パーキンソン病
年だといってあきらめないで

室蘭市は高齢者の人口比率が高いせいでしょうか、ご夫婦で仲良く外出されている光景をよく目にします。
 ある休日に、市内のデパートへ買い物に行きましたところ、ご主人は歩行状態が思わしくないらしく、奥様にエスコートされながら昼下がりの買い物を楽しまれている70歳代前半のご夫婦の姿を拝見しまして、心温かいものを感じました。
 しかし、小生のような神経内科医はすぐに歩行障害の原因は何であろうかという注意に頭が向いてしまい、しばらくご主人の様子を盗み見ておりました。
 顔貎(がんぼう)はやや表情に乏しく、体動は全体的に緩慢、歩行は体を前傾・前屈姿勢に保ちながら小刻みに行い、両方の手ぶりが少なく、右手が小刻みに震えておりました。小生には、ご主人の歩行障害の原因は、パーキンソン病が関連しているように見受けられました。
 みなさんはパーキンソン病という病名をお聞きになったことはあるでしょうか。有名人では旭川在住の今はもうお亡くなりになったある作家の方や、モハメド・アリなどの方々が罹患されていたと聞いております。
 パーキンソン病の最も目につきやすい症状としては手指の震え(振戦)、特に手足をどこかにおいているときにみられる安静時振戦が特徴です。
 その他には、体の動作が全体的にのろくなる無動、筋肉の緊張が強くなり、四肢の動きがぎこちなくなる固縮、体の姿勢を保つことが難しくなり転倒しやすくなる姿勢反射障害などの症状が認められます。
 もちろん、このような症状はパーキンソン病以外の神経変性疾患でもみられることがあり、神経内科医の診察を受けることが重要になります。
 本症の発症原因はいまだ不明な点が多く、国の難病指定を受けていますが、最近は各種薬剤も開発されて、患者さんの身体機能の改善に貢献しております。
 もし、思い当たる症状がある方は「年だから・・・」と諦(あきら)めずに、一度勇気を出して専門医を受診してみてはいかがでしょうか。

[藤兼 正明,ふじかね内科医院神経内科医]


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