活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

医学生・若手医師キャリアデザインセミナー

医学生・若手医師キャリアデザインセミナー


常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂

 北海道医師会では、医学生・若手医師がキャリアの考え方を学び、医師として働き続けることに対する意識やそのために必要な環境整備など、将来の離職防止を目的とするキャリアデザインセミナーを開催しています。


 今年度も医学生が中心となって運営し、10月28日(日)13時から札幌グランドホテルにて開催しました。司会は、本セミナーを企画した「医学生・若手医師キャリア形成支援検討会」のメンバーである三浦子路さん(旭川医科大学2年)が務め、長瀬会長の挨拶、話題提供の後にグループワークを行いました。



話題提供
「私のキャリアパス〜connecting the DOTS〜

 東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻国際保健政策学分野 特任研究員 坂元 晴香 先生

 スーダンで撮影された写真『Waiting Game for Sudanese Child』を初めて見たのは小学生の時だったが、大きな衝撃を受けた。その時から海外に関心を持つようになり、写真で見たような地域に関われる仕事に就きたいと思うようになった。やがて国境なき医師団を知り、小学校高学年から中学生ぐらいの時期には、医療面で貢献したいと明確に考え出した。
 
 医学部に入学後は、アジア地域を中心に学生でも参加できるボランティア活動を行い、国際保健の現場を見ることができた。例えばバングラデシュの国立病院で一番環境が整っているところでも、決して良い環境とは言えなかった。患者は医療費が安いから国立病院に来ているのであって、富裕層は施設の整っている民間病院に行き、環境や待遇が良くないため医師も国立病院で勤務したがらない。国外からを始め、多くの援助があるはずの途上国なのに、なぜ医療環境が改善されないのかと疑問を持ち、現場での医療も大切だが、公衆衛生との両輪が重要ではないかと考えた。 

 医学部を卒業し、臨床と公衆衛生のどちらの道へ進むか考えたとき、医療の仕組みを作り、途上国の医療に貢献したいという思いがあったが、まずは日本で力をつけてから国際保健へ関わることにした。恵まれない環境下に置かれている方々が多く集まる東京の山谷地区で簡易の受診施設を設置し、往診をしながら病気の有無の確認や困りごとの相談なども行った。

 その後、たまたま厚生労働省国際課の人員に空きが出たため、出向することができた。普段から周囲に自分の希望を話していたため、関係者の耳に入り、声をかけてもらえた。やりたいことが決まっているのであれば、周りに伝え続けることも大事なことである。

 2年間の出向期間が終了し今後のことを考えたが、途上国の医療制度づくりに関わりたい気持ちは変わらなかったので、アメリカへ留学をした。日本でも公衆衛生について学べたが、日本人が多数を占める環境で学ぶより、世界中の人が集まっているところで学ぶことの方がより挑戦的だと考えたからだった。留学して良かった点は、勉強することだけに集中できたことである。また、グループ討議をすると、さまざまな国の人とそれぞれ考えの違いがある中でディスカッションし、一つの目的を達成するためには何が必要かを学ぶことができた。

 その後結婚し、夫の仕事の都合でイランにも行った。医師のキャリアとして寄り道に見られがちだが発見が多く、決して無駄ではなかった。帰国後は現在までグローバル・ヘルスに従事している。

 これから自分のキャリアについて考え、迷う時があれば、心の中にある情熱を大事にして進む道を決めてほしい、というのが私から伝えたいことである。




ワークショップ
 6テーブルに分かれ、7〜8名のグループとなり、�@「キャリアアップの弊害」�A「いろいろな弊害の解決策」をテーマに、若手医師・医学生がキャリア形成をするにあたって、現在どのようなことに関心や興味を抱いているか、講演内容を踏まえた上でワールドカフェ形式で自由に議論を行った。
※各所属は平成30年10月28日現在。



【ファシリテーター氏名】ゴー ケンウィー
【所属】北海道大学医学部医学科4年
【ワークショップで出た意見の紹介と感想

1)キャリアアップの弊害
2)いろいろな弊害の解決策
 私のグループは、主に2つの観点から弊害を考察しました。まず、子育てが問題になります。女性にとっては、キャリアアップすると、子育てに適切な時期を見失う問題が生じます。これは、「夫は働きながら妻は家で子育てする」という家庭に対する日本の固定観念が原因の一部だと私のグループは考えました。 
 子育ての問題点に対して、私のグループは二つの解決策を考えました。一つは家庭に対する固定観念を変えることです。夫婦で話し合って、ともに子育てについて考えるのが大事です。また、大学のカリキュラムに家庭作りや子育てに関する内容を導入するのも良い策だと思います。
 もう一つの弊害は、キャリアアップに関する膨大な情報量により、職場と就職希望者のニーズがうまくマッチングできないことです。特に労働環境が頻繁に変わる現在、職場によって労働制度、給料、雇用条件などが異なり、就職希望者が自分に合う職場を見つけるのが難しくなりました。その結果、職場側が理想的な人材を集めるにも支障が生じます。どうやってよりうまく職場と就職者のニーズがマッチングできるような体制が作れるのか、それは今後の課題です。
【セミナー全体の感想
 医療関係者の方々や他の医学生の経験と意見を伺うことを通して、キャリアアップとその弊害について理解を深めることができました。




【ファシリテーター氏名】
久世 瑞穂
【所属】北海道大学医学部医学科3年
【ワークショップで出た意見の紹介と感想
1)キャリアアップの弊害
2)いろいろな弊害の解決策
 私たちの班では講師の坂元先生をお迎えし、学生の考える問題点に対して先生のご経験からお話いただきながら進行しました。
 その中で挙がってきた問題点として、学生からキャリアデザインに関する情報が不足していているという指摘がありました。昨今はインターネットの普及により情報が容易に手に入れられるようになった反面、情報が氾濫していてどのように情報を取捨選択すれば良いのか戸惑う場面が多くなったように感じられます。
 それに対し、与えられた情報をどのように利用していくのかはその人の能力や意識次第であるというお話をいただき、自分がしっかりといただいたチャンスを生かしきれているのか、各学生が振り返るきっかけをいただきました。それと同時に、ご自身の経験からどのような場でも得られるものがないところはない、と日々このままでスキルアップできるのか疑問を抱いている学生にとっては励みとなるお言葉もいただき、有意義な時間を過ごすことができたと思います。私も漫然と日々の活動をしているだけではないか、ということを常々悩んでおりましたが、今回いただいたお言葉を励みに目の前に与えられた課題を一つ一つ懸命にこなしていきたいと感じました。




【ファシリテーター氏名】依田 恵
【所属】北海道大学医学部医学科2年

【ワークショップで出た意見の紹介と感想
1)キャリアアップの弊害
 グループでは大きく2つの事柄が挙げられました。1点目は家族です。具体的には子育てや子供の教育、パートナーの職場移動や介護などが挙げられました。2点目に制度や職場の環境が挙げられました。これは医局制度が昔に比べて弱くなった現在、いつも身近で指導してくれる先輩がいないという傾向がある、職場の理解がないということなどが挙げられました。
2)いろいろな弊害の解決策
 家族の問題については、現在北海道にあるシステムを利用して、コーディネーターに相談することでより良い解決方法をより早く見つけることができるというお話をいただきました。
 また、職場については現代のSNSなどの技術を駆使して医局以外の繋がりを持つことなどが挙げられました。
【セミナー全体の感想
 私はまだ学生ですが、キャリアアップの弊害になるのは何かについてのディスカッションを先輩方とご一緒にすることで、普段は気付くことのできない現場の声をお聞きすることができたと感じました。例えば、とても長い育休がキャリアアップの弊害となっていた方が身近にいるというお話などをお聞きして、技術や情報が常に更新されていき、自己研鑽を欠かすことのできない医師という職業においては、家庭と仕事のバランスをより慎重に考えないといけないのだなと思いました。



【ファシリテーター氏名】白倉 健太朗
【所属】
旭川医科大学医学科5年
【ワークショップで出た意見の紹介と感想
1)キャリアアップの弊害
 私がファシリテーターを務めましたグループではキャリアアップの弊害として、産休育休がとりづらいことや、とった際に生じる周りとの差、入学時の地域枠制度による進路の制限などが主に挙がりました。具体的には子育てに関しては自分が仕事においてやりたいことが出来るかどうかは配偶者に依存することであったり、産休育休などの制度はあるが休暇中は無給であることや、専門医をとるための症例数などにも響いてしまうことなどが挙がりました。
2)いろいろな弊害の解決策
 子育てに関しては、支援システムなどが実際には存在しているが、あまり周知されていないものも多く、医師会のような影響力をもった団体が周知していくことで改善できるのではないかという意見が挙がりました。また産休育休に関するものや、地域枠などの制度的な問題は必要があれば医師会から厚生労働省に働きかけるなどの解決策も挙がりました。
【セミナー全体の感想
 坂元先生のご講演では、あまり身近にはない国際保健という働き方の一部を知ることができ貴重な機会となりました。坂元先生がキャリアアップを図る中での弊害や、どのようにしてそういった機会を得てきたのかなど具体的なお話もいただけ非常に充実したものとなりました。



【ファシリテーター氏名】東山 望
【所属】旭川医科大学医学科4年

【ワークショップで出た意見の紹介と感想
1)キャリアアップの弊害
 まず医療がサービス業であり、従来の慣習から「いつでも対応してもらえる」という患者の意識が不要不急の受診や呼び出しを増やしており、人員に余裕のない病院ほど医師の学習時間が奪われ、結果としてキャリアアップの妨げとなっているのではないか、という意見がありました。
 続いて子育て世代の医師のキャリアに話題が移り、育児をする上で妻とその職場への負担が大きく、夫とその職場への負担が小さいという現状を問題視する声が挙がりました。
2)いろいろな弊害の解決策
 長時間の拘束の原因として現行の主治医制度が挙げられ、チーム主治医制度へのシフトが今後多様な働き方を実現する鍵となると考えられました。また、患者の理解を求めていくことも重要であると考えられました。
 さらにパートナーと自分の目指すキャリアについてしっかりと話し合うこと、周囲の理解と協力を得ることが最も重要であり、その際は一人ではなく同じ問題意識をもつ仲間と共に声をあげることが希望を叶える近道である、というアドバイスをいただきました。

【セミナー全体の感想
 父親という目線からパートナーやお子様をどのように支えて来られたか、パートナーとお互いのキャリアについてどのように話し合っているかなどのお話を拝聴することができ、大変参考になりました。目先の障害に囚われず、働く上で何を自分の軸としていきたいのかを忘れずにいたいと思いました。誰かに大きなしわ寄せが来ることを少なくするために、どんな取り組みが行われているのか、詳しく知りたいと感じました。



【ファシリテーター氏名】飯沼 実香
【所属】旭川医科大学医学科4年

【ワークショップで出た意見の紹介と感想
1)キャリアアップの弊害
 私たちの班では特に「地域枠・奨学金」に関して意見が出ました。卒業後、自分のやりたいことと、地域枠・奨学金による制限との衝突の存在、それに対して不安に思う学生の気持ちについて議論しました。卒業後の道が決まっているという点では、有利である地域枠・奨学金ですが、もしその制限を超えてやりたいことが出来た場合どうしたらいいのか、という点に関して特に議論をしました。
2)いろいろな弊害の解決策
 1)に挙げた点以外に、様々な弊害が存在しますが、それら全てに当てはまる解決策として主に2つが挙げられました。1つ目が、やりたいことを貫き通すことです。制限がある中でも、自分のやりたいことをしていくこと、そしてその時は出来ないと思うかもしれないが、いつかできる時のために準備を続けること、が挙げられました。
 2つ目が、相談できる環境を整えることです。昔に比べて、制度的な面は整ってきていますが、コミュニケーションの面では希薄になってきていると言います。そのため、何か困ったことや相談したいことが出来た時に相談でき、適切なアドバイスをもらえる環境を整えることが大切だと思いました。
【セミナー全体の感想
 このセミナーには数回参加させていただいていますが、話し合いや講演の中で毎回新たな発見があります。同じような悩みや考えをもつ学生、研修医、医師の方はもっとたくさんいると感じているので、より多くの方々に参加していただけるよう企画をしていきたいと思っています。




【氏名】三浦 子路
【所属】旭川医科大学医学科2年

【セミナー全体の感想
 今回のセミナーでは、キャリアプランを考えることを念頭に、国際保健の分野でご活躍の坂元晴香先生をお招きして、先生ご自身がどうして今のお仕事をするに至ったかをお話しいただきました。北海道医師会が主催するセミナーであるため、北海道内における医療の問題、女性医師のキャリアのことを考える勉強会であることがここ2〜3年多く、今回先生にお話しいただいた、「『国際』保健」や「『途上国』における医療」は一見関係ないように思えますが、先生の経歴を聞いていると、自分もこういうことをやりたかったんだなという原点に立ち戻ることができ、それは医師一人一人のワークライフバランスの充実に繋がるものなので、セミナーの参加者、特に医学生にとっては有用なものであったかと思います。
 また、後半のワークショップでは、意見交換を今年は趣向を変えてワールドカフェ形式で行いました。これにより、問題点及びその解決策を限られた時間の中で、医学生はより多くの医師の方々からのお話を伺うことができ、先生方はより多くの学生の声を聞くことができたかと思います。
 今回アンケートを用意していなかったために正確なフィードバックはできませんでしたが、今後とも医学生と医師が交流を深めて、双方に利益がもたらされるようなセミナーの運営に努めて参ります。

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