活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

平成27年度第1回「2020.30」推進懇話会

常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 

 日本医師会では、第三次男女共同参画基本計画の閣議決定(平成22年12月)を受け、女性医師の役員や委員会委員への積極的登用に取り組んでいます。当懇話会は、その取り組みの一環として、医師会の活動への理解を深めていただくことはもちろん、今後の活動への参加を期待して開催しております。
 
 今年度の第1回目の懇話会が10月18日(日)に日本医師会館で開催されました。今年度は、新たな試みとしてあらかじめ設定した6つのテーマについて参加者がグループディスカッションを行う形式で開催されました。
 最初に、横倉日医会長より2020.30実現のために問題意識を共有し、望ましい形への発展に取り組んでいただき、本日参加の先生方には地域の場において大きな支えになっていただきたいと挨拶があり(今村女性医師支援センター長代読)、その後各会場に移動し、テーマごとに分かれてグループディスカッションが開始されました。
 北海道医師会からは、会員の丘のうえこどもクリニック坂田葉子医師、札幌医科大学泌尿器科西田幸代医師、医療法人渓和会江別病院佐々木彩実医師、札幌医科大学脳神経外科大坂美鈴医師、札幌徳洲会病院救急総合診療科プライマリ科中川麗医師に出席していただきました。
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各グループでのディスカッションの様子は、当日参加された先生方からご報告いたします。


1.産休の代替医制度(各科地域ごとにシステムがつくれるか?)

札幌徳洲会病院救急総合診療科プライマリ科 中川麗先生

 参加の機会、ありがとうございます。
 今回は、産休の代替医制度をテーマにディスカッションをするグループへ参加させていただきました。皆様、次世代の女性医師が少しでもその能力を発揮しながらも家族をもつことができるように支えるだけではなく、日本の将来が少しでも明るくあるように熱く思いを語られました。いくつもの案をまとめてもってこられている方もいらっしゃいました。案も非常に具体的でした。
 リタイアをした医師のバンクや常勤として働くことが難しい子育て世代のバンクをつくり、医師会が窓口として、医師派遣ができないか期待される声が多くあがりました。しかし、専門性の高い仕事をどう代替するのか、遠方の医師の補充をどうするのか、解決までの道程は険しい印象も覚えました。特に、北海道の地域性を考えると、新しく人を補充する方法はもちろんのこと、今実際に頑張っている先生方がより働きやすく、長く続けられる方法や、復帰しやすい方法にも力をいれる必要性を感じました。
 議論は終始、活発に進みましたが、特に、リタイアを考える時期にさしかかった先生方が熱を込めて議論されておりました。性差を超えて、こういうエネルギーに溢れた方々が戦後の日本復興、成長、医療の発展を支え続けてきてくれたことに、もはや畏怖の念を抱きながら席をともにさせていただきました。こうして、開拓された道を私たちは歩かせてもらっているという歴史を思い、襟を正す機会となりました。
 どう受け継がせていただき、どう引き継いでくれる後輩に渡してゆくのか。改めて、今、目の前にいただいている仕事を大切に頑張っていこうと思いました。貴重な機会を、ありがとうございます。今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。


2.専門医制度の変更に伴う今後の問題点について(日医生涯教育制度との関連を含めて)

丘のうえこどもクリニック 坂田葉子先生

 昨年5月に発足した日本専門医機構。専門医を「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義、独自の研修プログラムを作り、従来の学会認定専門医と一線を引こうとしています。今まで専門医として自分たちが積み上げてきたものはいったい何だったのだろうか、今後どのような方向に進んでいけばいいのかなどの疑問を胸にこの分科会に参加しました。このテーマは、司会の鹿島直子先生、記録の檜山桂子先生のもと、17名でのディスカッションとなりました。参加者は内科、小児科、外科、整形外科、耳鼻科、麻酔科、産婦人科を専門とする医師達で、まずそれぞれの科における、新専門医制度に対する問題点などが提起されました。どの診療科もまだまだはっきりしない部分が多い中、専門研修機関施設の小児科の医師から「非常に残念なことに、小児科志望の初期研修医3名が、小児科研修プログラムの内容を見て小児科を断念してしまった」という話を聞き、もうすでに研修現場では動き始めていることを実感させられました。
分科会において出された意見を集約させていただきます。
 1)新専門医研修は、今まで以上に臨床現場での学習を重視したものであり、多岐にわたる症例のレポートの提出が求められる。出産・育児・介護・本人の病気・留学については研修の延長が認められるが、女性医師が研修に復帰し臨床実績を積み重ねることが、より大変になることが予想される(特に総合診療専門医の研修は、大変だという指摘もあった)。 
短時間勤務の取り扱い、復帰後のモチベーションの維持についての配慮もお願いしたい。
 2)診療科によっては、従来の学会認定専門医を取得せずに地域で働いている医師が少なくない。また、学会認定専門医を取得していたとしても2020年までに新基準の専門医を更新しなかった場合には、どのような扱いになるのかはっきり明記してほしい(診療報酬に差が生ずる等)。
 3)今まで日本医師会がすすめてきた「かかりつけ医」機能はどうなるのか。「総合診療専門医」とのすみわけをはっきりしてほしい。


3.各地での保育制度について(特に病児保育について、充実・拡大するための方策を含めて)

札幌医科大学脳神経外科 大坂美鈴先生

 今回は、特に病児保育施設の問題と改善策について、ディスカッションしました。本グループ参加者16名のうち、14名は都道府県医師会の理事や、幹事、委員長といった役職の先生方でした。お子さんもすでに成人されており、保育施設等を利用する立場というより現在、女性医師を支援するための整備に全力で取り組んでいるため各地域の進捗状況や問題点について詳しく聞くことができました。
 病児保育の受け入れ時間は、朝8時から夕方5時までの地域が多く、病院受診後病児を預けると仕事に間に合わないとの理由で時間を早めることができないかといった意見や、病児が新たな感染症に罹患してしまう事、預け入れ前日には空いていないことが多い等、そして、経営側では、病児保育施設の維持費がかかる上に、当日キャンセルが多く赤字になるとの問題が挙げられました。
 これらの改善策として、病児保育施設間のオンラインネットワークシステムで感染症の情報や空き情報を共有できれば、病児の受け入れ時に空いている施設をすぐ紹介することができ、感染症の問題も改善できるとの意見がありました。しかし、今後どのように実現していくかは課題です。
 今回出席されていた小児科医院併設の病児保育を経営されている先生は、診察後そのままお子さんをお預かりするといった方法で、補助金をもらい経営はまずまずとの事でした。
 個人病院併設型の病児保育があると受け入れ時間の問題は、クリアできますが、補助金が出ない地域もあり、これもまた病院併設型施設をどのように増やしていくかは議論が必要です。
 最後に学童保育について少し話が出ましたが、児童クラブなどの学童保育施設は非常に少なく民間の送迎サービスやファミリーサポートを利用しているケースが多いようで、こちらも整備が必要との事でした。


4.女性医師が責任ある立場を引受けることや、社会貢献に積極的になるための教育・支援について(女性がトップになることを望まない傾向の原因を含めて)

医療法人渓和会江別病院 佐々木彩実先生

 上記テーマに沿って、18名の女性医師と司会・記録の3名の先生でディスカッションがなされました。まず女性が責任ある立場を引き受けることについて、18名のうちほとんどが府県医師会の理事などをされている方々で、そのきっかけは医師会会長からの一本釣りという方が多く見られました。郡市医師会で仕事をしてから都道府県医師会へという方はおらず、郡市医師会で役職のある女性は少ないとのことでした。富山県医師会は女性理事の割合が21%で副会長も女性、都道府県医師会の中では最初に女性の会長が誕生するのではないかとのことでした。会長に理事になることを勧められて辞退する方はいなかったそうですし、医師会の仕事に関しては実際に携わってみると人材育成され性別による仕事の優劣はないとのことです。一方別の県では例えば夫婦で医師の場合、女性が理事に抜擢されても男性に役職がなければたぶん断ってしまうケースがあることや、医師会に参加するよう声をかけても介護や子供が小さいなど家庭の問題で断られることが多いなど、女性が役職に就くことにさまざまなハードルがあるようでした。大阪府はクオーター制度があり、必ず女性が一定の割合で役職に就いていますが、女性でも医師会等の仕事は男性に劣らず出来ているので同様の制度を広めることで責任ある立場で活躍される女性を増やすことが可能ではという意見もありました。
 社会貢献に積極的になるための教育、支援については医学生のうちから女性がどのように活躍できるか、男女ともに教育・啓発することが重要との意見が出されました。実際大学で医学教育に関わっている医師からは入学当初は希望にあふれている女子学生も解剖等に入ると男性との体力の差を感じ始め、5-6年生になるころには以降の生活や結婚を考えてモチベーションが下がり結局マイナー科を選んでしまう傾向があるという話がありました。女性医師のロールモデルを見せる、男性も含め一緒に働くにはどうするかという意識付け、改革など学生時代からの教育に一定の効果があるのではという意見がありました。また、医師として働き始めてから、各学会等で男女共同参画委員会等があってもほとんど活動をしていない実態もあるようでしたので名義上だけではなく実際の行動に移す必要性もあると考えられました。


5.医師会の役割、これからの医師会のあり方

札幌医科大学泌尿器科 西田幸代先生

 第5グループには総勢16名の医師が参加された。数名の方々は既に各地域での医師会活動にご尽力されており、郡市・都府県・日本医師会の三層構造によるさまざまな問題に苦慮されているとのことであった。また医師会の会員を増やすのに研修医の会費を無料にするなどの対策をとっているとのことであったが、なぜ会員を増やす必要があるのか、増やしてどうするのかが明確ではないとの意見も出ていたのが印象的であった。医師会活動に熱意のある方々が多く加わっていたようで、正味1時間ほどのディスカッションでは意見を語り切れずに終わった人たちもいたように思う。わざわざ女性だけで集まって医師会の将来を話し合うのだから、未来志向で何か斬新なアイデアなど出ることを期待したが、これまでの不満を吐き出すような場になっていたのは少々もったいなく感じた。
 近い将来、毎日多くの患者を看取る日々がやってくる。どんな最期であっても医療者の甚大なエネルギーが必要となる。命に携わる現場に多くの医師をつなぎとめ、互いの疲弊を少なくすることは医療界の将来に極めて重要なことと思う。私自身は最近数年ぶりに病棟業務に復帰したが、夕方には病院を離れ家事・育児に奔走している。病棟では新薬かジェネリックか初耳の薬があふれ、新たな治療法・概念・手段が増え、ずっと大学で外来は継続していたのにも関わらず医療の変化に驚かされる。一方、一般業界のフルタイムである1日8時間程度の勤務をしていても、時間に制限のあることを他の医師に申し訳なく感じる。この業界では時間制限のある医師は、後ろ指を指されたり負い目を感じたりしながら働かざるを得ないのか。負い目を感じた医師たちが自身で命の現場から完全に身を引かないよう、また一度勤務をセーブした医師が勤務レベルを上げた際に戸惑うことが少なくなるよう、医師会には皆のバックアップ組織として、更なる医療のトレンド教育と、時間制限があってもやれる仕事はたくさんあるのだと短時間勤務医のイメージアップ戦略を考えてもらえないかと思っている。


6.2020.30を実現するために必要なことは?

北海道医師会常任理事 藤井美穂

 第6グループには202030推進の直接的な内容を問うテーマが与えられました。大学教育、卒後教育を通しての育成、大学や病院そして行政を動かす立ち位置にある医師会のポストにどのようにして女性医師がつくことができるか、具体策について意見を出し合いました。日本医師会男女共同参画委員会の調査で、この10年間で大学あるいは病院の指導者、管理者の女性医師比率が大きく増加した結果を得ていることも参考に、話をすすめました。
 1)大学教育の中では、リーダーになるための教育を徹底して行う。医学生時代にリーダーとして必要な資質を身につけておくように、教育の立場にある医師は念頭におく。
 2)ポストを得るためには業績が重要であることは必至であるため、学位や科学研究費取得、論文作製などに弛まず勉強する。大学、職場の仲間と互いに時間など都合をつけ合うなどコミュニケーションを上手に取り、共同研究などを積極的に行うように務める。
 3)育児中であってもキャリア形成を続けるために、あらゆる育児サポートシステムを受けることに躊躇しない。
 4)医師会は国民の健康を守る根幹である医療制度を守る提言ができる機関として重要な組織である。
女性医師の増加に伴い、医師会員の女性医師比率が増加してくることは必至である。医師会の3層構造の中で、女性役員をボトムアップで増やすことは現実的に難しい。日本医師会がトップダウンの形で勤務医枠、女性医師枠を作ったが、このようにしばらくの間はクオーター制を導入しながら、医師会における2020.30運動を推進していって欲しい。
 大学や病院、医師会や社会の中で、「ポストがひとを作る」ことを頭におき、女性医師も推薦されたら「Yes,I do」と応える姿勢を持つことが重要であることを確認し、Discussionを終えました。
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 グループディスカッションの後、各グループの発表ならびに質疑応答があり、最後に笠井常任理事から本日ご提示いただいたフレームワークを日医として、一つずつ前向きに解決していきたいと考えている。参加された先生方も地域に戻ってアクションにつなげてほしいと挨拶があり閉会した。

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