組み込まれ、東北大学病院が運営することになり、そのことを機に、保育室利用規則と業務の見直しを行い、愛称を「星の子ルーム」とした。
 院内保育室は定員25名で、東北大学病院、医学系研究科、歯学系研究科、加齢医学研究所およびメディカル・メガバンク機構の教職員、大学院学生等の乳幼児が入所資格で、常時保育・終夜保育・一時保育を行っている。
 包括的女性医師支援環境整備は一定の成果を上げてきたが、就学時前の子どもに焦点を当てた策が多かったため、就学時の退職者も多いことが問題点であり、今後は小学3年までの児童まで等の制度の拡充が必要と考えている。また、高齢化社会を迎え介護への応用拡充も必要である。

岐阜大学の取り組み
岐阜大学大学院医学系研究科皮膚病態学講座
 教授 清島 眞理子先生
 岐阜大学男女共同参画推進室と医学部・附属病院女性医師就労支援の会と県医師会男女共同参画委員会で取り組んでいる女性医師支援を説明。
 岐阜大学は、医学部・附属病院の女性教員13.3%、大学全体15.3%で、医学部・附属病院の女性医師就労支援の会の発足は2009年10月である。男女共同参画に関するアンケートを実施し、その結果から�@保育所、施設、勤務体制の整備、�A先輩女性医師との交流、�B男性医師、医学生の教育が会に求められていることが分かった。学内保育園の定員を30名から50名に増員し、大学前にある診療所から病児を迎えに来て保育をしてくれる病児保育があり、土日保育は必要に応じて開所する体制を整えている。先輩女性医師に体験を聞く講演会や意見交換会の開催、医学部・附属病院職員の子どもを対象にしたキッズ・サマースクールなどを開催し、女性医師就労支援の活動や取り組みを宣伝しており効果がある。また、医学部の初年次セミナーにおいて「医学部で皆が元気に仕事、勉強を続けるために」と男女共同参画や女性医師問題の講義と、4年次の臨床実習入門では「キャリア形成を考える」で専門医制度やワークライフバランス、女性医師問題の講義を行っている。今後の医学教育は、男性医師も含め医療界全体の中で女性のキャリアに対する理解と女性医師に対するキャリア教育とプロフェッショナル教育が重要ポイントである。年々女性教員や医師が増えており、パート医員も含めると2013年5月現在で女性医師は22.4%である。来年度は、夏休みの学童保育と先輩女性医師との交流会と男性医師・医学生の教育に取り組む予定である。

九州大学の取り組み
九州大学大学院医学研究院保健学部門
 臨床研究支援看護学 教授 樗木晶子先生
 九州大学における環境整備の取り組みは、学内保育施設3ヶ所は一時保育・延長保育があり、病院地区にあるひまわり保育園では、終夜保育と病後児保育を行っている。女性研究者プログラム事業の一環として、出産・育児、介護、社会貢献等の理由で研究時間の確保が困難となっている女性研究者を支援することを目的に「研究補助者措置制度(Hand in Hand プロジェクト)」を運用し、春期秋期ごとに各期30人程度を支援している。また、若手人材への支援は休業を取得しやすい就労環境整備と優秀な人材の雇用促進、部局の教育研究業務への影響軽減、優秀な人材の定着を目的に、教員が出産・育児・介護に係る長期休業を取得する場合に、休業開始3ヶ月前に新たな教員を3年から5年間雇用する支援制度を導入し、九州大学全体でシステムを利用している。
 大学病院では、平成19年に文部科学省の大学改革推進事業に採択され女性医療人のキャリア継続を支援する「女性医療人きらめきプロジェクト」を創設、女性医療人ステップアップ外来医師を外部資金で雇用した。ステップ外来医師の半数以上はフルタイム職へ復帰し、プラスアルファの効果で外来診療現場の活性化、男性医師の業務軽減、病院収入増加があった。平成22年度は自己資金できらめきプロジェクトキャリア支援センターを設立し、「九州大学病院きらめきプロジェクト」を展開している。プロジェクトの概要は、ライフステージにより休職や離職を余儀なくされる女性医師や介護・自身の病気のために離職を余儀なくされる男性も含めた医師全体のキャリア継続と休職後の復帰支援である。プロジェクト開始から7年目となり、病院長などトップの意識改革につながり、学生の意識も変化した。

当日参加された先生から、感想記をお寄せいただいたので以下に掲載する。

大学医学部女性医師支援担当者連絡会
 「よりよい男女共同参画を目指して」に参加して
  札幌医科大学 解剖学第二講座 永石 歓和
 このたび、日本医師会女性医師支援センター主催の、大学医学部女性医師支援担当者連絡会に参加させていただきました。全国47すべての都道府県から、各大学や医師会の女性医師支援事業に携わる医師やコメディカル、事務官が参加し、200名近い参加者が一堂に会して、情報交換を行いました。
 まず、日本医師会より女性医師支援に関する取り組みについて紹介がありました。本事業は、厚生労働省からの委託により、医師不足解消の一手として、出産・育児等で離職する女性医師の再就職を支援することで、医師確保対策の一環として開始されておりました。就業継続・復帰支援、女性医師相談窓口支援、託児室設置の補助、医学生や研修医をサポートする会の開催、支援事業担当者の連絡会、等が主たる支援内容でした。これらは、各大学や各医師会のレベルでも実施可能な内容と感じましたが、ぜひ日本医師会に先導していただきたい企画として「女性医師の勤務環境の整備に関する病院長、病院開設者・管理者への講習会」がありました。女性医師に関する就業上の問題を、病院長等の管理者が把握し理解を深めるのが目的とのことでしたが、開催回数の割に参加者が少ないこと、管理者の入れ替わりが少ないことを理由に平成21年以降中断されている経緯があり、就業環境の改善を求める女性医師の増加に逆行していることが危惧されました。女性医師が出産・育児の期間においても長期に中断することなく就業を継続した結果、実績に応じて男性医師と同様に上位職に就き活躍する機会を与えられることこそが、個々のモチベーションの維持に不可欠であると考えられます。そのための就業環境の問題を明らかにし、上司・同僚の理解をより良い形で得るためにも、コーディネーターとしての管理者の意識と知識の向上に寄与する機会として、益々の内容の充実が求められる企画であると思われました。
 引き続き、3大学からの具体的な取り組み事例を聴講しました。各大学が特色あるプロジェクトを立ち上げ、成果を上げていることは、とても素晴らしいと感じました。共通していることは、まず大学内に女性医師の就労支援を担当する部門が設立されていること、これらの部署を中心に利用対象者のニーズを的確に捉え、ハード面(保育所など)やソフト面(勤務形態など)の対策を講じて利用者を増やしていること、女性医師のみならず学生教育の段階からのプロフェッショナリズムの認識と就業継続の責務を浸透させていること、が挙げられました。振り返って本学(札幌医大)においては、まず歴史的にも女性医師支援システムがほぼ皆無であり、ニーズの把握もなされておらず、道内他大学から女性医師支援事業の連携を持ちかけられても上層部を含め全体の関心が薄い、という現状で、全国的に見ても非常に立ち遅れている状況が明らかとなりました。本学の常勤(助教以上)の女性医師の割合が低いこともわかり、今後支援のニーズを感じている現場の女性医師が集結して声を上げ、積極的に行動を起こしていく必要性を強く感じました。 女性医師支援体制の整備には、人員、予算、時間を含め多大な労力を要し、医師・研究者としての多忙な日常業務の中で女性医師自身がアクションを起こし、事業として立ち上げ継続することは至難の業と考えられます。しかし、人任せでは何の進捗も得られません。小さな個の力の集結から真に働きやすい環境の整備へ向けて、自分に何ができるか考える上で、多彩なヒントを得ることができました。本会への参加を支援して下さいました、日本医師会女性医師支援センター、北海道医師会の皆様に深謝申し上げます。

大学医学部女性医師担当者連絡会に出席して
 札幌医科大学 西田 幸代
 先日、日本医師会館で開催された標記連絡会に参加させていただいた。全国では既に多くの大学で女性医師支援の窓口が開設され、子育て中医師の勤務体系の新規確立ならびに保育環境の充実に向け事業を推進させていることがわかった。またキッズキャンプといって、医師の子供たちを実際に職場見学に連れていく試みは、時には子供より患者を優先させねばならない医師の仕事を理解してもらうのに一役買い、また子供たちが次世代の医師を目指すかもしれないとのことで、大変面白いと感じた。
 果たして、我が札幌医大ではどうであろうか。まず勤務体系であるが、現在私は札幌医大独自の勤務体系である短時間診療医として大学院の研究をしながら仕事をしている。もともと診療医とは大学院生や研究生といいながら実際には大学病院において無給で仕事をしていた医師を救済するために平成16年に始まった制度と聞いている。現在は、すでに学位を取得した人や短時間診療を希望する女性医師など、多くの人材を確保するのにつながっているようだ。これは非常に柔軟性の高いシステムであり、子育て中の医師でも就業しやすいはずと考えるが、あくまで就業の窓口は各診療科にゆだねられており、医師免許取得後早期に休職した医師が診療科を変えるなどして復職を検討する場合などには適切な窓口がない。保育環境はどうであろうか。少なくとも私自身が生後半年の息子のため、院内保育所の利用を申し込んだ際にはすでに満員であった。無論、病児・病後児保育、夜間保育、学童保育などは一切ない。
保育設備の充実には十分な土地や建物、保育士数が必要であるから、拡張には限界があろう。ならば近隣の保育所などと連携し院内保育所より高額となる費用の一部を職場が負担するのはどうだろう。また近隣の小児科医と連携し、医師の病児を一時預かってもらうのはどうだろう。私を含め、子育て中の医師が働きやすい職場環境が今後充実されていくことを切に望む。

大学医学部女性医師支援担当者連絡会に参加して
 旭川医科大学 復職・子育て・介護支援センター
  センター長・皮膚科准教授
   山 本 明 美
 日本医師会が主催する初めての全国規模の標記の企画が東京で開催されました。全国のほとんどの大学の担当者が一堂に会するこのような会合は初めてのことで、企画や運営にあたり大変なご苦労があったことと思います。参加したところとても有意義な会でございました。開催にあたりご尽力くださった皆様にお礼申し上げます。
 当日の内容についていくつか感じたことを述べさせていただきます。まず、冒頭の医師会常任理事の小森貴先生のお話では、医師会が真剣にこの問題にとりくんでいるということ、国民の真の幸せを願っているのだというメッセージがよく伝わりました。これからもその路線で活動していただけることを一国民として強く望みます。
 東北大学の取り組みの発表では研究生である医師の子どもも保育園に入所できるように証明書を発行するという配慮や県内開催の学会での保育の援助助成が優れていると思いました。過去に私どもの施設で病後児保育所を開設するにあたり、東北大学の施設を見学させていただき大いに参考になった経緯があり、これからも制度や設備の充実のために先行事例として学ばせていただきたいと思いました。 岐阜大学の発表ではキャリア教育の内容が優れていると感じました。担当されている清島眞理子教授はご専門が私と同じ皮膚科であることから、日頃からお互いの女性医師支援の活動内容の情報交換をさせていただいており、大変ありがたく思っています。
 九州大学の事例では研究補助者措置制度に注目しました。北海道でも最近、北大が中心となって女性研究者の研究助成の取り組みが始まり、旭川医大も参画させていただけることになりました。九大の取り組みを大いに参考にしたいと思いました。
 今後もこのような全国規模の会合の開催が継続されることを希望します。


大学医学部女性医師支援担当者連絡会に参加して
 旭川医科大学子育て・復職・介護支援センター
  皮膚科 菅野 恭子
 この度は日本医師会主催の男女共同参画のセミナーに参加させて頂きました。当院の子育て・復職・介護支援センタ(二輪草センター)は平成19年に医療人GPに採択され現在に至るまで着実に成長し機能しております。私は育児中も市内の病院で皮膚科勤務医としてフルタイムの仕事をしておりましたが、今年から二輪草センターの助教に就任させて頂きました。まだ日が浅いのですが、今までの経験を活かす事ができ、日々やりがいを感じております。
 本セミナーに参加することで日本医師会の女性医師支援に関する様々な取り組みについて知る事ができました。日本医師会女性医師バンクが開設されたことは知っていましたが実際にどのように機能しているのかを知る良い機会でした。また各大学での取り組み事例の発表では様々な工夫がみられ、今後当センターでも取り入れてみたいものが多々ありました。今回の会を通して職場はもとより医師会など多方面における女性医師のサポートシステムが確立されてきている今、個々人のプロ意識と仕事を継続していく強い意志が要求されていることを再認識しました。
 意見交換会では他施設の担当の素敵な先生方とご挨拶し名刺交換ができましたことが収穫でした。この機会に今後も色々な面で情報を交換できるのではないかと思いました。参加者名簿を拝見しますと皮膚科医が多い事に気づきました。名高い先生方と共通の問題意識を持って集まることができたことを大変光栄に思いました。
 今後女性医師問題が解決することで地方の医師不足や医師の偏在が少しでも改善し、女性のみならず医師全体が働きやすい体制になるよう日々問題意識をもって取り組んでいきたいと思います。



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