パニック障害

 パニック障害という病気は、特にパニックを起こす原因がないのに突然、動悸(どうき)、呼吸が苦しくなるなどの発作が起こり、パニック状態になります。安静にしているときや、睡眠中にも、いきなりパニック発作が襲ってくることがあります。
かつては不安神経症、過呼吸発作、心臓神経症などの名前で呼ばれていました。また、若い女性に断然多く、女性の発作が男性の2、3倍にも上り、その多くが10歳代後半から20歳にかけて発症します。
 病因は脳の神経伝達物質の異常であることが明らかになりました。パニック発作は発作を起こしやすい準備段階(生まれながらの素因や成育環境)ができているところに、ちょっとした変化やストレスが加わると、引き起こされると考えられています。
 引き起こされると、発汗、震え、感覚の麻痺(まひ)、めまい、ふらつき、動悸、頻脈、呼吸困難、胸痛などの症状が体に現れます。こうした症状が突然始まり、10分くらいでピークに達し、このまま死んでしまうのではないかという不安に襲われます。慢性化すると、次はいつ起こるのだろう(予期不安)と常に不安に悩まされたり、電車や飛行機など発作が起きても助けを得られないような状況を避け、家に閉じこもるようになります(広場恐怖)。
 患者さんは発作を繰り返しているうちに、不安や恐怖感にがんじがらめになり、そのことがさらに次の発作を誘発するという悪循環に陥ります。
薬物療法として抗うつ薬や抗不安薬のほか、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が効果的です。
 精神療法として患者さんの思い込みを修正し、不安を取り除く認知療法、電車など患者さんが避けるような状態を体験させて、徐々に心身を慣らしていく行動療法が行われています。
 このような治療によって患者さんの70%は比較的短期間のうちによくなります。残りの30%の人は気長に治療を続けることで、徐々に症状が改善されていきます。

[千葉 泰二 三愛病院]


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