活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

病院訪問

札幌医科大学附属病院を訪問しました。

医師の就労環境づくりを支援する事業周知のための臨床研修指定病院の訪問
札幌医科大学附属病院[平成28年12月19日(月)午後6時]




 今年度の病院訪問は、札幌医科大学附属病院で、札幌医科大学塚本学長、山下病院長ほか11名の医師と研修医2名にお集まりいただきました。また、札幌医科大学医師会からは斉藤常任理事もご出席いただきました。


 塚本理事長からは、本学の女性医師就労支援は立ち遅れており、ビリに近い位置にいると強く認識している。今後の大学・病院運営のために、若手医師の忌憚のない意見を聞かせてほしいと挨拶を頂戴しました。



 今回は、最初に話題提供を2題行い、その後意見交換を行いました。


(1)日医女性医師支援センター 大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会[12月2日(金)]について
  札幌医科大学医学部女性医師等就労支援委員会副委員長 寺本 瑞絵


 事例発表では、北海道大学は病後児保育室を開設し、大学院生を含む同大学病院の教職員が利用している。平成28年度の登録者アンケート結果より、病児保育施設があることで職員の欠勤日数が最大マイナス1.5日に減少しており、病児保育の必要性が示された。また、医学部2年生を対象に行ったワーク・ライフ・バランスのアンケートから、次世代は男性も育児休暇を希望し、男女ともに仕事と家庭のバランスを重視する傾向があると示された。


 和歌山県立医科大学では、国際的視野や研究開始のために学部生に対する短期海外留学支援を行っている。基礎系研究室配属期間中の2か月間と臨床実習期間中の約1か月間であるが、希望者は男性より女性が多い。女性医師が学内助教から助教へ昇進する40歳前後は、子どもが就学する時期と重なるため、学童保育など就学の親子が活用できる支援策を課題として挙げていた。


 日本産婦人科学会の取り組みとして、就労支援ではなく一人でも多くの指導的立場の女性医師を育てることを到達目標としているが、産婦人科女性医師の現状は、夜間当直の緩和がされていない医師が22.6%もいるにもかかわらず、一方で、分娩担当無しが48.4%に上っており、行き過ぎた緩和が行われている。また、当直翌日の勤務緩和は、子育てにかかわらない医師のためのものであるが、導入している施設は全体の4分の1程度にとどまり、完全実施は1.4%のみで実質緩和がないに等しい。日本耳鼻咽喉科学会はポジティブアクションの推進に取り組んでおり、関係学会の役員選出や学術集会での指定演者や座長への女性の登用を積極的に行っている。育児中の学会員が学術集会に参加できるよう、託児所の設置や子ども向け企画の基本手技のパネル展示等を設けている。



(2)北海道における女性医師等支援の現状と課題
  北海道医師会女性誌等支援相談窓口コーディネーター 西田 幸代


 北海道の医師は札幌圏に集中し、地方は医師が減少して各地域の中核となる拠点病院の負担が増え、札幌医科大学が医師を派遣することで支えている。妊娠を機に一時キャリア中断した当学出身の女性医師の中には、医局に所属していなかったことや、復職支援の窓口がなかったため、北海道医師会や北海道大学の窓口を利用することで復職を果たしたケースがあり、札幌医科大学は他大学と比較すると支援体制が十分に整っているとは言えない。とりわけ、北海道の女性医師の現状として、札幌や旭川などの大都市では短時間労働システムや医師数が充足していることもあり柔軟に勤務形態を合わせることができるが、地方においては病院の規模や能力の差が大きく、選択肢も非常に限られており、24時間保育も地方へ行けばいくほど充実しておらず、預けている際に体調が悪くなっても次に打つ手がない。また、病院側が勤務形態に柔軟な対応可能としても、同僚の負担が増加することが考えられるため、地域医療の貢献を希望していても手を挙げることを躊躇してしまう。そのため、「地方での常勤」は勤務先が主体となってサポートをしなければならない。


 女性医師が働き続けるためには、医師として働き続けたいという「個人の意欲」、自分だけではなく、同僚が困っているときは自分も助けるという「仲間との協力」、医師事務作業補助者等の医師の仕事の負担を減らすシステムや、企業勤めの配偶者の育児制度の活用などの「社会のシステム」の3つの歯車が機能することが重要である。


 札幌医科大学に今後求められる女性医師支援とは、必要とするサポートは一人一人違うためオーダーメイドを原則とした最低限度の労働環境の整備である。このままでは、復職意欲のある優秀な女性医師が、他大学等を頼ってしまい、せっかく育成してきた優秀な人材を自ら流出させることになる。支援が充実している他大学の支援体制を取り入れ、女性医師支援の遅れを取り戻すためには、逆転の発想で大胆な新支援体制を構築し、事態の打開を目指す必要がある。


 日本泌尿器科学会の男女共同参画委員会委員として、転居に伴う引っ越し相談支援窓口を開設した。現在は医局の影響力が弱まっており、医局を通して転居先に希望の病院を探すことは難しいが、学会の影響力は強く、仲介者として間に入ることで希望先に就職することが可能である。また、学会での子ども向け企画として、手術体験セミナーの開催や実際の機具に触れて親の職業を理解してもらう取り組みを行っている。


 今後も、夫婦が共に医師の世帯が増加することが推測される。新しいシステムとして、育児サポートが充実している札幌で子どもを預け、夫は大学病院で研究を行い、妻が片道2時間程度の地方病院に短時間の常勤をすることを提案したい。これにより、一定程度のキャリアを積んだ医師の地方派遣が可能となる。医師会には、病院との仲介と派遣先での必要な社会資源の調査など、モデルケースの取り組みをお願いしたい。



 引き続き、意見交換では山下病院長から全国医学部長病院長会議に出席した際に、当大学は女性医師支援のシステムが整っておらず、大変遅れている印象を持った。教授などからは、女性医師としてどのように生きたいかはひとりひとり千差万別であり、それに合わせて支援する仕組みを整えなければならない。大学の問題として、時間外の雑用が多々あるため、医師免許が必要ではない仕事は減らしていただきたい。医師の勤務日数と時間を調整するなど、オーダーメイドの支援は重要であり、女性医師のキャリアアップは、ひとりのための支援を行うと同時に、他の医師へのインセンティブを考慮しなければうまくいかないなどの意見が出されました。


 また、女性医師からは、オーダーメイドの支援は重要であるが、圧倒的に情報不足であり、女性医師に働きたいと思わせるための情報戦略が必要。多くの女性医師は病児・病後児保育を希望しており、大学にあればもっと働くことができる。産休を取得した際に、ほぼ無給の中で保険料や年金を支払い、子どもを預けてかなりの負担であった。1年程度のことと考える人もいるが、休職中の保障がないのはモチベーションに影響する。医師が他の職種と違う点は、異動時期の予想がつかないことで、札幌市の認可保育所の申請には厳しい面があるので、対応できる人事制度を作るなどの改革が必要。無認可保育所に預けると、子どもが3人いると月の出費が赤字となる。地方の病院附属の保育所は両親の収入を考慮しており、院内保育所といえども地域によって価格設定が違うなどの意見がありました。



 初期臨床研修医の先生からは、女性医師の就労支援に係る活動に参加して、入局先を決める際に相談することができた。これまでもロールモデルとなった女性医師が数多くおり、支援体制も整いつつあるが、同時にこのような活動の周知が不十分と感じている。今後どのようにキャリアを積めば良いのかも見当がつかないが、ロールモデルとなる先輩がいるとありがたいし、自分自身も後輩のロールモデルになれるようなプランを作ることができたらと考えているとの発言がありました。



 また、産婦人科の教授でもある、札幌医科大学医師会齋藤常任理事から、産婦人科は20代の医師の過半数が女性医師であり、当医局も20・30代前半までは女性医師が過半数を占めている。今年は女性医師8人が出産し、来年も現時点で4人に出産の予定があり、男社会の杓子定規な人事では医局の維持はできなくなっているなど、さまざまな問題が生じていると報告がありました。女性医師はキャリアを積みたい人とペースダウンしたい人が同時に存在しており、ひとりひとりにあった環境が必要で、大学の体質自体は男社会から女社会へと変化してきているが、小中高の教員が産休を取得すると代用教員が派遣されるのに医師にはその仕組みがないことと、子育て中だが強い就労意欲のある女性医師が多くいる中で、勤務先の主導権を握るのは常に夫であることであるなど理不尽なことがまだあると発言されました。



 また、各医局の状況をお聞きすると、夫婦揃っての転勤については夫の勤務先の近隣、もしくは同じ職場に勤務できるよう極力調整を行い、希望を聞きつつ、夫婦間の意向に沿って配慮しているとのことで、夫の配属先に教室の関連病院がないときには、北大や旭川医大の教室と話し合いを行い、他大学の関連病院に勤めることができるよう調整している医局もありました。


 

 育休などの休職中の身分保障について、西田コーディネーターから産休・育休の期間に女性医師が身分の危うさを認識する。出産を機に自分は雇用保険に入っておらず、法に守られていないことを初めて理解する。2年以上同一施設に勤務していると育児休暇手当が支給されるが、事務に詳細を確認しに行くと自分で申請するよう指示されるケースがある。一般企業や市中病院では事務方が各種手続き行うが、大学病院はそのような体制になっていない。また、北海道は他県に比べて異動が多いため、雇用保険に加入できず、ハイリスクであるとの報告がありました。大学の仕組み改善するのは難しいかもしれないが、何かあった時に大学から守られているという安心感が得られるような制度を作っていただきたいと参加者からの発言もありました。



 最後に、塚本理事長からは、大学講師は身分として教員でないので、大学は代用教員の仕組みがないが、休職に伴う代替医師は新たに名称を作り、雇用保険問題など事務的にクリアしなければならない点も多いが、給与支給できるよう、病院長も含めて検討したいと発言があり、山下病院長から本日は自分の科だけではなく、院内の若手医師の意見を聞くことができ、熱い思いを承ることができた。私の任期中に良いシステムを作れるようにしたいと挨拶があり閉会しました。



 

 

              今回は、病院訪問初の託児室を併設しました。

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