ドキドキした時

 

通常、正常人では、心臓の鼓動を感じるのは、精神的緊張や運動をしたときぐらいである。しかし、時には突然鼓動が速くなったり、遅くなったり、乱れたり、いわゆる不整脈を感じることがある。不整脈は原則として出現している時に心電図を撮り、不整脈の型、重症度などの判別を受ける必要があり、また一刻を争うような危険な不整脈もあり、自己判断で対処されても困るが、脈を触れることである程度不整脈の種類を推測ができる。

そのためには、自分の平常の脈拍数(心拍数)をまず知ることが大切である。脈拍数は撓骨動脈(手首の親指側)を触れてはかる。通常は間隔が等しく一分間に60−80回触れる。従って、脈拍から得られる情報は,数の多少と規則性の有無だけであるので、医学的には不十分な情報であるが、ある程度推察できるので以下に解説したい。

@徐脈 脈拍数が毎分60以下の場合をいう。脈は規則正しくゆっくり打っているのが感じられる。洞性徐脈は高齢者、運動選手(マラソン、競輪など)、迷走神経緊張症などで見られ、特に治療はいらない。甲状腺機能低下症、脳圧亢(こう)進などの原因でも起こる。毎分45以下の中には完全房室ブロックという緊急を要する疾患もある。 

A頻脈 脈拍数が毎分100以上の場合をいう。脈が規則正しく感じる時と乱れて感じている時とある。規則正しく速い場合には洞性頻脈と上室性頻脈とがある。洞性頻脈は毎分100−150程度であり、健常人で運動、興奮、交感神経緊張などみられる。甲状腺機能亢進症、発熱、貧血などでも認められる。上室性頻拍症、心房粗動があるが、脈からは鑑別が難しい。毎分150以上の脈拍で血圧低下、冷汗、胸部不快などの症状を伴うことが多い。直ちに治療が必要。不規則で頻脈の場合は心房細動である。心房細動は心拍数の方が脈拍歌より多いが、識別するのは難しい。脈がバラバラ乱れ、速い時はこれを念頭に直ちに治療を受ける。

B期外収縮 脈が抜ける、止まる、喉(のど)が詰まるなど、いろいろな表現で訴えられることが多い。図のように、矢印の三拍目が期外収縮で一、ニ拍の間隔より少し早期に出現し、三、四拍目の間隔が一、二拍の間隔より延長している。この延長により、脈が抜けて感じる。期外収縮には上室性と心室性とあるが、心電図を撮らないと分からない。上室性はあまり治療対象にならないが、心室性は心室細動、心室頻拍症と関連しているので検査を受ける必要がある。

日常遭遇する不整脈について脈を取ることによる鑑別を述べたが、不整脈を訴えて受診する際に医師への説明の参考にしていただきたい。

[西里弘二,西里内科循環器科医院]


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