活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

日本医師会共催:医学生、研修医等をサポートするための会「医学生・研修医と語る会」〜「医師のワークライフバランス〜医師全体の協働のために〜」

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


北海道医師会では、医学生・研修医が意見交換を通じて、男女共同参画やワークライフバランスについて、性別を問わず、若い時期から明確に理解してもらうことを目的に「医学生・研修医と語る会」を開催しており、本年度第2回目は3月4日(水)に北海道医師会理事会室で開催した。当日は、医療学生団体から医学生4名と医師11名の参加があった。

最初に、「時勢に適応した病院を考える」をテーマに、医療と介護の連携など地域包括ケアシステムについて話題提供をしていただいた。その後、参加者全員でフリートークを行った。
なお、この会には北海道医師会から長瀬会長、深澤副会長、伊藤・北野両常任理事、女性医師等支援相談窓口のコーディネーターと小職が参加した。


話題提供「時勢に適応した病院を考える」 札幌ひばりが丘病院 院長 高橋 大賀


当院のある厚別区は2010年現在、面積が24.38㎢、人口12万8千人と人口密度が高く、高齢化率は21.9%である。当院は、平成25年に在宅療養支援病院に認定され、患者が住み慣れた地域で安心して療養生活を送れるよう、計画的な診療と患家の求めに応じて、24時間・365日体制で往診が可能な体制を確保している。また、訪問看護ステーションとの連携により24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保することや、緊急時に在宅療養を行っている患者が直ちに入院できる体制を確保するなど、必要に応じた医療・看護を提供できる環境を整えている。高齢化が進んでいる日本では今後、医療と介護の連携が重要になってくる。急性期医療から慢性期医療の病病連携、慢性期医療から在宅医療の医療介護連携、在宅医療から急性期医療の病診連携など、地域包括ケアシステムの構築が必要である。現在は、患者情報をクラウドで共有するなどの厚別区在宅当直当番システムの作成も検討中である。札幌市包括ケアシステムの構築なしに地域医療は守れない。できれば、札幌でシステムを構築しながら、同時に地域もカバーできるような連携作りを実現したい。医療機関があるから人が住み、人が住むから税収が増え、税収が増えれば機関が充実し人やモノが集まるので、まずは医療機関を育てなければならない。今後も、時勢を見据えた病院運営をしていきたい。


フリートーク テーマ「医師のワークライフバランス〜医師全体の協働のために〜」


○女子学生(IFMSA-Japan)
2025年以降、看取り人口の増加が予想され、病院以外での看取りが重要になってくると思う。高橋先生は、様々な領域で力を発揮しているが、その力の源は何か。
○高橋氏
2025年問題については、2025年になる前が重要と考えていて、私の中では、2020年問題と捉えるようにしている。自分が思うことに取り組めているのは、周りの人たちに恵まれて、協力してもらっているからだと思っている。また、介護分野で活躍されている方々は、同世代の方が多く、コミュニケーションが取りやすいということもある。
○女子学生(IFMSA-Japan)
高橋先生が考える介護との連携は、医療だけでなく行政などにも広がっていくのか。
○高橋氏
行政側も介護との連携を進めていきたいと考えているようだが、民間との連携となると上手く動けない状況のようである。介護との連携を進めるには、まずは行政の体制を改善することが先決であり、行政と民間の間に医師会が入ることで動き出せるのではないかと考えている。
○男子学生(札幌医ゼミに行く会「すずらん」)
診療報酬の改定について教えてほしい。
○高橋氏
診療報酬の改定とは、診療にかかった点数によって患者が支払う費用が決まるが、この額がその時代の医療情勢に見合ったものなのか2年に一度見直すことである。
○長瀬会長
医療は現物給付と言って、診察や検査などにかかったお金を点数で数えている。医療の運営は医師のみができ、非営利であるが、介護の運営は民間でもでき、営利であるものが多い。
○男子学生(札幌医ゼミに行く会「すずらん」)
以前、在宅診療を行っているクリニックに見学に行ったことがあり、在宅療養支援診療所の認可を受け、実態とは反し、診療報酬を多くとる診療所があると聞いたことがある。診療報酬の改定によって、ギャップや問題が生じることも考えられる。
○高橋氏
病院は非営利なので、資金が余ってしまう場合は、どう地域に還元していくかを考えなければならない。経営の面から考えるとマイナスばかりでは困るので、難しい所である。どこか一つの病院が儲かるのではなく、全体で平均する方が運営は上手く循環する。
○長瀬会長
診療報酬には点数加算というものがあり、例えば、病床数からみた医師や看護師の数が多い病院には加算されるようなものもある。施設基準や認定支援病院などによっても加算されることもある。
○女子学生(札幌医ゼミに行く会「すずらん」)
以前に足寄や釧路で、訪問医療と訪問看護を見学する機会があり、家族の負担が大きいことを実感した。家族や親戚が近くにいないことが多く、介護環境の実態を見た気がする。介護・福祉の領域で医師として何ができるだろうか。
○高橋氏
都市部と地方では介護サービスの質に差があるのは事実である。家族によって介護力も異なるが、NPO法人が行っているサービスなど、介護に関わるサービスは意外と多い。医師は病気しか扱えない立場にいると思う。医師として介護に足を踏み入れるのではなく、相談・協力できるような連携システムづくりが必要である。
○濱松コーディネーター
クリニックを開業しているが、主に在宅医療をメインに、毎日一人で患者さんの家を回っている。様々な家族を見てきて、介護をしている家族の中には、介護度が上がるとがっかりする家族もいる。本来であれば、介護度が上がることで手厚いサービスが受けられるようになるが、お金もその分高額になり、格差問題が浮き彫りになる。在宅介護は今後も増えていくことが予想されるが、核家族化が進んでいる現状では、老々介護にも限界がある。開業医の中には在宅診療を行っていなくても、水面下で往診に行っている医師がいる。その実態を把握して上手く利用できるシステム作りを進めてほしい。
○高橋氏
現在検討中の在宅医療支援システムでは、実際に手上げはしていないが協力してくれている医師も把握している。これから具体的に声を掛けてみようと思っている。

○米澤氏
 東京にいた頃は、障がい児医療を専門に働いていたが、北海道にきてからは夫の介護をしながら地域医療の手伝い程度の勤務になっている。障がい児医療は圧倒的に医師が少ない領域なので、正規雇用で無くてもいくらでも声がかかる。夫が亡くなってから、医師として自分にできることがあれば役に立ちたいと思い、道に相談した。北海道は、小児障がいを診る医師が非常に少ないので、この分野で少しでも貢献できればと思っている。
○新谷コーディネーター
毎日救急に追われていた頃と比べ、現状はどうか。在宅医に女性は多いのか。
○高橋氏
その頃は救急に夢中だった。今は緩和ケアについて突き詰めたいと考えている。当院で在宅医と呼べる女性医師は3名いる。
○安藤コーディネーター
在宅療養支援病院とそうでない病院の質の差は非常に大きい。旭川には女性医師のみが数名いる在宅クリニックがあり、ローテーションで子育てしながらでも働くことができるので、女性には良い環境だと思う。ひばりが丘病院の訪問看護ステーションには、在宅専門看護師がいるのか。
○高橋氏
 当院にはいない。いなくても訪問看護ステーションを置くことは可能である。ステーションスタッフ全員の意志や考え方を統一することが今後の課題である。
○北野常任理事
 近年の高齢化により、医療から介護へと上手く繋いでいかなければ、病院だけでは入院ベッドも足りない状況になる。営利目的の強い介護施設が増えすぎることが懸念される。
○伊藤常任理事
 診療報酬は、検査をすればするだけ高くなる。医師は検査や治療の裁量を任されているため、医師もしくは病院によってバラつきがあり、しばしば問題となることがある。診療報酬そのものを現場の状況にあったものに簡素化するため、医師会が上手く関与していければと思っている。
○深澤副会長
 介護保険が導入された頃は、親ないし高齢者の介護を国民全員で支えようという目的で、介護施設が次々と建てられたため、施設に入る高齢者が急増した。そして、介護施設に入れない溢れる高齢者が後を絶たないため、在宅介護への転換という逆戻りの状況になってしまっている。
○鈴木氏(ウロギネ女性の会)
医療と介護の連携については、私たち市民も一緒に進めていくべきだと思っている。最近は、治療や検査をする際に、患者または家族がどうしたいのか問われることが少ないと感じる。患者の相談にのるなどの患者サポートのために、診療報酬加算を認めるべきである。医療者と患者が一緒になって改善していく姿勢を示さなければならない。


記事一覧を見る

アーカイブ一覧

TOPに戻る