体験談

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男性医師と育児休業/NTT東日本札幌病院泌尿器科 進藤哲哉

NTT東日本札幌病院 泌尿器科 進藤 哲哉


男性の育児参加が比較的世の中に浸透してきておりますが、育児休業取得率は相変わらず伸び悩んでいる状況と思います。まして私達の医師という職業の特性上、常にスキルアップを求められる立場であり育児休業とは縁遠い世界と思っておりました。
しかし平成23年7月から9月の2ヶ月程度育児休業をとることができ、非常に充実した時間を過ごすことができました。男性医師と育児休業に関して私の経験を投稿させて頂きます。
私の妻は3歳年上の外科医であり、現在では7歳、3歳、2歳の子供がおります。私も妻も両親は道外在住であり、定期的な協力をお願いすることは困難な状況でした。妻は大学病院の外科医として、私は泌尿器科医として勤務しておりました。3人目が生まれる前までは育児も思いついた時に手伝う程度でしたが3人となると夫婦で分担しなくては夫婦で医師を続けることが困難になってきました。
育児休業を取得した平成23年に私は卒後7年目で泌尿器科専門医を取得したばかりで妻は卒後10年目でした。どうしても育児に関する負担は妻に多くかかり、キャリアアップしたい気持ちと母親として子供たちをきちんと育てなければいけないという仕事と家庭の間での葛藤が日々彼女の中で強くなっていたと感じました。私に協力を求められることもしばしばありましたが、「これ以上(家庭のことは)できない」と、とても協力的とは言えない台詞を放ったこともたびたびで彼女の中では不満は大きくなっていったのでしょう。
そんな中で彼女に「できない、できないって言っていたらそれ以上議論の余地がないでしょう?」と言われ、協調する姿勢に欠けている点を指摘されました。二人で医師を継続するために私も可能な限り家庭における役割を担い、問題が出てくればその都度相談し、解決していくスタンスに挑戦してみることにしました。そこで幾つかの育児における目標を設定しました。1)余裕のある精神状態で子供と接する、2)三人目の育児には積極的に関わる、3)夫婦で仕事を継続するために方法を模索する姿勢を持つ。その目標に近づくためには家庭にいる時間が必要でした。この時期の大学病院での勤務は非常に多忙で当直業務も月6-7回程度、帰宅時間は20:00-25:00だったと思います。この状況ではとても目標を達成できそうにないと感じ、思い切って育児休暇を取得してみようかと考えました。ただし私自身専門医資格を取得したばかりの若輩者であり、まず周囲に相談する必要があると考えました。当時の教授、および准教授、教室長や同僚にも相談してみました。戸惑いの声もなかったわけではありませんが、想定していたよりも肯定的な意見が多く2ヶ月程度の休業を現実的に考えました。その一方で大学病院は様々な地域に医師を派遣し北海道の地域医療を支えているという側面がありましたので、診療医師が一人いなくなると周囲に負担を強いることとなるのも事実であり、以下のような方法をとりました。育児休業法による育児休業ではなく、大学との雇用関係を一時的に変更し勤務時間を極めて少ないものとし、地域医療機関への出張は不定期に行くこととしました。このような形をとることで、微力ながら泌尿器科教室の業務にも貢献し育児のための時間を確保することも可能になると考えました。

2ヶ月間の間、子供たちと非常に多くの時間を過ごすことができました。育児、家事が如何に大変であるかを痛感しました。妻が仕事に出ている時はミルクを与えましたが、哺乳瓶から吸うことができなくて7時間も悪戦苦闘しました(これは後に哺乳瓶の吸い口を変更することで簡単に解決できましたが…)。保育園の送迎や子供たちの食事、洗濯などを自分でしてみることによって実際にどの程度の時間がかかって、どのようなストレスがたまるのかも良く理解できました。また父親と母親の家庭における役割を非常に意識させられましたし、分担しお互いに協力することでより良い家庭環境で育児が行うことができると考えました。出産する女性医師のキャリアアップは男性医師のように一定期間仕事に没頭するのではなく、長期間かけて少しずつ形成されるのではないかと想像します。それ故、限定的な期間の休業では医師としての妻のキャリアアップのサポートにはほとんどならないと思いますが、育児休業を取得し家庭での夫婦の足並みを揃え、協調する姿勢を見せることは仕事を継続する母親にとって精神的なサポートになり得ると感じました。
実際に私たちは二人で医師を継続するために、認可外保育所や学童保育所の利用、家事代行サービス、NPO法人による病児保育や送迎など考えられる方法を利用して何とか維持している状態です。短期的視点に立てば現在の生活スタイルは、共働きであることの経済的メリットが極めて小さく、子育ての面でも不安は尽きません。しかし長期的に考えれば、妻が医師を継続することは多くの社会的意義があり、双方が可能な限り補い合い、家庭生活を形成していくという点で子育ての点からも大いにメリットがあると考えております。
育児休業を取得する意義は多いにあると感じましたが、実際には男性医師が取得するには様々な制約があるでしょう。職場の理解や、その職場の勤続年数、また卒後年次やこれまでの経験などにより実際には困難なことが多いと思います。職場の諸先輩方や同僚、後輩の皆さまに感謝したいと思います。今後も困難なことが多くあると思いますが、安定した家庭環境を子供に与えながら、夫婦で医師を続けていく方法を模索し、より良い医療を提供できるよう精進したいと思います。


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