心身症と診療内科

 心身症や心療内科については最近、一般によく知られるようになってきました。しかし、まだ一部の人は神経内科や精神科と混同している人もいるようですので、今回はこれらについて正しく理解していただくために説明したいと思います。
 心身症については、日本心身医学会で次のように定義しています。「心身症とは、身体病の中でその発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、器質的(形態的)ないしは機能的な障害が認められる病態をいう」。
 昔から「病は気から」という諺(ことわざ)がありますが、最近では特にさまざまな問題を抱えて、不安や葛藤(かっとう)状態に陥ったり、家庭や職場や学校などでストレスを強く受けている人が多くなり、そのような状況が身体病の誘因や原因となったり、今まで持っていた病気の経過に悪影響を及ぼしたりしています。
 このように、心とからだは一般に考えられている以上に密接な関係があります。このような病気は、単にからだだけ診るのではなく、心の苦しみや社会の中で受けているさまざまなストレスに目を向けて治療しなければ、本当の癒(いや)しにつながりません。
 従って、心療内科の診療においては十分な身体面の検査を行い、病気の種類と程度を性格に把握すると同時に、心理的問診や心理検査等を用いて心理的背景を把握すること、および治療の面でも身体的治療と心理治療の巧みな組み合わせが特に重要となります。
 心身医療は、このようにして身体の病気を生み出している心の状態や生活環境とからだの関係についてともに考え、それに対する方法を治療に生かしていくことを行う医療です。
 心療内科は平成8年より正式に標榜科として内科や外科と同様、一つの独立した診療科として厚生省から認定されています。

[松田 幹人 松田内科クリニック院長]


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