乳幼児の事故予防

 

「ちょっと目を離したスキに」「そんなことをするなんて思いもよらなかった」など子供たちがたばこを食べたり、やけどをしたり、階段から落ちたり、親がすまなそうな顔をして病院を受診します。この光景は私が医者になった30年前とあまり変わっていないように思えます。母親は生身の人間です。子供から目を離さないなど不可能なわけです。親が目を離しても良い安全な環境を整備しなくてはなりません。

平成13年度人□動態調査によると、子供の不慮の事故による死亡数(ゼロ歳から14歳)は934人で、その内訳は交通事故死が371人、転倒、転落死が50人、不慮の水死が183人、不慮の窒息死が214人となっておっております。

少子化か危機として叫ばれている時代に予防できたかもしれない事故で、1,000人近い子供たちが命を落としている由々しき事態があります。

死亡事故に至らないまでも子供に多くの負担をかける家庭内の誤飲事故では、毎年変わらずたばこと医薬品が上位を占めております。

事故予防対策としては、子供の精神、運動発達に応じた環境整備が重要です。親の禁止などを理解し始めるのが1歳3カ月以降、理解して行動するようになるのが1歳6カ月以降といわれており、それ以前ではより一層の環境整備が必要です。

もちろん子供の好奇心は旺盛ですので、数回注意してもうすぐ忘れてしまい、好奇心が勝ってしまうことが多いことも事実です。

生後6ヵ月を過ぎるとお座り、ハイハイ、手に触れる物は何でも□に入れるようになります。座卓のある家ではテーブルの上の物を常に片付けましょう。1歳を過ぎると、歩きだします。ベッドの柵(さく)、お風呂の残り湯、バルコニーの高さなど、子供の目線になり注意しましょう。きのうまでできなかったことが突然できるようになるのも子供の発達の特徴です。

室蘭市登別市の母子手帳にも事故予防のページがあります。もう一度よく読んで、子供たちの発達に応じた安全な環境を用意してあげてください。おじいちゃん、おばあちゃんも孫を預かるときは、周りに十分気を配ってください。保護者の発想の転換が事故予防の第一歩です。子供を守るのは大人の責任です。

[稲川  昭,いな川こどもクリニック]


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