活動報告

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平成29年度医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会


「医師事務作業補助者のフル活用の提案」



常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


 平成30年2月4日(日)午前10時30分から、北海道医師会館8階会議室にて、医師が働きやすい職場環境を整え、全ての医師の勤務環境の改善を図ることを目的に、勤務環境整備に関する講習会を開催した。



 深澤副会長より、「医療の現場において、医師事務作業補助者の役割は大きい。医師の長時間労働も昨今の働き方改革に関連しているので、皆さんの医療機関でも効果的に補助者を活用できるよう実りある会としたい」との挨拶があり、続いて、共催の北海道医療勤務環境改善支援センター赤井センター長から「医療の質の向上は、経営の安定化につながる。」と挨拶があった。



 講演では、実際に育成・活用に取り組んでいる病院長のほか、看護師、医師事務作業補助者より、それぞれからお話いただいた。参加者は120名であった。


講 演 1

「医師事務作業補助者の育成・活用への挑戦―自分達と全職員の意識改革の道のり―」
留萌市立病院 院長 村 松 博 士 先生     

               
 留萌振興局の管内人口は49,694人、当院は道立羽幌病院と共に地域センター病院となっているが、近年の常勤医師数は平成16年をピークに減少している。ベッド稼働率の低迷、赤字の膨大化に加えて、医師は呼び出しが多く多忙である。


 留萌市では、平成27年度地域創生加速化交付金対象事業「地域健康づくり関連人材の移住促進・養成プロジェクト」に取り組み、それに関連する研究会を開催していた。院長として、平成28年5月のプロジェクト意見交換会から参加し、初めて、レベルの高い医師事務作業補助者(以後:補助者)を育成することは、医師をサポートする体制が整い、少ない医師数で出来うる限りの医療が行えることとなると、その重要性に気付かされた。


 しかし、当時の当院での補助者の業務は、ナースステーションでの雑用が大半で、加えて電話や見舞客などへの対応がほとんどを占め、本来の業務に専念できていなかった。体制改善のため、職員全体に理解してもらう勉強会の開催、アンケートの実施、補助者のモチベーション向上のための先進施設見学の参加を実施した。研修開始前に、補助者15名に意向調査と個人面談を行ったところ、レベルアップを希望する者は3名のみで、高度な業務内容を求められても、パート職員の身分では対応できる自信がないと現状維持を希望する者が大半であった。


 研修会は、外部から講師を招へいし、研修総時間56時間、開催時間帯は平日午後1時15分から2時間、自由参加制としたが15名全員が参加した。研修開始前に、終了後との比較データ集積のため、医師8名に2日間補助者を張り付かせ、業務内容を把握する調査を行った。その結果、医師からは補助者が協力的で気楽に業務を依頼できそう、補助者からは医師の要望や本音が理解でき意外と親近感を感じた。医師の扱う書類が多岐にわたり大変そうだなどの意見があり、思わぬ意識改革につながった。研修後、効果を検証のため補助者による下書き可能文書の種類数を比較したところ、ほとんどの者が研修前より増加していた。再び行った個人面談では、14名がレベルアップを希望し、ここでも思わぬ意識改革が見られた。


 平成29年春からレベルアップを希望した14名を嘱託職員とし、医療クラークからメディカル・サポートに呼称を変更、休床病室を利用してインターネット環境を備えPCを配置した専用執務室の確保、診断書作成・管理業務支援システムの導入を行った。新制度移行後、医師に対し補助者の業務についてアンケートを行ったところ、9割以上が良い影響を与えていると回答があり、約7割が負担軽減効果を感じていた。また、医師による書類作成時間も約10時間軽減され、常勤医を増員させた場合の費用を考えると大きな効果があった。


 今後の課題は、診療補助、医療文書作成、代行入力を業務の三本柱に据え、新人や後輩の指導能力、課題発見・改善能力、マネジメント能力等のキャリアパスを設定し、さらに質の高い補助者を育成することである。



講 演 2


「勤務医の負担軽減について」
函館市病院局 市立函館病院看護局 副看護局長  石 川   仁 氏

                  
 当院での補助者の主な活用方法は、外来などでの診療補助業務、手術・麻酔科医のための診療コントロール、内視鏡室での患者検査説明、検査手技項目の集計など、病院の「隙間の仕事」である。

 外来には医師とのコミュニケーションを保つため、各科1名以上の補助者を配置し、外来時間終了後は専用事務室へ戻る。補助者が行うべき業務は、書類作成、研究発表のデータベース作成のほか、医師が記載すべき書類、台帳の内容チェックなどがある。


 補助者導入の結果、指定難病に係る臨床調査個人票の作成のために出勤していた医師が休暇を取得できるようになった。また、書類作成時間が短縮され医師のほか、事務職員、看護師の精神的負担も軽減された。以前は補助者に依頼したい業務があっても、電話で呼び出して依頼内容を説明するのが手間なため、医師自身が行っていたことが、各外来に補助者を配置したことにより、依頼が容易になったとの声もある。


 医師からのねぎらいの言葉は、補助者にとって大きなモチベーションとなる。例として、補助者が収集したデータを用いた国内での学会発表が採択され、後にバルセロナで開催の学会で表彰されたことがあった。その際、医師から感謝を述べられ、医師という大きな存在から認められたことに、補助者はやりがいを感じたとのことである。補助者の質の担保は、教育と処遇の改善であり、長期間勤務してもらえる環境を整備することが重要で、業務には事務机とPC、専門用語を調べるためのインターネット環境は必須である。


 補助者を活用するうえでの注意点は、医師からの依頼はできるだけ公平に引き受けることや、安全管理・個人情報管理である。特に扱う個人情報には、特定の医薬品製造業者が欲しがる情報が含まれるものもあり、注意が必要である。また、近年ではSNSなどのインターネット上で情報漏洩が多々あり、指導の徹底が求められる。



 講 演 3  

※講演に先立ち、北海道勤務環境改善支援センター 小山田事務局長より、医師事務作業補助者には免許・経験は不要であることや、雇用形態や研修要件、補助者配置に係る収支例、各種業務内容について解説があった。


「医師事務作業補助者の役立ち・経営の貢献度について」
医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 医療秘書課  南 木 由 美 氏                 


 補助者の配置により、従来は医師が行っていた診断書作成、各種データ入力、手術申し込み等の業務を移行することが可能となり、医師自身の負担を軽減できる。治療やその他の業務に専念できる時間が増える。

 また、外来に補助者を配置し、医師同様に業務移行をすると、外来看護師の配置人数を減らすことも可能となり、医療の効率化・看護職不足にも対応でき、補助者は医師の負担を軽減するだけではなく、外来診療をはじめ、医師や他職種と患者を繋ぐチーム医療におけるコーディネーターとしての機能が重要になる。補助者の人件費は医療機関の経営効率化のために削減しても構わない「費用」ではなく、医師やその他専門職同様に労働生産性を向上させるために必須な「原価」である。高時給の医師が代替性のある事務作業を行うことは機会損失コストが大きくなるが、補助者の活用によりコスト抑制に貢献できる。人員配置から補助者活用による経営への貢献度を考えると、1)補助者3名+正職看護師1名、2)パート看護師6名+正職看護師1名の場合、給与面では1)の方が割高となる。

 しかし収益面から見ると、仮に補助者1名が午後から診断書作成業務を担当した場合、発生する収益を差引すると結果的に2)の人件費を下回る。併せて、補助者が各種オーダー漏れの確認や、患者を把握することにより、診察の効率化や待ち時間の短縮が可能となり、看護師も本来業務に専念することができる。デメリットは、補助者の作業場所やPCが確保しにくい場合や、外来診療補助の比重が大きくなると、デスクワークに集中できない可能性があることである。


 働き方改革の推進に伴い、医師の労働時間削減の動きが進む可能性があり、今後は一層補助者の活躍が期待される。院内において補助者を活用できる仕組みを作れるのは病院長・管理者であり、全職員が効率的に業務を行い、疲弊しない体制の構築をお願いしたい。


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