活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

令和元年度医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会

「医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会」
医療関連事業部長 水谷 匡宏


 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」が執り行われた10 月22日(火・祝)に、札幌市において、「働き方改 革への対応−国の最新の動向を知り現場の事例から 学ぶ−」をメインテーマとした講習会を日本医師会 と共催で開催した。

 医師不足と偏在に加え医療の高度化・専門化等を 背景に、地域医療を支えている医療機関の負担の増 大や、時間外労働の上限規制の適用などにより、医 師の労働環境改善が喫緊の課題となっている現状に おいては、医師一人一人が生涯にわたり能力を十分 発揮するために、働く部下やスタッフのワークライ フバランスを考え、その人らしいキャリアや人生を 応援し、組織の業績と結果を出しつつ、自身の生活 を楽しむことができる「育ボス」の存在が必要と考 えられます。

 当会では毎年この講習会を開催しており、今年度 は北海道、北海道労働局そして北海道医療勤務環境 改善支援センターのご協力のもと、医師に対する労働時間に関する法制度等の周知や理解の促進をテー マに日本医師会今村副会長の特別講演と行政から2 題の講演を行った。当日は、病院管理者の院長など 医師ほか事務長や医療関係者の方々 224名が参加さ れた。


 特別講演 「医師の働き方改革−これまでの取り組みと今後の 動向など−」
 日本医師会副会長 今 村   聡 先生

  医師は聖職者である、いや労働者だと一時期混乱 した。横倉会長が医師は労働者であるということに 違和感があると発信した瞬間、若い医師を中心にネ ットが炎上した。それほど彼らは自分たちが労働者 との想いがある。しかしながら本日お集まりの、そ れなりの年齢の方々は寝る間も惜しんで地域医療を 守ってこられており、定時になったから帰るといっ たようなことはあり得ないとの想いもあると思う。
 ヒポクラテスの「医師の誓」で、医師は生命を預 かっているという職業倫理により聖職者とみなされ た。しかしながら労働基準法の中で管理者の「指示」 により「治療」をし、そこから対価が支払われたら労働者となる。ただし労働基準法のもとでの労働者 と言っているわけで、医師の聖職性を否定している わけではない。そこを間違えると、医師は聖職者な のかそうではないのかとの議論になってしまう。
 「医師の働き方改革に関する国の検討」に関して は、決定事項として 
 ・時間外労働規制 
 ・宿日直
  ・医師の研鑽
  ・応召義務
があるとして、規制内容、宿日直許可基準のポイ ント、研鑽に係る労働時間のポイント、応召義務で は解釈が新たに通知されるとした。

 また、今後の課 題・検討事項として、
 ・B水準C水準対象医療機関の定め方 
 ・具体的な健康確保措置
 ・労働時間短縮計画の策定
 ・タスクシフト、タスクシェア
 ・副業、兼業
 の5項目をあげ、日本医師会におけるタスクシフ ティングに関する基本的方針や、副業、兼業につい ては労働政策審議会において審議されており、医療 界に悪影響のないよう日本医師会からもしっかり意 見を述べていくとの話があった。
 「今、取り組むこと」として健康管理をあげ、労働時間の把握、産業医の適切な配置や利用、長時間 労働是正のための仕組みの構築等について、地域医 療支援センター、医療勤務環境改善支援センター、 そして社会保険労務士らの有効利用をして欲しいと話された。

   「女性医師の勤務環境支援」では、院内 保育所や休憩スペース整備、短時間正職員制度導入、 子育てや介護中の残業免除、ハラスメントの組織的 対応といった働きやすさを感じるための環境整備、 研修参加の奨励、子育て両立相談窓口、人事ローテ ーション等のキャリアアップ支援、休業後の復職・ キャリア形成支援といった働きがいを保つための支 援策について話があった。
 最後に医師の働き方改革の基本理念は、「地域医 療の継続性」と「医師の健康への配慮」の二つを両 立させることが重要であるとし、それを達成するた めには国への提言が必要であり、そのために国会議 員との連携が重要となる。医師の働き方改革と医療 勤務環境の改善は、働く医師のモチベーション、医療の質の向上と安全確保、それに医業経営の安定に つながるとし、医師が管理するからこそ医療を守り、 活躍する医師を守ることができるはずであるとまとめられた。


講演「医療機関における働き方改革」

1.「医師の働き方改革に関する国の動向
−宿日直許可基準と医師の研鑽に係る考え方を中心に−」
厚生労働省医政局地域医療計画課課長補佐 奥 野 哲 朗 氏

 
 医師等の宿日直の許可基準として、通常の勤務時 間の拘束から完全に解放された後のものであること、そしてその間に従事する業務は、一般の宿日直 業務以外には特殊の措置を必要としない軽度の、ま たは短時間の業務に限るという条件を満たし、宿直 の場合は夜間に十分な睡眠をとり得る場合とし、そ の間に通常勤務と同態様の業務に従事することがま れにあった際は、常態としてほとんど労働すること がない勤務であり、かつ夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り、その許可を取り消す必要はないとの話があった。

  医師の研鑽については、使用者の指揮命令下にお かれているかどうかとし、業務上必須ではない行為 を自由意志に基づき、所定労働時間外に在院中に行 う場合は、一般的に労働時間に該当しないが、診療 の準備または診療に伴う後処理として不可欠なもの は労働時間に該当するとの話があった。  また、運用における留意事項として、労働時間に 該当しないと判断される研鑽については、宿日直中 に常態的に行われているとしても、宿日直許可にお ける不許可事由や取り消し事由とはならないこと や、現在の業務上必須かどうか、対象医師ごとに個 別対応となると説明があった。

 医師偏在対策と地域医療構想では、厚生労働省が 行った診療実績データの分析だけでは判断し得ない 診療領域や地域の実情に関する知見を補いながら、 地域医療構想調整会議の議論を活性化し尽くしてほ しいとした。そして、提供体制の改革ばかりではなく、医療危機は国民全員が考え、取り組むべき重要 な問題として、医療を守ることは、その恩恵を被る 全ての人が、行動すべき国民的プロジェクトと考え、・患者・家族の不安を解消する取組を最優先で実施 ・医療の現場が危機である現状を国民に広く共有 ・緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用 ・信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供 ・チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立 を国が速やかに具体的施策として実行し、取り組み が前進するよう来年度以降も進捗をチェックし続けると締めくくられた。


2.「医療機関における宿日直許可の実務と労働条件をめぐるトラブル事例
−北海道の現場から−」
北海道労働局労働基準部監督課課長 戸 高 正 博 氏

 宿日直の許可については、実は期限がなく一度認 められれば無期限であるため、昔に得た許可が、今の 時代にマッチしていない場合もあるので、一度見直 しをして欲しいとの話があった。また申請について は基本的に許可する方向で検討しており、申請書提 出段階で許可基準に合致していない部分について、 合致するようアドバイスしているので、申請の前段 階で一度労基に相談するのが良いこと、宿日直申請 許可の可否は病院の立地や救急の受け入れや患者の 容態急変の頻度によって、同内容でも病院のおかれ ている状況で判断が変わることなどの話があった。
  労働条件をめぐるトラブル事例では、医師が労働者として申告する件数はほとんどなく、多いのは看 護師や事務職で、相談内容は割増賃金や賃金不払が 多く、タイムカードを押してからの残業の強要や具 体的対策を取らず仕事量が変わらないにも関わらず、残業申請への圧力などの例を話された。  また、昔は賃金不払いや解雇に関する相談が多か ったが、ここ数年はパワハラ関係が25%を占めてい るとして、パワハラ6類型(身体的な攻撃、精神的 な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過 小な要求、個の侵害)を示し、人間関係にも心配り を願いたいと締めくくられた。

 3人による講演終了後、藤井常任理事の司会によ り意見交換が行われ、その中で、今村副会長が健康 確保措置についてはこれからいろいろなことが決ま ってくると思うが、重要なのは地域医療がどれだけ 確保できていくかという視点であり、副業・兼業の 話であるとか、我々の議論の外にあるところで影響 があるので、そこを睨みながら厚生労働省としっか り議論させていただき、地域医療をしっかりと確保 できていくような仕組みを作らなければいけないと 思っている。前向きに医療機関に取り組んでいただ くことは大前提であるが、それで解決できないよう な外的要因が起こらないようしていくのが、我々日 本医師会の役目と思っているとの話があった。

 奥野課長補佐からは、医師の偏在対策について、 医師の自主的な選択が憲法の自由として認められて おり、そこのところを尊重しながらいかにしていく か、今策を練っている。最終的に申し上げたいのは、 医師の確保だけではダメで、医療提供体制の効率化 だけでもダメで、働き方改革だけでは苦しい。地域 での議論をお願いしたいし、その支援はさせていた だくとの話があった。

 終わりに、今村副会長のお話で、いかに日本医師 会と厚生労働省がタッグを組みつつやっているかが 分かった。地域医療を守ると繰り返し話された奥野 補佐の思いが伝わり、戸高課長から具体的な話が聞 け、大変参考になった。 

 今村副会長が最後に、「このような勉強会が医師 会、北海道、労働局、医療勤務環境改善支援センタ ーの4者協力により開催されるのは、全国に例がなく素晴らしい」と話された。



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