活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

その他

第9回日本性差医学・医療学会学術集会で広報活動をしました。

 平成28年1月30日(土)〜31日(日)ニューオータニイン札幌で開催された第9回日本性差医学・医療学会学術集会で展示コーナーに女性医師等相談窓口のPR用コーナーを設けていただき、参加者への広報活動を行ってきました。


 また、男女共同参画シンポジウム「女性医師・女性メディカルスタッフの地位向上:現況とその環境整備」のセッションでは、相談窓口を利用されたお二人の先生の発表があり、当相談窓口事業の紹介を含めてお話されましたので、その内容をご紹介します。

腹腔鏡技術認定おかあさんの両立奮闘自問自答
 札幌医科大学医学部泌尿器科学講座 西田 幸代

 各種専門医や認定医の取得が重要視される昨今、私自身各種資格を取得してきた。中でも腹腔鏡技術認定医はハードルの高いものであり、注げるエネルギーすべてを費やして取得したと言っても過言ではない。この資格取得に向けた期間に出産・育児が可能であったかと聞かれると、答えはノーである。出産・育児を経験し、今現在も泌尿器科医として継続できている理由は、仕事と研究と出産・育児のピークがずれており、ずらすことを許される環境にいたことだと思う。

 近年は医師免許取得後、比較的早期に結婚・出産を経験し、専門医などの取得に苦労される女性も多い。総務省の社会生活基本調査(http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/pdf/houdou2.pdf)によると、共働き夫婦において、女性は男性より労働時間は概ね4時間短く、一方で家庭生活時間は4時間長い。これは過去20年以上も大きな変化はなく、日本はそういう国だということがわかる。アメリカの某サイトでは医師のburnoutの状況が調べられているが、科によっては半数以上の医師がburnoutしており、女性のほ うが精神的にburnoutしやすいと結論づけられている。Burnoutの要因として家庭生活の問題は加味されていない。女性が男性同等あるいは男性以上の労働時間が課される場合、一体どのようにして仕事と家庭を両立するのか。特に医師という仕事は、日本男性の平均労働時間である8時間程度の仕事をしても、当直なし・残業なしでは不十分な医師とみなされる。針のむしろに座りながら、心身ともにすり減らして仕事をしている医師たちをどのようにサポートするのか、医療界全体で考える必要がある。

 まずは時間外業務の担当者に十分な報酬を出してほしい。仮に当直料が3倍になれば、当直免除の人間に対する風当たりは弱まるだろう。さらには時間外業務の整理である。前述の調査からわかるように、社会生活の維持および次世代の育成には4−5時間/day/familyが必要なのであるから、いわゆる育児コアタイムと称される18時から22時に育児責任のある人間を常時参加させるような業務は避け、時間の捻出に協力していただきたい。

 また病児保育の経費の問題や預けにくさの問題などが言われるが、病児の時のみならず有事の際のた めに医師が休めるよう科を超え病院を超え、緊急時医師派遣連携システムの構築など、いろいろな仕組みを皆で知恵を絞って考えだせばきっと働きやすい日々がやってくると思われる。

 出産・育児を経験した女性の認知機能は向上するとか、脳の一部の神経細胞が大きくなるとか、アタマが良くなるという報告が増えている。他にこれほどまでの人材を育成する術はあるだろうか。賢くなる女性医師たちをみすみす手放してはいけないし、女性たちもあきらめてはいけない。(かくいう私も3日に一度は「もう無理だ」と思うが。)医師も子育ても、思った以上に長丁場である。積極的に家事負担を軽減し4−5時間をどう捻出するか、皆で考えて行きたい。




私が思う育児中のキャリア継続に役立つ工夫と援助
 KKR札幌医療センター斗南病院放射線科 越智(橋本)純子

 私は夫の度重なる転勤のため、育児をしながら勤務地を転々としている身です。今はそれに加え第二子妊娠中(しかもシンポジウムの時点で臨月!)ですが、いろいろな女性医師支援事業や周囲の人たちのおかげで、このような状況でもほぼ途切れることなく仕事を継続できています。今回のシンポジウムではこれまでの自分の経験、今の悩みや今後の目標についてお話しさせていただきました。

 その中で、放射線科診断専門医であることを利用した自宅における遠隔読影についても簡単に説明いたしました。遠隔読影は自宅でも行えますが、クオリティコントロールあるいは個人のスキルアップ等の目的から、在宅勤務のみという医師は少数であり、普段の診療の補助として利用されることが多いのが現状です。それでも医師側にとっては、産前産後休暇や育児中、配偶者の転勤あるいは留学についていかなくてはならないといった状況でも仕事ができるというのは、より多彩な勤務形態を可能にし、ひいては休職期間の短縮、眠っている人材の活用にも役立つのではないかと思います。放射線科以外の科における遠隔医療の利用はまだ限定的です。どのように取り入れていくか、取り入れられるかは診療科によって大きく異なりますが、遠隔医療の推進とともに今後検討がなされていく議題であると感じました。

 また、私自身は今の仕事環境にほぼ満足していますが、仕事を続けていく上でのキャリアアップが現状における最大の課題です(育児の悩みは尽きませんが・・・)。特に私のように医局から半分脱落してしまったような医師の場合には上からの強制力もないため、自分で意識的にキャリアを作っていかなくてはならないと感じています。今の自分に出来そうな仕事を無理のない範囲で続けていくことは燃え尽きないために大事ですが、いわゆるマミートラックに陥らずやりがいのある仕事を続けていくためには、中長期的な目標を掲げて意識してステップアップを踏んでいく必要があるのではないかと考えています。

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