体験談

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先輩に学ぶキャリアの積み方・活かし方でお話しをしました。/医療法人稲生会生涯医療クリニックさっぽろ 木村 直子

 平成28年5月13日(金)〜15日(日)ロイトン札幌ならびにさっぽろ芸術文化の館で開催された第119回日本小児科学会学術集会 特別企画1「先輩に学ぶキャリアの積み方・活かし方〜Subspecialtyを考えるpart2〜」では、相談窓口を利用された先生の発表があり、当相談窓口事業の紹介を含めてお話されましたので、その内容をご紹介します。




在宅医療は女性に向いているか。
異動する伴侶に伴いながらのキャリアの積み方
  医療法人稲生会生涯医療クリニックさっぽろ
       木村 直子



 今回小児科学会の特別企画「先輩に学ぶキャリアの積み方・活かし方〜subspecialtyを考えるpart2〜」でお話しする機会を頂きました。私に与えられたテーマは「在宅医療は女性に向いているか 異動する伴侶に伴いながらのキャリアの積み方」でした。



 私にこの話が来たのは、夫の転勤が多いこと、実家が遠く核家族であること、4人子供がいることなど、キャリア継続に困難ありと思われる因子を複数持っていることと、小児では珍しい在宅医療をしているという理由からだろうと思います。そこで、私の経歴やキャリア継続について思うこと、小児在宅医療などお話しましたので、ご報告致します。



 私は卒後6年目に結婚して夫に伴い東京に転居しました。それまでは自分の所属する医局から派遣されて勤務していましたが、これからは自分で勤務先を探さなければならなくなりました。



 まずは小児神経専門医を取得することを目標にして、小児神経のサブスペシャリティレジデントを募集している病院に応募しました。採用が決まった直後に第一子の妊娠が判明しました。勤務前からこの状況では勤務先に迷惑がかかると思い、研修を辞退することを申し出たのですが、私の上司は「それは気にせずいらっしゃい」と言ってくださいました。私の上司は、ご自身も4人お子さんのおられる女医さんで、優秀かつ性格もさっぱりした、女医の憧れの的でした。その先生のおかげで私は小児神経専門医を取得でき、仕事も続けることができました。あの時もし研修を辞退することになっていたら、今頃働いていなかっただろうなと思います。




 その後東京、広島、札幌と転々としながら計4人の子供に恵まれ、現在では小児の在宅医療診療所で非常勤医師として働いています。幸いな事に、全く仕事から離れることがないのは、様々なサポートのお陰だと感謝しています。


 

 子供の出産育児に加え転居もあり、しかも核家族となると、働くことは簡単でないと言わざるを得ません。まず勤務できる環境作りが大切ですが、保育園に入れるかどうか、ここから躓くことも多いです。特に院内保育園がない場合は、昨今の保育園事情の通りの状況ですので、認可保育園に入れないこともあります。私も以前、子供3人を認可外保育園に預けましたが、毎朝お弁当を作るのはかなりの負担でした。が、「運動会のお弁当作りブルー病が軽症化する(完治する、ではないです・・)!」など前向きに考え、頑張りました。





 話がそれましたが、保育園、学童保育など通常保育していただける場所が確保できたとしても、子供が病気などの緊急時の対応も前もって考えておく必要があります。札幌に来てからは、北海道医師会の女性医師等支援相談窓口に相談し、小林さんには大変良くしていただきました。子供が病気の際、親に代わり家で看病してくださる「緊急サポートセンター」にもこちらから登録していただき、実際に子供が病気の際に何度かお願いしました。また、こちらでは育児サポート、家事サポート、介護サポートなど支援先も紹介していただけます。そして仕事を続けられるかどうかは、このような自らの環境づくり以上に、いかに理解のある素敵な職場に出会えるかが肝心と思います。現在の職場はとても理解のあるところかつ、やりがいのある場所であるため、私自身のワーク・ライフ・バランスは満足できるものになっています。



 現在私は在宅医療をしていますが、育児や家族の介護、ご自身の病気などで様々な制約がある医師に在宅医療はむいていると感じます。そのような状況であることは、普通に考えるとかなりのディスアドバンテージですが、裏を返すと在宅医療を受ける方の状況や心情を理解できるということが最大のアドバンテージであると考えます。患者さんのご自宅に伺って生活を見るということ、これは通常の外来診療ではできないことです。また、一般的にドクターは弱いと思われる福祉、教育の分野の理解が深まるのも良い点です。そして、在宅医療は患者さんのご自宅にお伺いするため、患者さんが予定変更に承諾して下さることが多いです。自分が急に休むことになった場合に、関係者に迷惑をかけているという心理的負担が軽減されます。これはかなりのメリットではないかと思っています。


 病院でバリバリ働きたいけれど現在の環境では難しいかな、と悩んでおられる先生方も、一時的であれ在宅医療を経験することは今後のご自身の診療にとても役立つと思いますので、是非ご一考下さい。


 藤井先生をはじめ、支援窓口のコーディネーターをされている先生方のお話はとても勉強になりますし、自分も頑張ろうという気になります。どういう状況であれ、仕事を続けるという気持ちを持っていれば、少しずつでも道は開けていくのかなと感じます。これからも「置かれた場所で咲きなさい」の言葉を胸に、頑張っていきたいと思います。


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