活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日医関係

平成26年度第2回「2020.30」推進懇話会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 平成22年12月に閣議決定された内閣府の「第三次男女共同参画基本計画」の中で、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標の達成が課題とされました。日本医師会においても、「女性1割運動」と目標を定め、女性の積極的登用に取り組んでいます。日本医師会の活動への理解を深めていただくことはもちろん、今後の活動への参加を期待し、当懇話会を開催しております。
 
 今年度の第2回目の懇話会が1月30日(金)に日本医師会館で開催され、日本医師会の組織や綱領の説明、新規会員の獲得を目指し、電子認証センターで発行する医師資格証の発行、日医書籍の電子化などの取り組みや勤務医の健康支援・職場環境改善・女性医師復職支援など、さまざまな支援活動にも力を入れていることが説明されました。

 質疑応答では、勤務医委員会があっても、スタートと結果だけの報告では、ともに活動したいという気持ちにはなれない。議論の過程をもっと示すべきである。女性としての過渡期を迎えた方に上司としてどのようなサポート等ができるか。などたくさんの意見が出されました。

 北海道医師会からは、会員の丘のうえこどもクリニック坂田葉子医師、独立行政法人国立病院機構旭川医療センター山本和香子医師、医療法人渓和会江別病院佐々木彩実医師、札幌医科大学脳神経外科大坂美鈴医師、札幌いしやま病院の川村麻衣子医師、札幌徳洲会病院救急総合診療科プライマリ科中川麗医師に出席していただきました。

     ◇

当日参加された先生から感想記をお寄せいただいたので、以下に掲載します。

丘のうえこどもクリニック院長 坂田 葉子先生

 もう若くはないのですが、今年も日本医師会主催の「2020.30」推進懇話会に参加させていただきました。今年の議題は�@横倉会長による「日本医師会の医療政策―組織を強くする、地域医療を支える、将来の医療を考える」、�A道永常任理事による「勤務医の健康支援」。お二人の講演後、今年もまた活発な討論がなされました。
�@日本医師会の医療政策について
 現在の日本医師会の会員数は、医師総数の約55%とのこと。組織を強くするためには、会員を多くし、その中で活発に討論していかなければなりません。そのために、ITを活用した会員情報システムの再構築、電子認証センターの設立、ライブラリー電子書籍化などの魅力あるシステムを作り、医師会入会へのきっかけにしていこうという試みがなされていることを知り、驚きました。日本医師会に対して、今までは少し旧態依然的なイメージを持っていたのですが、これからどんな風に活動を広めていって下さるのか、とても楽しみになりました。余談ですが、北海道では郡市区等医師会加入割合は高いものの、日本医師会加入割合はあまり高くありません。一方、九州・四国地方の県では、興味深いことに、鹿児島県の日本医師会加入割合・郡市区等医師会加入割合ともに約100%を筆頭に、非常に高い日本医師会加入割合を呈しています(郡市区等医師会加入割合はさほど高くないのですが)。「自分たちで国を動かす」という幕末の志士たちの志が根付いているのだろうかと勝手に想像してしまいました。
�A勤務医の健康支援について
 勤務医の就労環境の問題が、こんなにも真剣に取り組まれるようになったことは、とても喜ばしいことです。しかし、この支援も「女性医師支援」同様、病院上層部の考え方だけではなく、病院自体のマンパワーがなければなかなかうまくはいきません。慢性的な人手不足に悩む地方の病院では、浸透するまでにまだまだ時間が掛かりそうな気がしました。またまた余談ですが、「勤務医の健康を守る病院7か条」の中に、「挨拶や『ありがとう』などと笑顔で声をかけあえる病院」という項目がありました。こんな項目を入れなければならないほど、労働環境が殺伐としてしまっているという現実に驚かされました。
 今回北海道からは、藤井常任理事と私の他に、5名の若い女性医師の皆さんが参加して下さいました。各地では比較的責任のある地位におられるのであろう年配の女性医師の出席が多い中、この活動に賛同して下さる若い方がこんなにたくさんいらっしゃるということは頼もしい限りです。今後「2020.30」の中心的人材になって下さるのを楽しみにしています。

独立行政法人国立病院機構旭川医療センター
   放射線科医長 山本和香子先生

 昨年ほどの悪天候ではありませんでしたが、今年も雪〜みぞれが降る東京にて平成26年度第2回「2020.30」推進懇話会が開催されました。
 今回の参加に当たって「2014-2015年度版 イラスト図解 医療費のしくみ」(日本実業出版社)を読みました。自分で直接関与しない分野についても理解しやすく書かれていると思いますし、今後の方向性についてもわかりやすく示されておりますので、ご紹介させていただきます。
 「2020.30」推進懇話会では、まず横倉会長より「日本医師会の医療政策」についてわかりやすいお話がありました。日本医師会の政策判断基準として国民の安全な医療に資する政策か、公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か、の二点が示されておりました。
 次に道永常任理事より「勤務医の健康支援」と題したお話がありました。医師の職場環境改善ワークショップのご紹介がありましたが施設管理者もしくはそれに近い立場の皆様に十分周知されているのかどうか、私にはわかりません。疲弊している医療機関では、職場環境整備どころではない現実も存在していると思われます。
 「2020.30」推進懇話会は女性医師の医師会活動への参画が目的となっていますが、現状では医師会員ではない医師に(男女問わず)医師会は何をしているのか、医師会活動は何が目的なのかが正しく理解されていない場面がまだ多く見受けられます。数ヶ月前には初期研修医に「医師会は開業医のための会ですよね」と言われました。 この発言に至った経緯を確認しておりませんが、これが現実です。医師会活動への参画ももちろん重要ですが、診療報酬や医療保険制度の維持発展のため医師会が果たしている役割を末端の医師会員が今後の医療を担う医師たちに少しずつ伝えていく必要があると考えます。

医療法人渓和会江別病院外科 佐々木彩実先生

 1月30日に開催された「2020.30」推進懇話会に参加させて頂きました。昨年同様東京に雪が降り現地へ向かうことも出来ないのではないかと思われましたが、多少の遅れが出たのみで無事に着き、会に参加することができました。
 日本医師会の医療政策と勤務医の健康支援についてご説明頂き、北海道は郡市医師会への加入率は高いものの日本医師会への加入は低いのはなぜだろうか、地域医療活性化にはどのように行うと良いだろうかなど、普段あまり自分の思慮の及ばない事柄に関して考える機会を頂きました。勤務環境の改善等には日ごろから医療情勢についてアンテナを張って情報を収集し、自ら出来ることを考えていくことや医師会等への働きかけが必要と思われますが、たいてい郡市医師会の会議等は仕事が終了した夕方から夜にかけて行われているようで、小さい子供がいるうちは医師会に直接参加することはなかなかハードルが高く感じられます。また、日本医師会長も同席されての質疑応答では、月に休みが1日あれば良い程度など大変忙しく働いている女性医師のご意見もあり、このような環境では男性、女性かかわらず健康を害してしまうと思われ、今後の働き方に関して早急に対策が必要であると思われました。

 

札幌医科大学脳神経外科 大坂美鈴先生

 1月30日に本年度第2回目の「2020.30」推進懇話会に参加させて頂きました。この日は平日の金曜日であり、日常診療を休み出席しました。また、関東地方に降雪予報が出されていた日で、東京へ向かう朝一便は欠航で、参加できないのではないかと思いましたが、運よく、予約便は問題なく東京に着きました。冬の平日の会議は交通手段の確保など特に問題が多いし、日常診療もあるので、Web会議などを活用してもよいのではないかと思いました。
今回の議事で「勤務医の健康支援」について説明がありました。勤務医の健康支援の為の検討委員会は、平成20年に発足しており、日本医師会が、「勤務医の健康を守る病院7カ条」や「医師が元気に働くための7カ条」などを提案し、勤務医の労働環境の整備や、また女性医師の支援にかなり前から取り組んでいることを知りました。医療勤務環境改善支援センターの設置も着々と進んでいるとのことで、今まで、日常診療に追われ、医師会の活動を知る機会もなく、過ごしてきたことをとても恥ずかしく思いました。 
また地域医療問題に関しては、「かかりつけ医を中心としたまちづくり」が掲げられ、24時間対応の保育所開設や市内住宅補助等といった医療機関、介護施設における地方活性化モデルは良いと思いました。しかし、地方離れしている状態をどのように改善するかは難しいです。
その他さまざまな議事がありましたが、会場から活発な質問や意見の発表があり、多数の女性医師が全国の医師会で活躍されているのだなと頼もしく感じました。また今回は、道内各所でご活躍の女性医師の先生方の出席が多く、お目にかかれてうれしく思いました。
また、このような会議に参加させていただきありがとうございました。

札幌いしやま病院 川村麻衣子先生

 1月30日、東京で雪が降るとマスコミが騒いでいたまさにその日、残念なことに東京に行く予定があった。平成26年度第2回「2020.30」推進懇話会に出席するためだった。機材遅れで出発が10分ほど遅れた以外は、予想外にあっさり東京の日本医師会館に到着した。ただ、雪だと思い傘を持参しなかったため、空港で折りたたみ傘を購入するはめになった。残念。今回は私も含め昨年の10月に出席された先生方の他に、過去の懇話会に参加された先生方も出席されていたため、とても華やかな会であった。北海道からは多くの先生が出席されたので、心強かった。専門科もバラバラな全国の女医さんが中央に集まるという、日常では考えられないシチュエーションに少し興奮した。日本医師会の会長である横倉先生をナマで見るのは初めてだったが、案外普通の人だった。特に印象に残っている内容は、都道府県別郡市区等医師会加入割合と日本医師会加入割合の一覧表だった。鹿児島県が最も優秀であり、北海道は成績が悪かった。実際、私も日本医師会の会員ではないため、足を引っ張っている一因だ。組織の強化には会員数を増やすことが必須だとしきりに主張されていたが、本当だろうか?他にも組織を強化する方法はあると思うが。また、常任理事の道永先生が勤務医の健康支援という内容のお話をしてくださった。日本医師会がさまざまな女性医師の支援を行っていることを初めて知った。日本医師会女性医師バンクなるものがあることも初めて知り、現在休職中の同期などには有用な情報かなと思った。いくら中央で様々な取組みをしていても、地方にいる私たちにはほとんど情報が回ってこない現状を解決しなければ、本当の意味での医師支援にはならないのではないかと思う。今回の「2020.30」推進懇話会が結局どういうものだったのか振り返ると、日本医師会への勧誘活動であったと理解した。わざわざ北海道から沖縄県まで全国から女性医師を集合させる意味があったのだろうか、とても疑問が残る会であった。

札幌徳洲会病院
   救急総合診療科プライマリ科 中川 麗先生

 貴重な機会を感謝いたします。今回は、性差を超えて、勤務医の健康や、かかりつけ医の役割などについても伺うことができました。大変勉強になりました。ありがとうございます。
正直に申し上げますと、結婚や妊娠、出産の経験がないと、なんとなく女性の会において肩身がせまく、しかし、男性もいる中では、女性としての意見を求められ、困惑してしまうことが多くありました。結果、自分が女性であることを自覚させられる環境からの逃避をしてきました。
 ところが、研修の先生方や学生さんとの仕事をいただく機会が増えると、問題の多くは、基本的には、男性にも女性にも等しくのしかかるのではないか。と、考えるようになりました。その解決策もまた性差を超えた協力のもとに得られるのではないか。解決には、性別もまた一つの特性として、それを生かした働きも求められ、いずれにせよ労働問題や教育を考えるにあたり、性差という視点をのぞいては十分な対策ができないのだろう。
そこで、おもいきって参加させていただきました。
 今回のテーマはまさに、学びたいことや直面する悩みや迷いに対するヒントをくれました。
実習に来てくれた研修の先生方や学生さんは、性別の差なく、みな、一生懸命頑張ってくれました。旺盛な好奇心と向上心から、背伸びをし、頑張る楽しさを知り、成長する一方で、修行の名目のもとどこまで耐えるのかという心の迷いから目をそらす。そんな瞬間も少なくないように思います。彼らの努力が医師としても人としても豊かな人生へつながるものでありますように。過度に自身を犠牲にせず、しかし、誰かを搾取することに無神経ではありませんように。
 研修プログラムを作成し、発展させて行く上で、これらのバランスをとることの重要性を改めて認識しながらも、その具体策は見いだせずにおりましたので、多くの先生方のご意見を伺い、大変感銘を受けました。また、勤務環境やかかりつけ医の役割など、地域医療の将来についてどのようなビジョンがあり、対策を検討されているのか。その方向性を伺えたことにも刺激を受けました。
 今の私にできることは、まず、目の前のちいさな活動にはなります。しかし、少しずつでも前にすすんでゆけるよう、学んだことをゆっくり噛み砕き、育んでいきたいと思います。今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。 
    
       (質疑応答:北海道から参加の中川医師)

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