活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

その他

相談窓口利用者とコーディネーターとの懇談会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 「女性医師等支援相談窓口」は、平成23年6月15日に開設し、特に仕事と家庭の両立を支援するための育児サポート事業は、開始から2年目を経過し登録者が年々増えております。
 10月26日(土)に、相談窓口を利用し育児サポート事業に登録をした先生方にお集まりいただき、利用者相互の交流、情報交換ならびに利用者からの要望をとりまとめ、今後の支援方法に反映させるため懇談会を開催いたしました。
 当日は、子育てをしながら働くために必要なサポート、医師会の相談窓口に求めるもの、子育てをしながら働くために工夫していること、サポート体制に望むことなどをお話ししていただきました。


当相談窓口を見つけたきっかけについて
■育児サポート等は、女性医師それぞれ抱えている問題や希望は違っており、その中で自分に合ったサポートや自分に似た医師の体験談などを探すのが大変だった。モデルケースを探して、北海道や医師会、大学のホームページにアクセスして時間をかけて黙々と探した。
■道外から来て知り合いもいないので、ネットで調べた。
■道外の大学を卒業し20年振りに北海道に戻ってきたので、大学のつてなどは一切無かったため、最初は高校時代の同級生に連絡をしたところ、こちらの相談窓口を紹介してもらった。

子育てサポートについて
■今年の1月に、2泊3日で北見に子どもを連れて出張に行った。先方へは、子供の食事と最低限の安全確保だけをお願いした。行くと、医局にベビーベッドが用意されており、手術等のときは事務の方が交代で子供の面倒を見てくれた。いざ行ってしまえば、なんとかなると感じた。
■窓口の復職サポート事業を利用して就職した病院は、潜在医師の掘り起こしに力を入れており、そのモデルケースとして採用してくれた。子どもが幼稚園に通っているため行事が多く困っていたが、お手伝いさんにお願いしたらとても役に立っている。私の場合は、誰かを参考にするのではなく、自分に合った支援、自分が必要としている支援を紹介していただき、充実した日々が送れている。
▼安藤コーディネーター
 お手伝いさんを新聞広告で募集すれば、応募者が多く来るので自分で選ぶことができる。家が近くて、経験があって、いつでもすぐに対応できる人を自分の希望に合った人を探せるので、選択肢としてお勧めしたい。
▼小葉松コーディネーター
 自分で作成したチラシを配布してお手伝いさんを探した医師もいる。
▼藤井常任理事
 朝から子供が発熱し保育所で預かってもらえない場合でも、緊急対応してくれる団体が首都圏にはある。北海道でも同じような支援をしてくれる団体の情報があれば教えてほしい。


研究会等の託児サービス併設について
■女性医師支援で足りないことは、土日の研究会等に託児所が設けられていないことだと思う。北海道医師会主催の会でも設置されていないことが多く、医師会には常に託児所を設置するようお願いしたい。主催会社によっても温度差があると思う。研修会開催の際には、託児所の設置が当たり前になってほしい。
■佐賀県では「SAGA-JOY」という大学の女性医師支援事業があり、小規模の研修会や学会でも託児所がつくことが多かった。
■民間会社主催のどうしても参加したい研修会があったので、子どもを預けられる場所を主催の製薬会社に交渉したら、すぐに託児所併設の対応をしてくれた。
■小児科関係は、すべての地方会に設置されている。札幌には大きい保育所が多いので、声をかければ設置は容易にできると思う。
▼深澤副会長
北海道医師会主催の研修会すべてに託児所設置は予算の問題もありすぐには実現できないが、女性医師が参加する会議等においての託児所設置は検討し、製薬会社へは、北海道医師会から働きかけ託児所設置への意識を広げていきたい。
▼小葉松コーディネーター
 研修会には託児所を設けてほしいという現場の意見を医師会が吸い上げて、働きかけていくことが重要なので、皆さんも引き続き託児所設置を声に出して要望してほしい。

相談窓口の周知について
■北海道医師会女性医師等支援相談窓口事業が、研修医や学生に周知されていないことが、この支援を十分に利用できていない要因の一つだと思う。私は、勤務先の院長に紹介してもらったことが利用するきっかけになった。学生結婚をする先生方も今は多いので、当事業を知れば必ず役に立つと思う。
▼藤井常任理事
 医学生に対しては大学講義の時間に当事業の説明をし、研修医に対しては研修指定病院訪問を行い周知している。今後も周知活動は続けていく。

勤務形態について
■病院でパートとして週2日勤務し、その他の曜日に保健センターとクリニックでそれぞれ午後だけ勤務している。子どもと接する時間を長く持ちたい母親としての気持ちが強い。子どもが、来年から幼稚園に入れば常勤として働きたいと思っている。
■病院で、8時30分から15時15分の短時間勤務をしているが、定時で帰れることはほとんどなく産休前と変わらない時間で働いている。子どもが小さく、まだ物心がついていないので罪悪感はないが、大きくなるにつれて一緒にいる時間がほしいと思う。一度非常勤になってしまうと常勤に戻るのが大変だと思うので、できるだけ常勤で働き続けたい。
■常勤として月曜日から金曜日の9時から18時まで勤務している。子どもは幼稚園で行事が多く仕事を休むこともあるが、周りは理解してくれている。病院の協力体制にはとても感謝しており、業務内容の調整で上手く回していくことは可能だと思う。医師会には、多様な働き方を実現している病院の事例を周知していただきたい。
■世代的にも医局の存在を強く感じていて、医局を通さない就職は考えられない。女性医師が復職する際にも、勤務先を自由に選べるようになれば良いと思う。
▼藤井常任理事
 医局に相談し、自分の希望を貫くことはできないものか。
■医局も医師の数が足りていないので、医局に所属しながら、医局人事ではなく自分で見つけた病院へ移ることは抵抗があり、結果的に、医局人事によって異動する際に、条件が合わず休職してしまう流れになってしまう。
■私自身はずっと医局に所属していて、本当によかったと思う。医局に所属していたので、外科医としてバリバリ働いたのち大学院にも行くことができ、出産する時間も作れた。医局は人材が揃っているので、融通も利きやすい。ただ、女性医師が多い医局では、周りからの軋轢があるかもしれない。
■北海道へ戻ってきた時に、所属する医局は退局してきた。そのため北海道での就職がさらに不安であったが、いざ医局から離れてしまえば何とかなるものだと感じている。
▼深澤副会長
 今後、非常勤やパートでも採用してくれる病院が増えてくると思うので、子どもの状況に応じた働き方ができるようになると思う。もちろん、夜勤も当直もできる医師を採用したいと思うのが本音だが、パートでも働いてくれるのであれば大きな問題ではない。
▼小葉松コーディネーター
 私たちの時代は、子どもがいてもバリバリ働いていたが、今は、様々な制度があるので無理して常勤にこだわる必要はないと思う。
▼藤井常任理事
 現在は、週20時間で常勤扱いとなり、1日5時間を4日働けば常勤になるので、常勤も非常勤も大きな差はないと思う。
▼永石コーディネーター
 今後は、地方病院の医師確保ならびに子育て中の医師が地方で働いていくための体制作りを進めていかなければならない。医師会がどう動いてくれるかが重要だと思う。例えば、医師の派遣に合わせて、ベビーシッターも派遣してくれるなどの支援があればいい。

               託児室を設置しました。→
 

当日参加された先生方から感想を以下に掲載します。

相談窓口利用者との懇談会に出席して
西田 幸代
 私が北海道医師会の女性医師等相談窓口に相談を寄せたのは、出産後半年ほど経って子供を保育所に預けることにしたときである。
 仕事は産後8週明けから週に1、2日程度行っていたが、やはり子供を常時保育所に預けるとなると不慮の発熱など想定せねばならず、病児の保育所への迎えをあっせんして下さるこの窓口の存在はセーフティーネットを張る意味で非常に安心できるものであった。他の利用者はどうされているのか参考にしたいと思っていたが、子育て中の女性医師と言ってもそれぞれの背景も事情も異なり、一括りにはできないことがわかった。
 何らかの事情で就業先を探すのに苦労していた医師に道医師会が大きな役割を果たしていたことが理解できたが、現状では多くの子育て中の医師(女性に限らず)が札幌近郊の勤務先を希望しているようである。これでは都市の条件の良い病院から先に枠が埋まり、女性医師同士の軋轢も生じ短時間勤務や当直免除などが許されない雰囲気となりうることは容易に想像できる。
 一方で道医師会としては医療過疎を食い止めるため地方での勤務を推奨する必要があろう。しかしただ募集をしても、見ず知らずの土地で常勤かつ代替医師のいないような状況では希望者はみつからないだろう。まずは医師会が遠方でも単日、あるいは1泊2日などで勤務ができるような協力体制を作ってはどうであろうか。診療開始時間を1、2時間遅らせるだけでも子育て中は出張しやすくなるだろうし、子供と泊まりで勤務するのであれば勤務中の託児を紹介するなど、ちょっとしたことで働きやすくなるのではないか。
 それがもとになり常勤で働くことを検討するきっかけになるかもしれない。女性医師の「アルバイト」だって地方医療にしっかり貢献できると信じている。

懇談会感想
米倉 直美
 この会では、窓口利用者である私たち子育て中の女医と、医者の先輩であるコーディネーターの先生方が、直接意見を交換でき、とても有意義でした。これまで、先生方がどのような苦労をし、どう工夫して、家庭と仕事の両立をされてきたのかを知ることで、今後の働き方の大きなヒントが見つかりました。また、両立のために、ホームヘルパーなどのツールを駆使すれば、もっとうまく事が回る可能性があると分かり、利用を検討しています。
 また、院内での自分の働き方についても考えさせられました。以前は、子持ちの立場ゆえ無給での大学勤務でしたが、このような状況は自らも改善していくべきだと感じました。そしてそのためには、私たちの努力と、上司の理解のどちらも必要だと再確認しました。
 この事業がより広く知られることを願います。このような会に参加できたことを感謝しております。

感 想
大谷 杏奈
 様々な科で皆さん工夫されていることが分かり大変参考になりました。短時間勤務ではフルの先生方に申し訳ない気持ちにもなりますが、帰宅すると育児という仕事が始まるわけで、大変ありがたいシステムだと感謝し、自分に与えられた時間は微力でも医療貢献したいと思いながら日々働いております。
 現在家庭に入っている女性医師を短時間勤務でうまく回すシステムが今後発展していくことが大切だと感じました。先日NHKで50代男性が介護の両立が難しく退職するケースが急増しており人材の喪失が社会問題になっていると報道されていました。辞めた人々は、短時間勤務で周りに迷惑をかけるからと話していました。子育て女性医師と共通するものがあると感じました。
 それぞれの労働時間の調整を試みることはあらゆる年代の男女にとって大切な事だと思います。これからも知恵を出し合う場が継続されていくことを願っております。


懇談会に参加して
計良 淑子
 私は卒後7年目の病理医で、2歳の子供がおります。
 産後2ヶ月で日常業務に復帰し、夫と二人で仕事と家事育児を両立してきました。医師会の育児支援サポートに登録した他、さっぽろ子育てサポートセンター(ファミサポ)や子ども緊急サポートネットワーク、週1回の家事支援サービスなどを利用しています。というとばりばりと全力で働いているように受け取られるでしょうが、内実は、漠然としたキャリアへの不安、家庭内外の事柄を同時進行させ続けていくことへの疲れを抱えています。
 今回の懇談会では、似た環境にいる、またはいた方にお会いする機会に恵まれました。育児のサポートがほとんどない厳しい時代の経験談には、まだ私の現在の環境を整備する余地があることに気づかされました。また、サービスを受けるにあたり、既存には無いものでも自分から積極的かつ具体的に要求していく姿勢が必要との意見には、目から鱗が落ちる思いでした。
 行政、医師会としては、今後家庭に埋もれている女医の復職支援はますます重要になるでしょう。時間がかかる手探りの事業ですが、私のように不安な気持ちを持つ女医が意見を表出する機会を作ることは、足がかりの一つになるのではないかと思いました。私は、今回の懇談会に参加して非常に救われた気持ちがしましたし、今度の生き方により明るいイメージを持てたと感じています。ありがとうございました。

相談窓口利用者との懇談会
菊池 紅
 今回の会議では、問題点が様々な視点から挙げられたので、課題が山積みであることがよくわかりました。今後はこれらの問題点を大別し議題を立て、次回以降の会議では具体的な方策を出しあって方針を決めて行ったらよいのではと思いました。貴重な経験と知識、そして人脈をそれぞれが持っているこの会議では、きっと今後も良い話し合いができると思いますし、これを震源として他に波及させていくことも可能であると思います。あの場所に参加できない先生もたくさんいらっしゃるはずで、そういったところにも情報を流し、また情報をもらって医師会に提供できれば尚良いと思われます。
 個人的には、同じような環境の先生方や、支援くださっている先生方と直接お話ができることにより、随分と心強く感じました。復帰を迷っていらっしゃる先生方も、具体的な話はさておき、懇親会の機会があれば、まずこのような空気を肌で感じられてよいのではないかと思いました。また、復帰後の医師にとって、こういった場で仕事の人脈ができるのもよいことです。
 貴重な勉強の場をありがとうございました。参加して本当に良かったです。


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