甲状腺の病気

甲状腺の病気は女性にとても多く、20人に1人がかかっているといわれています。甲状腺はチョウが羽を開いたような形で気管に付いています。その役目は、血液から取り込んだヨードを主原料として、甲状腺ホルモン(身体の新陳代謝を促す働き)を合成し、蓄え、分泌することにあります。
 甲状腺の病気にはいろいろありますが、甲状腺ホルモンに異常が起こる場合と、甲状腺が腫瘍(よう)やのう胞などで腫れる場合に分けると理解しやすいと思われます。前者は血液検査が重要になり、後者は触診や超音波検査(エコー)が重要ですが、病気によってはこれらが同時に必要になることもあります。
 甲状腺ホルモンが多すぎる病気(甲状腺機能亢進症)の代表はバセドー病で、全身の代謝が盛んになり、心臓がドキドキして、疲れやすく、暑がりで汗をかきやすくなります。甲状腺が腫れ、目も飛び出てきます。
 血液検査で甲状腺ホルモンの値などを測定すれば診断できます。治療法は内科的治療法(抗甲状腺剤など)、手術療法(甲状腺亜全摘術)、放射線療法がありますが、日本では内科的治療法が第一選択になることがほとんどです。
 甲状腺ホルモンが少なすぎる病気(甲状腺機能低下症)は、ほとんどが慢性甲状腺炎(橋本病)によるもので、全身の代謝が低下して脈拍が減り、声もかれ、顔や手足がむくんだような状態になります。
 血液検査で簡単に診断がつき、甲状腺ホルモン剤の補充療法を行ないます。橋本病は甲状腺の病気の中で一番多い疾患ですが、そのうち機能低下になる頻度は半分以下で予後の良い病気といえます。橋本病はバセドー病とともに自己免疫疾患と呼ばれ、その病気にかかりやすい体質は遺伝します。血縁者に甲状腺の病気がある場合には一度検査をした方がよいと思われます。
 また、橋本病はヨードを取り過ぎると機能低下症になりやすいという性質があります。バセドー病でも取り過ぎると抗甲状腺剤の効き目が悪くなることがあり、ヨード含有量の特に多い昆布をあまり食べないようにした方が良いと思われます。その他の海藻類では食べ過ぎなければ心配はいりません。そう神経質にならなくてもよいでしょう。
 次に甲状腺に腫瘍がある場合、触診、エコーである程度診断がつきますが、さらに細胞診断で良性か悪性かを診断します。悪性の場合はもちろんr、良性でも3p以上の場合には手術を勧めます。
 女性で血縁者に甲状腺の病気を持っている方がいる場合には、まずは医師の診察を受けエコー、血液検査で甲状腺新患の有無を調べた方が良いと思われます。また、異常を指摘された場合には、定期的に検査を受けましょう。

[上戸 敏彦,かみと耳鼻咽喉科クリニック理事長]


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