活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

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平成25年度女性医師の勤務環境の整備に関する 病院開設者、病院長・管理者等への講習会 −女性医師がいきいきと仕事を続けていくために−

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 医師の労働環境の悪化が指摘される中、安心して医療を提供できる体制を作るためには、全ての医師の労働環境の改善が急務となっており、とりわけ女性医師が生涯にわたりもっている能力を十分発揮できるための支援が重要で、女性医師が働きやすい職場環境を整えることは全ての医師の勤務環境の改善に必須である。
 北海道医師会では女性医師の勤務環境の整備を推進するため、病院開設者、病院長・管理者ならびに管理職・事務長等への講習会を、3月1日(土)午後4時30分から開催した。

1.講演

 「明日の医療は貴女が創る」 
日本医師会常任理事 小森  貴

 平成25年の医師国家試験合格者の女性比率は32.7%で、年齢階級別医師数では、男性医師が最も多いのは50〜54歳、女性は30〜34歳である。
 出産や育児で一度職場を離れてしまうことは仕方がないことで、女性の年齢階級別労働力率の推移はM字カーブを描いているが、外国ではM字カーブにはならずに伸びており、ここに日本が改善するためのヒントがあるのかもしれない。女性医師の就業率を上げるため、男性医師の就業率を下げることが理想で、女性にしかできない出産時は女性が休み、育児や家庭のことは男性がして、就業率を下げることも大切なことだと考えている。
 平成21年に日本医師会で行った調査では、産休を取得しなかった方が約21%もおり、これは法律違反であって使用者は法によって裁かれるということを改めて認識する必要がある。院内保育所の設置状況については、大阪府医師会の努力によって、府内の院内保育所設置率は89%である。群馬県医師会の育児サポートは、登録者がベビーシッターを選び、基本的にそのベビーシッターがずっと担当になるシステムで、登録者の信頼を得て実績が増えている。学童保育についても深刻で、子どもが小学校に入学すると、院内保育所での対応は難しいので、学童保育の設立を促すことも今後重要になってくる。
 女性医師の勤務支援に必要なのは、産前産後休業取得の徹底、育児休業取得の徹底と代替医師制度、保育・託児施設・病児保育室の整備、短時間正社員制度などの柔軟な勤務制度、チーム医療やシフト制導入などの主治医制度の見直し、上司・同僚などの理解と支援、再研修・再就業支援などである。
 患者は女性5割、男性5割、医師も女性5割、男性5割であることが理想だと考えており、未来を開く医学・医療は6200万人の男性で作るより、1億2800万人の国民全員で作る方が良く、女性医師の勤務環境の整備は、壁ではなく未来を開く扉である。
 女性医師も男性医師も手を携えて、明日の日本の医療を作っていきましょう。

2.北海道内の病院の取り組みについて 

 「斗南病院の取り組み」
 KKR札幌医療センター斗南病院 近藤  仁

 斗南病院は243床の急性期病院で、医師68名が在籍し、その内女性医師は15名である。臨床研修医22名の内7名が女性医師で、当院にくる女性の後期研修医は、外科など厳しい科を選択する医師が多く勉強に対して意欲的で、一人の医師として学びに来ている。当院の研修医に対する取り組みとして、後期研修医を対象に国内留学制度を設けており、研修先以外の病院を経験し、幅広い臨床能力を養うことを目的に、3〜5年目の医師を全国にあるKKR病院に送り出している。期間は3ヶ月から最高6ヶ月で、留学中の給与は送り出した病院が負担する。北海道内でも、それぞれ違った特徴のある病院が多くあるので道内留学制度が実現してほしいと思う。
 子育て中の女性医師に、当院についてアンケートを行ったところ、同僚や上司の理解があり管理者がいくつかの選択肢を提案してくれることで、自分のライフスタイルに応じた働き方ができ、非常に働きやすいという回答であった。子育て中の女性医師が仕事を続けていくには、病院や上司の柔軟な対応が大切で、さらに女性医師が働きやすくするためには、各病院の育児支援制度を周知し利用してもらうこと、本人と適切な勤務形態についてよく話し合うこと、院内保育所やベビーシッターなどのハード面の整備が必要である。
 内視鏡検査は女性医師にしてもらいたいと思う女性患者が多く、今後も女性医師のニーズは様々な部分で出てくると思うので、女性医師の益々の活躍を期待したい。

「医師が働き続けるために −北海道における「医局」の役割と現状−」 
札幌医科大学医学部泌尿器科学講座 西田 幸代

 大学病院では、10年に満たない若手医師が24時間体制で診療を行い、中堅医師が高度医療、地方診療、後進の指導を行ってきたが、新医師臨床研修制度以降、底辺を支えていた若手医師が少なくなり、中堅医師への負担が大きくなった。若手医師の減少は、中堅医師の減少にも繋がるので、大学病院は地方診療にまで力を入れることができなくなり、地域医療の崩壊を引き起こしていると考えられる。そのため、一番土台となる若手医師をどのようにして維持もしくは増やしていくかが重要であるが、妊娠、出産、育児は、医師として最初の10年に偏りがちであるので、この時期にオール北海道で医師を確保していく体制が必要になってくる。
 札医大の泌尿器科は、現役で働いている女性医師は2人だけであり、女性医師への特別な支援ではなく、キャリア継続に必要な支援が充実しており、男性医師も含めた育児中の医師は、短時間診療医制度の活用が認められ、家族が病気の場合などは、治療可能な地域での勤務が可能である。
 いわゆる育児支援とは、短時間勤務や必要な休暇が取れること、親の代打と費用の補助がメインとなる。大学病院では短時間労働のシステムが作られているが、民間病院は、医師数が充足している病院に限り柔軟に対応できるが、女性医師同士の軋轢もあると聞く。地方では、育児支援の地域差が大きく、選択肢も少なく、24時間保育があっても発熱した場合は次の手段がない。地方での常勤は、都市より充実したサポートが必要で、勤務先が率先して支援をアピールする必要がある。
 札幌医大の短時間診療医は、4時間働いて5,803円で保育料すらままならない。そのため、地方の基幹病院での単日出張で生計を立てている。この単日出張は、長距離移動のリスクはあるが、地方に高度先端医療の知識を提供できるので、重要な役割を担っていると思う。今後さらに、子育て中の医師でも地域医療貢献を可能にするためには、外来診療時間の工夫、子連れで泊まりがけ出張ができるような最低限の準備があれば行きやすくなる。また、支援者の存在は人それぞれなので、病院長や管理者には、支援者のいない医師でも仕事を継続できるような方法を考えていただき、子育て中の医師活用のためには各病院で相談窓口を設置し、様々な悩みに対応していただきたい。最近は、仕事も育児も両方頑張るお母さんを「すご母」と呼ぶが、女性医師全員が「すご母」ではないので、臨機応変に対応できる支援体制が必要であると考える。子どもは、女性医師の足かせではなく仕事に取り組むモチベーションになることもある。子どもを持つ女性医師に対して、暖かく長い目で見守っていただけたらと思う。

3.情報提供

 「仕事と家庭の両立支援の助成金について」 
北海道労働局雇用均等室 曽根 浩太

 育児休業は、男性でも女性でも取得可能で、原則は子どもが1歳になるまで、3歳になるまでは短時間勤務制度がある。これらの制度を各病院に導入するため両立支援等助成金を設けている。育児のための短時間勤務制度の助成金は、小学校就学前の子供を養育している一日の所定労働時間が7時間以上の労働者が1時間以上短縮した場合に、中小企業事業主は延べ5人、大企業は10人まで支給される。中小企業1事業主に40万円、大企業30万円の支給となる。
 事業所内保育施設の設置・運営等に対する助成金は、労働者のための保育施設を事業所内に設置・増築等を行う場合、その費用の一部を助成している。設置費と増築費は、中小企業は2/3、大企業は1/3の助成で、設置費の上限額は中小企業2,300万円、大企業1,500万円である。
 また、平成26年度から女性の活躍促進についての数値目標を設定し、一定の研修プログラムの実施により、目標を達成した事業主に支給する「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」を新設予定で、中小企業30万円、大企業15万円を1企業1回限りで支給する予定である。
 各助成金の申請を行う場合は、早めに相談していただきたい。特に保育所の設置に関する助成金は、保育所の設置工事に着手する前に、当室への事業所内保育施設計画の認定申請が必要となるため、認定前の着工は助成金の対象にならないので、注意してほしい。

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