活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

病院訪問

北海道大学病院を訪問しました。


医師の就労環境づくりを支援する事業周知のための臨床研修指定病院の訪問
北海道大学病院[令和元年10月3日(木)午後6時]


 今年度の病院訪問は、北海道大学病院で、秋田病院長、渥美副病院長ほか7名の医師にお集まりいただき、北海道医師会からは長瀬会長、深澤副会長、水谷・藤井両常任理事と西田・寺本・清水・佐藤コーディネーターがお邪魔いたしました。
 最初に話題提供を3題行い、その後意見交換を行いました。



(1)「日本腎臓学会男女共同参画の取り組みと現場における問題点」
               北海道大学病院男女共同参画推進室 西尾 妙織 

 日本腎臓学会は2006年に男女共同参画委員会を設立した。委員会設立にあたり、女性医師支援(特に子育て支援)に特化しないこと、委員会は男女で構成し、職位・勤務先・年代・地域性に配慮した。2008年には初の女性理事が就任し2016年に2名となり、2018年には女性副理事長、女性幹事長も登場した。学術総会開催時には男女共同参画委員会が企画したプログラムが開催され、開催時間帯は他のどのプログラムとも重複しないよう調整した。


(2)「北大病院内科1で実施したアンケート結果について」
               北海道大学病院内科1 杉本 絢子 

 北大病院内科1に在籍している女性医師が感じている問題点を抽出するため、2017年にアンケート書式をメール添付にて送付し、回答を回収した。アンケート結果から得られた主な事項は下記のとおりである。
・在籍女性医師の多くは育児中であり、その多くが専門医資格未取得。
・主に車での送迎を要する、保育園通園未就学児が多い。
・大学内駐車場を確保できたのは1名のみ。
・個々の事情に合わせた柔軟な勤務制度が求められている。
・業務の効率化と共有、保育施設や駐車場などの充実を希望している。
・専門医をスムーズに取得できる環境整備が必要である。


(3)「大学病院と市中病院のシームレスなサポート体制を目指して」
                  北海道医師会 医師キャリアサポート相談窓口コーディネーター 清水 薫子 

 離職者を出さず、持続可能な医療現場とするためにはサポート制度の周知や職員への啓発、就労環境の整備など、出産・育児・介護等の様々な背景を持つ全職員のための環境整備が必要である。しかし短時間勤務制度など、周囲の協力が必須なマンパワーを前提としたシステムでは市中病院への応用が困難なため、全職員の勤務環境を見直し、お互いにサポートし合う体制が必要である。
 北海道医師会医師キャリアサポート相談窓口では育児、復職、介護などの各種相談に対応しているため、困ったときにまずは相談をしてほしい。
 また、道内3大学での情報交換、協力体制の充実も重要と考えている。


 引き続き、意見交換では、医員の先生から病院に対して院内病児・病後児保育の充実をお願いしたい。ピーク時にはすぐに混んでしまい利用が難しいこともあるため、必要な時に頼れる施設であってほしい。と要望が出されました。また、駐車場の確保についても希望がありましたが、広々としている北海道大学の敷地ですが、各部ごとに必要な数を大学側が計算し割り振りをしているため、医学部だけ多く確保することは難しく「大学全体のルール」を越えることはなかなかできないとのことでした。

 藤井常任理事から、以前、渥美副病院長がご自身で子どものお弁当を作っていると紹介されたのを拝見したことがある。家事は夫婦で半分ずつ担うのが当たり前で、どちらかが「サポートする」ではいけないのではないかとお聞きしたところ、短時間勤務ができる「すくすく育児支援プラン」を利用する女性医師は制度が周知されず同僚の理解が得られない場合も多く、都合がつけば当直や時間外勤務をしたいとの希望に則さない制度であることや、学生時代から夫婦間における家事の分担などの教育も必要であり、全員が必ず受講する仕組みとなればいいとお話がありました。

 寺本コーディネーターからは、九州大学にも「すくすく育児支援プラン」と同様の制度があり、制度利用者自身が積極的に制度の活用について発表をして周知を進めているとお話しました。

 出産・育児中の女性医師が時短勤務等を活用すると男性医師は負担が多いと感じるかお聞きしたところ、仕事は上手にシェアをして支えるべきと考えており、男性医師も積極的に取り組むべきと思うとのことでした。また、指導医を務めている先生からは、新専門医制度のこともあり若手医師とどのように向き合うかが課題で、時短勤務を活用する人も多くいるがフルタイム勤務でなければ専門医取得はかなり難しいと思うとお話されました。

 仕事と育児を両立されている女性医師からは、義実家が自宅近くにあることが必要だった。病院の支援だけでは足りず、以前から全く進んでいないと感じる。夫と同じ職場のため、子どもが体調を崩した時は自分が休暇をとり、夫が代わりに自分が担当する予定だった診療をしてくれている。夜にカンファレンスが行われることが多く、子どもを預けることができれば参加できるが、日中に開催してもらいたいとお話されました。
 医局長を務めていた男性医師は、局内の全女性医師に話を聞いたところ全員が医師である夫を頼りにしていないとの回答だった。「すくすく育児支援プラン」をよく活用しているが、休日当番・当直が多いと医局員はすぐに退職してしまう。また、時短勤務制度を利用していることに後ろめたさを感じている医師もいると聞いているとのことでした。

 西田コーディネーターから、札幌医科大学における「医師が産前産後に利用できる制度」について解説し、どのような支援制度があるのか、札幌医科大学のHPを見てもほとんどわからないため、適用就業規則をまとめた。当事者となったときに対応に困る制度では意味がない。問題を当事者だけのものとせず、周囲と共にわかりやすいものに変えていく環境が重要であるとお話しました。

 渥美副病院長からは、帰局するときに局員全員と面談を行い目標を訊ねると、男性医師は「海外に出て研究をしたい」「領域のトップになりたい」と言う。一方、女性医師は「家庭と仕事の両立」「専門医の取得」と答えることが多い。専門医取得は手段にすぎず、最初の目標設定が高くなければ、優秀な医師は養成されない。男女の別なく個々のモチベーションによりゴールは変わるので、家庭と仕事の両立をゴールとせず、ゴールを高く保てるサポートを指導者として行っていきたいとお話がありました。


 最後に、秋田病院長より、北大病院内の就業環境整備が進んでいるがさらに改善が必要な部分もあるため、医師会とも協力してより良いものにしていきたいとご挨拶がありました。

 また、先般、厚労省からの通知で示された自己研鑽の定義は、一般病院を例にしていると感じており、大学病院では教育・研究も行っているため、大学病院ならではの自己研鑽の定義を検討していく必要がある。新専門医制度の仕組みは先走りし過ぎており、出産・育児と並行して専門医取得を目指す女性医師にとってはかなり厳しいものであるので在り方について考えるべきだと思う。
 さらに、今後は少子高齢化が進むため、出産・育児だけではなく介護の問題にも取り組むことが必要だと考えている。労働人口はますます減少し、高齢者が継続して就労することが求められるので、男女だけではなく高齢者も含めた共同参画を検討していく必要があるとお話があり閉会しました。


 北海道大学病院の皆さま、お忙しいところありがとうございました。

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