お酒は百薬の長?

 

日本人のアルコール消質量は1960年代から急激に増加しましたが、最近ようやく横ばいの傾向にあります。フランスなど欧米の国々と比較すれば、まだまだ少ないとはいえますが、日本人は遺伝子的にアルコールをうまく処理できない体質の人が半分近くいますので、消費量は既に対等といえるかもしれません。

アルコールは、ほとんどが十二指腸で吸収され肝臓で代謝、無毒化されるのですが、お酒を飲み過ぎると肝臓ばかりではなく、膵臓(すいぞう)、胃、心臓、脳にも障害を来します。

食道癌(がん)、大腸癌との関連も最近指摘されるようになり、注目されています。肝臓や膵臓に病気を起こすほどの酒飲みは、ほとんどがアルコール依存症と言っても過言ではありません。

それではどれくらいのお酒であれば適量といえるのでしょうか。個人差がありますので一概にはいえませんが一合の日本酒を完全に分解するのには三時間ほどかかると考えられています。酒飲みの中で常習といわれる人は三合以上飲む人たちのことだそうです。この辺りを参考に、健康診断の検査結果もよく見て自分の酒量を考えておかれればよろしいと思います。

また、食事をしないでお酒を飲むと、あっという間に血中アルコール濃度が上がってしまいます。高濃度のアルコールが肝臓に向かわないよう割って飲む、ゆっくりと食事をしながら飲む、というのが賢い飲み方でしょう。

さて最後に、酒は百薬の長かということなのですが、このことについてはイエスと言っても良さそうです。例えば、フランスでは心疾患で亡くなる人が比較的少ないのですが、ワインに含まれているポリフェノールが動脈硬化の進展を予防しているらしいということが分かってきていますし、お酒を飲むと善玉コレステロールが増えてくることも知られています。適量であれば必ずしも悪い習慣と考える必要はなさモうです。

[斉藤甲斐之助,若草内科クリニック]


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