活動報告

医師のキャリア形成をサポートするため様々な活動を行っています。

令和3年度医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会

医師の勤務環境の整備に関する病院開設者、病院長・管理者等への講習会


常任理事・医療関連事業部長 水谷 匡宏

 医師の勤務環境の整備を推進することを目的に、令和4年3月5日(土)に、医師の働き方改革への対応セミナーとして、北海道、北海道労働局、北海道医療勤務環境改善支援センターとの共催により開催した。会場からのLIVE配信によるWeb併用で、病院長をはじめとした医療関係者164名(会場:86名、Web:78名)の参加者であった。

 
特別講演
「医療機関勤務環境評価センターおよびC−2水準の審査組織について」
日本医師会常任理事  松本 吉郎 先生

 医師全員の時間外労働時間が年間960時間に収まらなければ、その医療機関はB水準または連携B水準を選択することになる。これが上手く回らなければ大学より医師派遣ができなくなり、地域医療が滞ることになるので、宿日直許可が得られるかどうかにも影響される。滞ることがなく地域医療に影響が出ないが浸透してから最終的にA水準になれば良いので、最初は無理をしてA水準を目指す必要はない。
長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置には、
 ◎勤務する医師が長時間労働となる医療機関における医師労働時間短縮計画の作成
 ◎地域医療の確保や集中的な研修実施の観点から、やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度の創設
 ◎当該医療機関における健康確保措置(面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制等)の実施
などが代表的な講じるべき事例である。
 医師労働時間短縮計画の作成に際しては、先ず医師の労働時間を把握する。計画の作成は任意の日から2024年3月末までの努力義務で、厚生労働省作成のひな型があり、指示に沿って入力すると計画が作成できるようになっている。
連続勤務時間制限・勤務間インターバルの基本的なルールは、義務対象はB・連携B・C水準の適用対象となる医師で、A水準が適用となる医師は努力義務となる。通常の日勤及び宿日直許可のある宿日直に従事する場合は、始業(事前に勤務シフト等で予定された労働の開始時)から24時間以内に9時間の連続休息時間【15時間の連続勤務時間制限】、宿日直許可のない宿日直に従事する場合は、始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間【28時間の連続勤務時間制限】があり、連続した休息時間は、事前に勤務シフト等で予定されたものが原則である。また、休息時間中にやむを得ない理由により発生した労働に従事した場合、当該労働時間に相当する時間の代償休息を事後的に付与しなければいけない。
医師の働き方改革に関する国の委託事業に医療機関勤務環境評価センター(評価センター)による審査があり、医師サーベイヤ―と労務(社会保険労務士)サーベイヤ―がチームとなって評価するが、評価受審が遅い場合には、2024年の4月までに指定が間に合わない可能性があるため、2022年度中に1度トライしていただきたい。評価センターからの受審にあたり医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)の支援を受けることが推奨され、評価にあたっては、ランク付けとならないよう厚生労働省に対し、日本医師会より申し入れをしている。評価機能は労働時間短縮への取り組みを行う医療機関に対して、取り締まり罰則を与えるものではなく、体制整備への支援を行って行くものと考えている。
宿日直許可については、医療法第16条の「宿直」と労基法第41条の「宿直」は同じではなく、労基法上の「宿直」は「宿日直許可」があれば労働時間に含まれず、許可がなければ実労働時間として算定されるので注意が必要である。労働基準監督署の対応が地域によってばらつきがあることから、厚生労働省より労働基準監督署に対し、医療機関より宿日直許可に関する相談があった場合には、丁重に対応するよう通知を発出していただいた。宿日直許可を得るためには、医療機関全体でなく、一部の診療科、一部の職種、一部の時間帯(深夜帯)等条件を指定しての許可申請も可能である。
地域医療の維持と医師の健康確保の両立を考えると、医師の勤務実態に見合った医師独自の宿日直基準について真剣に議論していく必要がある。

 
講 演「医師の働き方改革について」
1.医師の働き方改革に求められる医療機関の取組
厚生労働省医政局医事課医師養成等企画調整室室長 福田 亮介

 医師の働き方改革は、地域医療提供体制の改革や、各職種の専門性を活かしたタスクシフト/タスクシェアの医療機関における推進が必要であり、対策として「医療施設の最適配置の推進」、「地域間・診療科間の医師偏在の是正」、「国民の理解と協力に基づく適切な受診の推進」がある。A水準を除く水準の指定申請には、2021年度中に労働実態を把握し、2022年度中に時短計画を作成し、評価センターの評価を受け、都道府県の指定を受けておく必要がある。
2024年度に向けて医療機関は、医師の勤務実態の把握、自己研鑽など労働時間に該当するものの明確化、自院や兼業先での宿日直許可の取得を行い、労働時間としてカウントするものとしないものをしっかり理解する。その過程で問題が生じた際には勤改センターへ相談いただきたい。

2.医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方および医師等の宿日直許可基準について
厚生労働省北海道労働局労働基準部監督課課長  上田 敦郎
 医師の研鑽に係る労働時間は、当該医師の経験、業務、医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえて、現場において当該医師の上司がどの範囲を現在の業務上必須と考え指示を行うかで判断せざるを得ない。所定労働時間内の研鑽の取り扱いは、医師が使用者に指示された場所にて研鑽する場合、当該研鑽に係る時間は、当然労働時間となる。
所定労働時間外の研鑽の取り扱いは、本来業務と直接の関連性がなく、かつ上司の明示・黙示によらず行われる限り、在院で行う場合でも労働時間に該当しないが、上司の明示・黙示の指示により行われる場合には、本来業務と直接の関連性はなくとも労働時間となる。また、「一般診療における新たな知識、技能習得のための学習」、「学位や専門医取得のための研究及び論文作成」、「手技向上のための手術見学」など、研鑽の類型ごとに判断のための基本的考え方が示されている。医師の宿日直許可基準の許可申請後の流れとしては、労働基準監督官による宿日直業務に従事する医師等へのヒアリングや仮眠スペースの確認等が原則実地で行われ、申請書類の内容が事実に即しているか確認する。認められた場合は、直近数ヵ月で許可書が交付される。

        ◇

 講演終了後、座長の鈴木副会長の進行により意見交換が行われた。
 裁量労働制、自由意志に基づく兼業の取扱い、宿日直許可基準等について質問があり、宿日直勤務制限について、上田課長から「基準には明確に、宿直は週1回、日直は月1回が限度と書いてあるので、許可を出す際にもそこは守ってもらうことになる。ただし、地域医療との関係上それでも現実として難しいとの問題もあるので、常勤医のほか管理者も含めて回すこともあり得ると思っている。何とか週1回に近づける体制を組んでいただいた上で、総合的に勘案して許可するかどうかを判断するので、最大限の頑張りを見せていただき、週2回というような場合でも、個別に相談いただければと思っている」と話された。また、松本日医常任理事からは、「許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、『原則として宿直業務は週1回、日直業務は月1回を限度とすること。ただし当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべての者に宿直又は日直をさせてもなお不足であり、かつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可される場合がある』とあり、許可された事例もあると伺っているが、全て無制限に認められている訳ではない」と話された。

        ◇

 最後に主催者を代表して本講習会の講師の方々に謝意を述べたい。


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