活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会

大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会
―よりよい男女共同参画を目指して―


常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


 標記連絡会が去る12月18日(金)日医女性医師支援センターの主催で、日医における女性医師支援・男女共同参画に関する取り組みの周知と各大学医学部と各医学会の取り組みについての情報交換を目的に、54大学および64学会の関係者、各都道府県医師会の担当役職員等239名の参加で開催された。
 北海道からは、小職と北海道大学第一内科清水薫子特任助教(北大女性医師等就労支援室員)、札幌医科大学産婦人科学講座寺本瑞絵講師、旭川医科大学からは山本明美二輪草センター長が出席した。

 横倉会長ならびに・彁頬�艝医学会長ぁ・の挨拶ぁΒり、その後議察λ董γた。」
最初に、日本医師会笠井常任理事から日医の女性医師支援事業のアウトラインの紹介があり、引き続き、各大学等の取組みの事例発表があった。


旭川医科大学の取り組み
 旭川医科大学二輪草センター長・皮膚科学講座 教授 山本 明美先生

 「医師不足・少子化地区における医科系大学の取り組み」をテーマに、医師不足により低下する労働力の補完と出生率向上の少子化対策は、どちらも女性の活用が不可欠であることから、働きやすく・子育てもしやすい施設を目指し、個人と組織2つの視点からの取り組みについて説明があった。

 二輪草センターは2007年に開設され、大学においてのキャリア教育を考え、2010年より医学科3年医学概論においてワークライフバランスを考える授業を正規に開始した。「仕事を行う地域・施設について重視する」のアンケートを授業の前後で実施したところ、男子学生の15%が「自分の出身地」と回答したものが授業後には11%と減少し、逆に「パートナーの意向」が10%から16%に増加する結果であった。「子どもができたら妻には家にずっといてほしい」と望む男子学生は女性医師と結婚はしないと、1日授業をしたら伝わるようである。小学3年生までの子どもを養育中の医師を対象に、平成20年4月から二輪草枠医員として育児短時間勤務制度を開始、病児・病後児保育室「のんの」を開設した。

 子育ては家族だけするものではなく、職場が子育てカップルをサポートすることをコンセプトに、色々な職員や同僚が子育てを手伝う。医師・看護師の子どもたちとの触れ合うことにより、学生には「子どもがいて働き続けるのは普通のこと」の意識が芽生える。男性の意識改革には外の力が必要で、古いタイプの男性はオバサンに言われても変わらないが、外部の男性に言われるとライバル意識が芽生える。
 二輪草センターの開設により、看護師の退職率が低下し、職位別女性医師数では講師が増加した。この8年間の活動から、全員参加のプロジェクトにより、当事者の意識が変わり組織が変わることが分かった。


久留米大学の取り組み
久留米大学病院男女共同参画事業推進委員会・医学部病理学講座 助教 守屋 普久子先生

 久留米大学病院男女共同参画事業推進委員会(元気プロジェクト委員会)の3本の矢�@キャリア教育の導入・充実、�A女性医師の就労支援、�B勤務医の労働環境の見直しについて説明があった。

 久留米大学病院は、医師数544人(女性医師率20.8%)、初期研修医83人(女性医師率38.5%)である。久留米大学医学部医学科では、元気プロジェクト委員会で策定した新カリキュラム(2年生の講義5コマ)を平成27年度の1年生から適用開始となった。今の学生は、中学や高校において「男女共同参画社会」や「ワークライフバランス」などを既に学んできており、その知識を幅広く的確に身につけさせること、同じ価値観持たせることを考えている。女性医師の就労支援では、パート医師制度を平成27年4月から病院内の2部門に導入している。勤務医の労働環境については、中堅以上の医師の意識改革が大事であり、元気プロジェクト委員会の議事は、翌月の診療部長会で必ず報告することを義務づけている。女性医師が働くことにより、診療業務・病院運営への貢献度は計り知れなく、男女共同参画への取り組みは、組織として取り組む時代となり意識改革の時代へと発展している。


日本循環器学会の取り組み
日本循環器学会男女共同参画委員会委員長

大阪大学総長特命補佐/大阪大学保健センター長・教授 瀧原 圭子先生
 女性会員比率が12.5%である日本循環器学会の女性社員(評議員)が283名中34名の12%と会員と同比率となるまでの、男女共同参画委員会を中心とした各支部とのネットワーク強化など10年間の取り組みについて説明があった。

   循環器内科を専攻する若い女性医師が減っているのが現状である。2010年に男女共同参画委員会が設立され、9支部(地方会)からの代表者で委員を構成し、地方会においてセミナー・フォーラムを開催している。委員会では、女性循環器医師をとりまく現状の勤務環境をできる限り早急に改善して、子育てをしながら仕事を継続し、キャリアを形成できる勤務システムの形成・確立をめざしており、2014年に勤務環境改善のための提言を公表した。また、年次学術集会および各支部の地方会における女性座長の増員、日本循環器学会の女性社員や女性支部評議員の増員を推進するよう事務局に働きかけた。今後とも、さらに女性循環器医師が仕事を継続してキャリアを形成できる勤務システムの確立が求められるので、学会活動に取り組んでいきたい。


日本リハビリテーション医学会の取り組み
日本リハビリテーション医学会理事長
昭和大学医学部リハビリテーション医学講座 教授 水間 正澄先生

 若い会員が少ない日本リハビリテーション医学会における、女性医師への取り組みについて説明があった。

 医師会員に占める学会員の割合は14.2%であるが専門医は20.1%である。リハビリテーション医学は、能力における男女差がないこと、体力における男女差が出にくいこと、ADLや小児医療、介護、コミュニケーション能力などを発揮しやすいこと、チーム医療の特徴を活かせば、チームの一員としての役割が十分に果たせ、生活設計も立てやすいことなど、ワークライフバランスの視点からも不利が生じにくい診療科であることを女性医師にアピールしている。専門医会の一組織として、2009年6月にRJN(リハビリテーション科女性専門医ネットワーク)が発足し、2013年からは委員会となって活動を行い、役員との風通しの良い会となっている。委員会は、自主的な活動が中心であったが、組織として認められるようになってきている。

                     ◇
当日参加された先生から、感想をお寄せいただいたので以下に掲載する。

北海道大学女性医師等就労支援室員 清水薫子
 北は北海道から南は沖縄まで、各都道府県の女性医師支援の担当者ならびに全日本医学会分科会における、女性医師支援に関わる担当者が参加するこの会に出席することは、新しい年に向け気持ちを新たにする大変貴重な機会です。

 日本医師会常任理事の笠井英夫先生から日本医師会における取り組みがご紹介された後、事例発表として恒例となっている大学の取り組み、学会の取り組みのセッションがありました。このプログラム構成も地域の特徴を反映する大学での取り組み、各専門性を保ちながら全国の医師の特性を網羅する必要がある学会の取り組みが、それぞれの個性を放つ魅力的な企画と大変興味深く拝聴させて頂いております。

 今年は旭川医科大学、久留米大学、日本循環器学会、日本リハビリテーション医学会からのご発表でした。旭川医科大学二輪草センター長の山本明美先生からは少子化対策という観点からも男女共同参画の重要性をお話があり、ワークライフバランスを個人レベル、大学・職場レベルで考えるというご提案がありました。久留米大学からは久留米大学病院男女共同参画事業推進委員会の守屋普久子先生より「元気プロジェクト」のご紹介がありました。同プロジェクトはキャリア教育の導入・充実、女性医師支援、勤務医の労働環境見直しを三本の矢としてロードマップを作成し、着々と進行しております。日本循環器学会からは日本循環器学会男女共同参画委員会委員長の瀧原圭子先生より女性会員の専門医取得率、筆頭発表者の割合は男性のそれらと同等であること、育児をしている女性医師、していない女性医師、男性医師それぞれにモチベーションを上げていける取り組みへの展望をお話頂きました。このご指摘は大変勉強になり、「女性支援」を謳うことは必ずしも全職員の職場環境を改善しない可能性を包含しておりますので、改めまして男女共同参画をいう視点の重要性を考えました。日本リハビリテーション医学会からは日本リハビリテーション医学会理事長の水間正澄先生より同分野は元来多様性があり、多様化する医療人には介護を含めた実生活においても寄り添える分野とお話頂きました。

 今後も全国での様々な取り組みを勉強し、当院でも当院ならではの取り組みができるように努力して参ります。

札幌医科大学 産婦人科学講座 寺本瑞絵
 平成27年12月18日に行われた連絡会に参加させていただきました。各大学・病院・学会における女性医師支援の取り組みについて学ぶことができた貴重な機会を与えていただきました。

 最も興味深く、勉強させていただいたのは、旭川医科大学皮膚科教授の山本明美先生の御講演です。隣の大学のことながら、全く二輪草センターの活動については、知りませんでした。医学部3年からワークライフバランスの授業があり、課題が学生に与えられ、将来のキャリアプラン・ワークライフバランスについて両性で話し合い発表させるというのは、我々も取り入れるべきなのではと考えました。病児・病後保育のみならず、夏季冬季休校中のキッズスクールを設けていること、イクボス・イクメンについて大学全体で考えていることなど、本当に素晴らしいと思いました。

 まだまだ我々の大学では院内夜間保育、病児・病後児保育は充実してはいないものの、当科(札幌医科大学産婦人科)では、就業継続・復職・キャリアアップなどの支援体制は、斎藤教授の下、施策がとられており、妊娠出産を機に退職した女性医師は現在のところおりません。フル勤務〜時短勤務、当直免除、週2日労働等、各家庭のサポート体制や希望に応じ、臨機応変な対応をとっております。

 ただ、最近、私たちの科でよく話し合いになることは、男女参画を続けていくには、女性医師は権利主張ばかりでなく義務の遂行も必要ではないかということです。女性医師(育児中など)の権利により、負担を代わりに請け負っている男性医師や独身女性医師、育児しながら当直も夜間帯も通常通りフル勤務する女性子持ち医師などがどんどん疲弊し、不満感を貯めていくと、足並みもそろわず、結局医局全体のパフォーマンスが落ち、雰囲気も悪くなり、男女参画とは何ぞや?ということになりかねません。義務とはどのようなことを指すのか、考えはまとまりませんが、育児がひと段落ついたところで病院や医局にイクボスとして指導や、労働、サポートで返すのも一つの方法かもしれません。特に医局員が少ない科では、公平感を保ちつつそれぞれが可能な範囲で生活も仕事もキャリアアップも行っていくための方策が早急に必要かと思います。

 また、産休育休ならば、(堂々と)お休みが取れるにしても、妊活を希望する女性医師は我慢を強いられている状況も見かけます。実際、不妊治療を行うには、大学勤務では困難との申し出より、勤務先を変更することもありました。
 女性医師が、ではなく、性別を問わず、全員参加で取り組む姿勢が大切だと再度思いました。


旭川医科大学子育て・復職・介護支援センター長 山本 明美
 本学復職・子育て・介護支援センターが平成19年の開設以来、取り組んできた事業と成果をお話させていただきました。医療界での男女共同参画の推進と同時に考えなくてはならないのは社会の少子化の解消です。現在旭川市の人口は約35万人ですが、今の特殊出生率と人の移動が続けば2100年には8万7千人に減少し、都市機能が果たせなくなってしまいます。

 道東道北の地域医療を担うために設立された旭川医科大学の使命をはたすためには女性医師が十分能力を生かせる環境を整えることが必要ですが、同時に医師であっても子供を育てていくことは社会が認めていることだと皆に理解してもらわなくてはなりません。つまり、働きやすく、子育てもしやすい職場、地域社会の実現が唯一の解決策なのです。

 このために私たちが行ってきた活動は、センターのHP(http://www.asahikawa-med.ac.jp/hospital/nirinsou/index.html)で詳しくご紹介していますが、以下に主なものを紹介します。

�@まず学生へのキャリア教育です。育児と仕事を両立している先輩医師や、イクメン、イクボス医師の体験談を聞くこと、そしてグループワークで将来向き合わなくてはならない問題の解決策を話し合うことを通じて、どのように人生設計を立てたらよいか自ら考えてもらう機会を提供しています。

�Aまた、医学部学生がボランティアで大学職員の子供達と夏休み・冬休みにさまざまな活動をしてもらうキッズスクールの活動を通じて大学として職員の子育てを応援している姿勢を感じ取ってもらいます。

�B今年度から設けたベストサポーター賞では、子育てや介護を支えてくれる職場の同僚を表彰し、働きやすい職場環境の浸透を図っています。

 このような取り組みによって、看護師の退職率が低下し、女性医師の職位では平成18年には一人もいなかった講師が平成27年には5名に増えました。平成25年度には北海道から男女平等参画チャレンジ賞を団体受賞しました。

 子は国の宝、地域の宝であり、大学・病院の宝でもあるということを子供のいない職員にもわかってもらうことで地域における医師不足と少子化の両方を解決すべくこれからも活動してまいります。


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