活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

医学生・若手医師キャリアデザインセミナー[2019年3月21日]

日本医師会共催:医学生、研修医等をサポートするための会

「医学生・研修医と語る会」
医学生・若手医師キャリアデザインセミナー


常任理事・医療関連事業部長 藤井 美穂


 北海道医師会では、医学生ならびに若手医師に、共に活動する場と医師会の先生方から学ぶ機会を提供し、その活動を通して将来北海道で活躍できるよう「医学生・若手医師キャリア形成支援検討会」を開催している。


 平成31年3月21日(木・祝)には、上記検討会が企画・運営した「医学生・研修医と語る会」を札幌グランドホテルにて開催した。当日は、医学生、若手医師等54名の参加があり、検討会のメンバーである三浦子路さん(旭川医科大学2年)が司会進行を務め、話題提供の後グループワークを行った。

※以下、各所属等は開催日当日現在。


                                                         ◇

1.話題提供
「国境なき自由人救急医ナカジ―何故ここに」

Emory University Department of Emergency Medicine Assistant Professor/Metro Atlanta Ambulance Service Medical Director/
国境なき医師団 専務理事 中嶋 優子 先生


 自分は、あまり勉強もせず部活(アイスホッケー、水泳)ばかりしている医学生だった。講義のノートはとっていたが試験は一夜漬けで、帰国子女ではあるものの英語は普段は全く使っていなかった。

 札幌医科大学を卒業後、アメリカに行きたいと漠然とした思いで在沖縄海軍病院のインターンをしたが、ここでもアイスホッケーばかりしていた。その後、東京大学病院胸部外科で3ヵ月勤務したが、白い巨塔の世界にうんざりして1ヵ月で辞め、数ヵ月後、運よく浦添総合病院に拾われた。救急総合診療部立ち上げまでは麻酔科を担当し、設立後は、救急総合診療部に勤務し、ここで救急医療の重要性、面白さに気付いた。救急医療の自信があまりなく、トレーニングをアメリカで受けたいと思う気持ちが強くなった。アメリカの医師免許試験の勉強とアイスホッケーをしながらアルバイトをする浪人生活を送り、卒後7年目にECFMGに合格しアメリカで医師として働けるようになった。また、この頃から麻酔科医として国境なき医師団にも参加するようになった。

 カリフォルニア州での州医師免許を取得し、救急医として働き始め、自分がアメリカ国内や国境なき医師団で活動ができるのは、家事や料理を担ってくれている夫のお陰であり大変感謝している。

 国境なき医師団として、さまざまな文化圏で医療行為を行ってきたが、地域ごとに文化や風習が異なり、設備も不十分で先進国では使用されていない古い機材を使わなければならないこともあるが、学んだ経験に助けられた。

 国境なき医師団の欧州出身医師は、自国で喫煙に対して厳しい制限がされているので、規制がない派遣先で自由に喫煙する人が多く、受動喫煙が問題となっていた。年1回開催する総会で、日本から分煙案を提案し激しい議論となったが投票の結果、国境なき医師団初の分煙法案が成立した。今後も、医師団の中での日本の存在感を大きくしていきたいと考えている。

 自分の好きなこと、niche(特徴)、人のためになることが重なる部分が、自分にとってのやりがいになる。人生は何が起こるかわからないから、目先のことに囚われず、なんでもやってみると良い結果につながることが多い。人とのつながりを多く持ち、その点と点が結びついて線になれば、豊かな人生になるはずである。

※話題提供後、会場からの質問を匿名で集計できるWebサービス「sli.do」を用いて質疑応答が行われた。


                                                 ◇

2.ワークショップ
                         旭川医科大学医学部2年 三浦 子路
 今回のセミナーでは、「型にはまらない生き方から考える自分らしい働き方」を考えることを念頭に、国境なき医師団専務理事などをお務めの中嶋優子先生にご講演をいただきました。自分がやりたいことでかつ誰かのためになるような仕事をするにはどうしたらいいのかなど大変興味深い内容でした。更に参加者からの質問をリアルタイムでスライドに映し出すシステムSli. doを駆使するなどして、参加者の学生や医師と中嶋先生が双方向で対話することができる形を実現させました。
医師という仕事をやりながら「外の世界に飛び出す」ことの重要性を知る言いきっかけ作りになったかと思います。

 今後とも医師と医学生が交流を深めて、より良い医療界を築くことができるよう努めていく所存です。



【ファシリテーター氏名】田浦 拓弥
【所属】北海道大学医学部医学科3年
【ワークショップで出た意見の紹介と感想】
1)疑い、型を知る
 まず私の班では、自分らしい働き方とは何かについて意見を出し合いました。世の中の常識や典型を疑い、根拠があるのであれば自分の意見を貫き通すことも必要だという意見にまとまりました。また、いわゆる「型」がどういうものであるかを知ることも、多様なロールモデルを知ることができ、今後の人生の選択において必要であるという意見もありました。

 2)型から外れる 
 次に必要になるものとは、型から外れる「行動力」ではないかという話に進みました。人は大抵、理想や野望を抱きますが、結果的にはマジョリティに流されてしまう傾向にあります。自らが思い描く生き方を体現するためには、行動力が不可欠な存在であると私たちは考えました。

 3)型になる
 当時は「型外れ」と批評された生き方も、気付いてみればそれが「型」になり、その世界のパイオニアになるというケースが、同席されていた西田先生の実体験を元に辿り着くことができました。信念を貫き実現した「型」にとらわれない生き方が当たり前になる、そんな前例を直接先生から伺うことができ、私たち学生はこれからも胸を張って前に進むことができそうです。

【セミナー全体の感想】
 普段学生のみで行うワークショップと比べ緊張感あふれる気持ちで本セミナーに臨みました。しかし緊張とは裏腹に、実際に現場でご活躍されている先生方の人生観、そして今まで歩まれてきた道のりを直接伺うことができ、ファシリテーターとしての役割をうっかり忘れてしまうほど集中でき、非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。今後も機会がありましたら、参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。


 
【ファシリテーター氏名】横井 健人
【所属】札幌医科大学医学部医学科3年
【グループワークで出た意見の紹介と感想】
 私たちのグループでは型にはまらない生き方をどのように考えるのかという点と、自分らしい働き方とはどのような働き方かという点についてグループディスカッションを行いました。前者に関しては幅広い価値観に早い段階から触れる、受動的ではなく能動的に人生をつくるなどの意見が挙がりました。また、後者に関しては忙しい仕事の中でも自分の時間を作る、忙しさややりがいとお金の自分に合ったバランスを見つけて働くなどの意見が挙がりました。 今回のテーマは「型にはまらない生き方から考える自分らしい働き方」だったのですが、グループディスカッションを進めていくうちに私たちのグループでは、型にはまる・はまらないは別にして、結局自分がやりたい仕事をやることが自分らしく働く一番のポイントなのではないかという結論に至りました。

【セミナー全体の感想】
 中嶋先生のご講演では、国境なき医師団に所属したり海外で医師として働くなどあまり身近ではない働き方に関するお話が聞けて、自分自身の視野を広げることができました。また、グループディスカッションでは医師や医学生の意見を伺うことを通して、様々な働き方を知ることができました。



【ファシリテーター氏名】更谷 朱里
【所属】札幌医科大学医学部医学科2年
【グループワークで出た意見の紹介と感想】
 私たちの班ではまず仕事のことに関わらずこれから生きていくうえでどのようなことをしたいかということを上げていきました。次に生きていくうえでやりたいことを仕事と絡めてみるとどうなるかということを考え、具体的な例として医師と他職種を組み合わせて活躍なさっている先生方がいるというお話になりました。

 そして最後に一番重要なこととして、「自分らしく型にはまらないキャリアを歩んでいる人がいる一方で型にはまるキャリアを歩んでいる方がおり、どちらが偉いということはなくお互いを尊敬するべきである」、という心構えのお話をいたしました。ワークショップを通じて、先生方の今までのキャリアについてのお話や先輩方の実現したい夢について聞く中で、人にはそれぞれの生き方があり、選択肢は一つではないということを実感させられました。1人1人がやりたいことを述べている際の生き生きとした表情から、夢に向かって走っていくことはなんと美しいことなのだろうと感じました。

【セミナー全体を通しての感想】
 型にはまらない自分らしい働き方の実現のためには、第一に自分が何を達成したいのか、何を求めるのか、どの分野が得意分野なのか、など自分自身を知るということが大切だと感じました。そのうえで自分のやりたいことに一歩飛び込んでいく勇気と、他者の生き方も認めるという尊敬の気持ちを心にとめておかなければならないと強く思いました。



【ファシリテーター氏名】飯沼 実香
【所属】旭川医科大学4年
【グループワークで出た意見の紹介と感想】
  私たちの班では、学生のこれから希望する生き方について、それに対して先生方から、体験談や今までの経験からのアドバイスをいただく形で話を進めて行きました。学生側からはやはり低学年では現時点では具体的な生き方の形をイメージすることが難しいという意見、高学年になって実習が始まる中で少し現実的なイメージが出てきてはいるが、それが実際に可能なことか分からないと言った意見が出てきました。それに対して、先生方からは自分のやりたいことをする生き方がいい、世間のニーズは必ずついてくるからなどといった、心強いご意見をいただきました。人生には無駄なことがなく、また医師は人を幸せにできるとてもよい職業であるので、その良さを生かして、自分のやりたいことを突き進んでいくことが、自分らしい生き方につながっていくと感じました。

【セミナー全体の感想】
 実習が始まったとはいえ、まだまだ自分の生き方という点では具体的なイメージが湧いてこない現在ですが、現時点での考えについて先生方からご意見をいただき、そして他の学生と意見を共有できるとてもよい機会でした。ありがとうございました。



【ファシリテーター氏名】水沼 月子
【所属】旭川医科大学4年
【グループワークで出た意見の紹介と感想】
  今回のキャリアセミナーでは実際に世界で活躍されている先生のお話をお聞きすることができました。実際に話題提供にてお話をして下さった中嶋優子先生も私達の班でワークショップに参加してくださり、様々な働き方をする医師方々と「型にはまらない働き方」について考えることができました。
 
 まず「型にはまらない働き方」とは何か、について議論を交わしました。学生の意見として最も多かったのが「大学病院に入局して将来は大学病院の人事で勤務地が決まる」でありました。しかし実際に医師人生の全てを学生の考える「型にはまった働き方」をする医師は大多数を占めるわけではなく、「型にはまらない働き方」をする医師の方が実際には多いのではないかという医師の方々から意見が挙がりました。将来医師として働いていく中で、専門医の取得、大学院にいつ行くか行かないか、結婚や出産、留学等様々な分岐点が訪れ、段々と個人個人のオリジナルな人生が形成されていくため「型にはまった働き方」は難しくなるようです。その上で大切なことは、「自分の信念を貫くこと」「まず自分自信が幸せであること」「様々な経験をすること」であると結論に至りました。

【セミナー全体の感想】
  5年生になり本格的に臨床実習が始まり、将来の働き方について不安を覚えることもありますが、多岐にわたり活躍されている医師の方々の経験を聞くことができ、身構えすぎなくても良いのだと感じました。将来の色々な可能性を考えて残りの学生生活も充実させていきたいと思います。ありがとうございました。



【ファシリテーター氏名】小山 光眞
【所属】旭川医科大学3年
【グループワークで出た意見の紹介と感想】
  学生と医師が混ざり合ったグループでした。医師の方々からは具体的行いたいこと(公衆衛生や家庭医)が意見された印象がありました。それに対し学生の多くはまだ自分のしたいことに関する悩みがあり、キャリアを定めている方は少ない印象でした。だからこそ、学生からは「メンターを探す」などライフワークにつながるような影響を与える行動をしたいとの意見も出ていました。全体に共通していた意見として、講演にもありましたが、自分のニッチの重要性を改めて認識できたというものが多かったです。

【セミナー全体の感想】
  講演のテーマに関しまして、普段考えることの少ないことであったため、大変刺激的なものでありました。さらにそれを実践していらっしゃる先生に登壇していただいたため、とても説得力があるとともに現実味を感じることができたと思います。会の内容も講演で終わるだけでなく、WSを行うことで参加者がより積極的に自分のキャリアに関して考える環境が整えられていたと思います。大変、刺激的なものとなりました。

 最後に僭越ながら、改善の意見を2つ申し上げさせていただきます。一つ目としまして、今回は「sli.do」を使用しておりましたが、講演の最中にも質問を書き込める旨を参加者に告知しておけば、参加者の方は思いついた時点で質問を送ることができるため、より参加的な講演会ができると思います。質問数が多くなりすぎる懸念がありますが、司会の方がその中からピックアップすることで改善されるかと思います。二つ目として、WSにかんしてですが、今回はファシリテーションを直前に依頼されたため、準備が足りなかったと思います。事前にファシリテーションをする方を決めておけば、WSがより良いものとなると思います。
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