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育てる男が、家族を変える。社会が動く。育ボスセミナー

平成28年度医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会
育てる男が、家族を変える。社会が動く。育ボスセミナー



 9月10日(土)午後4時から医師が働きやすい職場環境を整え、全ての医師の勤務環境の改善を図ることを目的に、勤務環境整備に関する講習会を開催した。


 深澤副会長より「本講習会は女性医師支援を目的に開催してきたが、今年は管理職がライフイベントで職務を離脱する女性医師を理解し、子育てや介護への参加意識を男性医師に持っていただき、ますます増加する女性医師をいかに活躍してもらうかを考えていただくことを目的に、北海道医療勤務環境改善支援センターと共催で開催する。今後の、病院経営活性化につなげる機会ともしていただきたい。」と挨拶があった。





(1)「ワーク・ライフ・バランスに関する世代間ギャップを考えよう

−人口減少社会におけるもう一つの落とし穴−」


           一般社団法人 北海道総合研究調査会 理事長 五十嵐 智嘉子


 古くは古代エジプト文明の象形文字の中に若者を批判した内容が残されており、世代間ギャップはどの時代においても常に存在している。現在は、「団塊の世代」から「ゆとり世代」が企業の人員構成となっており、それぞれの世代の育ってきた時代背景や経済状況により価値観は違っている。


 2014年8月に日本生産性本部が公表した「職場のコミュニケーションに関する意識調査」によると、課長・一般社員ともに7〜8割が「業務上のコミュニケーションはとれている」と回答しているのに対し、一般社員は「部下が上司に相談している」「相手に対して的確に物事を伝える自信がある」の設問には自信がないと回答している。この結果から、部下は経験が浅く相談するタイミングをうまく取れないことを理解し、上司からコミュニケーションを図ることが必要であると考える。


 若年層の都市部への流出は、特に東京への転出が増加しており、男女ともに「給与が高い」「やりたい仕事がある」を就職希望理由として挙げているが、女性は男性より「親元や地元を離れたい」という意識が高い。北海道は「フロンティアスピリットにあふれており、常に挑戦する姿勢のある土地柄」とのイメージが形成されているが、実は女性の働き方への理解は進んでおらず「風通しが良くない」「育児・介護休暇がとりにくい」「ワーク・ライフ・バランスへの管理職の理解が低い」とのイメージが持たれている。道内の男女別人口移動は、どの地域も転入者より札幌や関東への転出者が多く、とりわけ女性が男性に比して転出が激しい。最近は、人口ダムとして機能していた札幌からの関東への転出が超過しており、東京圏への転入は全国第2位である。ワーク・ライフ・バランスの視点では、女性有業率44位、女性有業率と育児をしている女性有業率の差37位、管理職に占める女性割合31位と北海道はいずれも低く、そもそも女性が働いていない実態が存在している。


 今後は、「働き方改革」を行わなければ地域の出生率は上がらず、人口減少に歯止めをかけることはできない。「女性の社会進出が出生率の低下につながる」は間違った指摘であり、子育てと仕事の両立が可能な地域の方が出生率は高く、すでに専業主婦でなければ子どもを産まない時代ではない。東京圏に転出した若者が地元で就職する条件は、男女ともに配偶者の職場があることが最も高く、これからは、夫婦共々の職場環境づくりに意識を向ける時代となっている。男女ともに働きやすい職場を作るためには男性の理解と協力が重要であり、1夫婦の話し合い、2親子間の話し合い、3職場のコミュニケーション、とりわけ管理職と部下の相互理解がより良い職場環境を作り出すことになる。




(2)「理解と協力〜こんな勤務環境だったから、俺も子育てできました!〜」


           北海道医療勤務環境改善支援センター労務管理アドバイザー・
                        特定社会保険労務士 菅 田 真紀子


 企業や医療機関の人事と労務管理を行っており、どの業種も人材確保困難の相談が増加している。今後の労働力の中心となる「ゆとり世代」に焦点を当て、勤務環境の改善が必要である。


 男性の育児休業取得に関して、ある40歳の地方公務員の実例を紹介する。この男性は、妻が3歳10か月の双子の女児を残して失踪し、突然仕事と子育てを両立しなければならない状況となった。勤務時間は8時30分から17時15分までの実働8時間、休日は土日および祝日、有給は年間20日で、家族の看護休暇などの制度は民間企業と同様に整備されていたが、実際に利用できる風土ではなかった中で、上司・同僚の理解とサポートにより、これらの制度を利用しながら乗り越えることができた。


 男性の育児参加向上は今後の重要な課題であり、若い父親が子育てに積極的に参加できる取り組みと職場環境の改善、男性も育児休暇を取ることができる風土の構築がポイントとなる。医療機関においても医療従事者が仕事と子育てを両立し働き続けるために、長時間労働を前提とした業務体制の改善、夜勤・オンコール体制の人員配置の見直し、国が推奨している以上の子育てサポート制度の構築が必要と考えられる。


 平成29年1月1日には、育児・介護休業法と男女雇用機会均等法が同時改正され、有期労働者の育児休業の取得要件の緩和、子の看護休暇の取得単位の柔軟化や育児休業等の対象となる子の範囲の拡大、マタハラ・パタハラ防止措置が取られる予定である。また、職場意識改善助成金や両立支援等助成金など、職場環境整備のための各種助成金を有効活用し、働き続けられる職場風土づくりを行っていただきたい。



(3)「質の高い医療クラークの配置−医師の勤務負担を軽減する仕組み−」


          北海道医療勤務環境改善支援センター事務局長 小山田   剛


   医師が本来業務に専念できるよう、医療行為以外の事務作業をサポートするのが医師事務作業補助者である。その業務内容は診断書や紹介状、処方箋の作成、電子カルテ入力や入院手続きの説明等がある。医師事務作業補助者には、必要な資格や経験はなく、求められるのは医師や医師と一緒に働く医療スタッフや事務職員との連絡調整のコミュニケーション能力である。また、専従者要件が定められており、レセプト業務や看護助手業務を行っている人員が、空いた時間に従事することはできない。


 平成24年度の診療報酬改定において、医師事務作業補助者の配置人数によって患者一人あたり最大で8,100円算定が可能となり、平成28年度改定では外来や病棟勤務が8割を超す場合、最大8,700円を算定することが可能となった。医師事務作業補助者の配置により医師が医療行為に専念し、1日の患者の診察がより多く可能となると診療報酬を多く得られることにもなる。また、医師の間接業務や残業時間が軽減されることによる節減効果、医師の主観的な負担の軽減感、診療待ち時間の短縮等による医療機関の業務効率向上、外来患者や処置・手術件数の増加による医業収入の増加が期待でき、医師招聘の際の高いリクルーティング効果にもつながる。


 病院にとって医師事務作業補助者の導入は多くのメリットがあるが、運用がうまくいかない例もある。日本は諸外国に比べて必要な研修時間が32時間と短く、知識、技能が身につかないとの声もあり、配置部門に対応した研修カリキュラムと他の医療職との役割分担、連携体制を明確に規定する必要がある。失敗しない採用・配置としては、診療報酬を理解している医事課職員または、医療スタッフの業務を理解している看護補助職の異動などによる既存職員の配置転換や、既存の非正規、有期社員を正規に転換などがあり、その場合には、制度資金や補助金の利用が可能である。


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