体験談

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出産、学位取得、専門医試験受験を振り返って/函館五稜郭病院 病理診断科 計良 淑子

 
函館五稜郭病院 病理診断科 計良淑子

はじめに

 いざ出産してみると、育児そのもの、家庭と仕事の両立は想像以上に大変でした。仕事を継続して専門医を取得するまでどう過ごしていけばいいのだろうかと悩み、同じような経験をされたメンターとなる方がいればいいなと思いました。

 以下、ネガティブな感想もありますが、どなたかの参考になれば幸いです。


育児を控えた方へのススメ

・夫も家事要員に育てる/育つ

・職住近接で時間短縮

・保育園は職場より自宅の近くの方が楽

・近居家族の恩恵は絶大!!

・休日に休めなくなるので、とにかく体力をつける

・家事効率化・外注化は時間がかかるため、妊娠中から

 準備

例)ルンバを使うなら、床に物を置かない環境を作る

  食器洗い機に合わせた食器選択・並べ方を模索

  家事代行・ベビーシッターの利用前に、貴重品管理

  方法を考慮

  新しい家電製品のメンテナンスに慣れる


ワーク・ライフ・バランスに思うこと

 私は出産後に診断能力が上げられなかったため、大きな焦燥感を抱えました。初期研修後5年は仕事を覚えることに専念したほうが良かったかもしれないとの思いがあります(専門医取得後はまた違った苦労があるのでしょうが)。

 娘が0〜2歳頃は、育児に必死かつ診断そのものがおぼつかない状況でしたので、その時点ではワーク・ライフ・バランスを十分に考えるには至りませんでした。ただ、もっと上司や同僚に家庭状況や精神状態を話して、十分にコミュニケーションをとる必要があったと思います。

 今後は、娘の弁当作りや学習面や習い事のサポート、趣味の市民オーケストラでのヴィオラ演奏活動の再開など、生活面をより充実させていきたいと思っています。親の介護のことも考えます。

 (その後、市民オケに入団しましたが、残念ながら現在休団中)


私のワークライフバランス


札医大 病理部(娘0−2歳)

☆育児休暇は取得せず

☆切り出し・解剖当番は各週1回

☆就労時間 9:00〜17:30

☆院生として臨床研究・論文執筆並行

☆仕事でミス頻発、論文も進まずに焦る

◆細切れ睡眠、子連れ通勤で疲労困憊

◆寝かしつけ・夜泣きが余りに大変

◆母乳トラブル、予防接種、離乳食、体調管理、卒乳、歯磨きなど考えることばかりだった

◆夫は家庭に尽くしてくれるも不在がち

◆札幌市ファミリーサポートや子ども緊急サポートネットワーク(病児保育)を利用


帯広厚生病院(娘3−4歳)

☆診断技術を磨こうと背水の陣で臨む

☆上司と2人体制

☆切り出し・解剖当番は毎日

☆就労時間 6:30〜19:00

☆病理検体はほぼ全例の下書きをする

☆病理解剖もほぼ全例執刀する

☆大学院修了

◆夫は同じ病院→市内他病院へ異動

◆夫は朝の支度、保育所送り等を担当

◆車で1時間の所に住む両親の支援あり

◆病院内の病児保育を利用

◆娘の夜泣きが始まり、食事・排泄は徐々に自立、育児が楽しくなる


函館五稜郭病院(娘5−6歳)

☆まず病理専門医合格を目標とする

☆専門医取得直後から単独業務開始

☆上司と2人体制

☆切り出しは毎日、解剖は分担

☆就労時間は帯広同様、月1で当番あり

☆娘のことで急に休む可能性があるので、診断は前倒しして進める

◆夫は市内の他病院勤務

◆朝の支度、保育園送りは夫が担当

◆当直・娘の体調不良の際は、市内に住む夫の両親の援助あり

◆インフルエンザ、溶連菌感染症の際に市内病児保育を利用


産後の”アレ”はなんだったのか?

・産後1年半程、家庭内で常時緊張が解けない状態が持続

・記憶力・認知力が職務・日常生活に支障を来すほど障害された

例)教科書が読解できない、産前に覚えたことが思い出しにくい

  会話の内容が覚えられない、出張の予定を忘れる

・相談しても夫に理解されない、仕事・家庭に邁進できる夫への嫉妬

・治療できる・すべきものかわからない(典型的な産後鬱症状には該当せず、精神科/心療内科の新患予約は1ヶ月以上待つため結局未受診)

・育児の影響が大きいので、娘の成長とともに改善することに期待して何とか踏み留まる

・産後3年かけて徐々に回復した


その後

同じ環境で常勤医として働いています。

組織診7000件/年、細胞診12000件/年もあるので大変です…。

娘は小学1年生になりました。

入学に合わせ、職場から徒歩1分の所に転居し、職場から行きやすい学校になんとか学区外から入りました。

下校後は、手作りおやつと昼食(休日)が出る学童のお世話になっています。

小学校のPTA、学童の保護者会活動は夫と分担していく予定です。


 今はやはり産後鬱だったと思っています。

                                                                                   




※日本病理学会総会2016年金沢の特別企画セッション「徒然病理医絵巻vol.1」でポスター発表した内容を、今年のセッションで再掲されることになり、当相談窓口のホームページにもご投稿いただきました。





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