逆流性食道炎は21世紀の病気?

最近まで日本では、ピロリ菌と胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍、胃がんが主要な病気とされておりますが、欧米ではGERD(gastroesophageal reflux disease)胃食道逆流症の頻度が非常に高く、17%に及ぶとされております。
 日本でも、この10年間にGERDは0.5%から3%と著しく増えてきました。人口の高齢化、食生活の変化に伴い、GERDはますます増加し、21世紀の病気として最も注目される消化器病となるでしょう。
 逆流性食道炎、あるいはGERDは、胃から食道へ酸などが逆流することによって起こる病気です。その成り立ちは、第1は逆流を防止する機構の障害で、下部食道括約筋の働きや食道の動きの低下など、第2は胃の内容物の増加やそれを排出する能力の遅れなどが挙げられています。
 主な症状は胸やけ、呑酸、おくび、と逆流に関連した症状です。
 診断は問診と内視鏡検査によって行ないますが、両者は必ずしも一致しないのが特徴ともいえます。内視鏡検査は食道がんのチェックのためにも必須です。内視鏡的に観察される食道粘膜の色調の変化とびらんや潰瘍の程度によって、病期を分類します。 治療方針は
@生活指導・・前屈姿勢を避け、腹圧を上げない、コルセットは禁じ、肥満も駄目、寝る時は上半身を高く左下側臥位を取る。
A食事指導・・過食を避け、腹八分目、寝る前の食事をセーブする。内容として、脂肪食、アルコール類、チョコレート、香辛料、柑橘(かんきつ)類などを避ける。
B不適切な併用薬の指導。
C薬物療法・・(イ)消化管運動改善剤(ロ)酸分泌抑制剤、PPI、H2ブロッカーが有効、しかも長期投薬も可能です。
D手術療法・・内科的治療の全く効果のないもの。
 さて、思い当たる方がおられましたら、消化器科専門医を訪れてください。

 [木下 博,きのした内科クリニック院長]


目次に戻る

Copyright (C) 1998 by Muroran Medical Association. All rights reserved.