介護保険と医療

〜主治医の意見書について〜

 

介護保険制度が開始されてから3年余りが経過しました。

本年度、制度の一部が見直されましたが、制度自体も試行錯誤という部分もあり、発展途上ともいえると思います。しかし、かなりの方々に認知され、制度を利用される方も確実に増えています。ここでは介護保険と医療とのかかわりについて述べてみます。

一般的に、介護保険と医療保険とは全く別の制度上で動いていますが、在宅で療養している場合でも、施設に入って介護を受けていても程度の差はありますが、医療とかわっています。

介護保険を受けるに当たり、市町村の担当窓口に申請した後、指定された調査員の方が申請者の身体状況や日常生活上の障害や不自由な部分などを直接調査に来られます。次に必要なのは医学的な観点から「主治医の意見書」を求められます。これらの調査内容と意見書から介護保険に該当するか否か、または要支援から要介護1から5までの介護度が審査され、認定されます。通常、介護保険を受ける状態の方の多くは何らかの基礎疾患を有していることが多いからです。

意見書の内容は、障害や持病の状態から物忘れなど精神・神経症状、さらに食事や排せつなど日常生活上の状況までにわたっています。この「主治医の意見書」は申請者が“主治医”または“かかりつけ医”として考えている医師を指定して記載してもらうことになります。

慢性的な病気で日ごろ通っている病院・医院があれば、そちらの医師(かかりつけ医)に書いてもらうのが一般的です。突然の脳卒中や骨折など、急性的な疾病によって介護が必要になった場合は、いつもの“かかりつけ医”ではなくても、そちらの担当医師に状態を書いてもらうのが良いと思います。定期的には通っていなくても風邪などで行く施設が決まっている方もそちらの担当医に書いてもらうと良いでしょう。

 日ごろ全く病気と縁がなく、または一切病医院にかかったことのない方は、その旨を申請した際に申し出てください。「診断命令」という少々物々しい書類が送られてきますが、要は一般的な健診程度の診察を受け、現在の身体状況をチェツクし、意見書として記載してもらうということです。

通常、市町村内に意見書を書いてくれる施設が登録されており、最寄りの医療機関を紹介されます。診断命令に基づく意見書以外はどちらの医師でも記載してもよいことになっていますが、意見書を書いてもらう際には単に専門的な病状のほかに、日常的な生活の上で支障のあることをできるだけお話ししておいた方が良いと思います。

複数の科にわたって医療を受けている場合は、主に日常生活上、障害となっている、または不自由を感じている個所の診療を受けている医師に相談するのが良いと思います。急性期を乗り越え在宅で療養される場合や長期療養のため、施設に入所された方は、次の更新申請の際に主治医を変更することもあり得ます。

「主治医の意見書」は、単に介護度の判定資料というだけではなく、適切な介護を受ける上で介護サービス計画作成に利用されることもあります。痛いところ、かゆいところばかりでなく、日常的に困っているところ、以前と比べて変わったところなど、場合によっては家族や周囲の方から見ての状況までお話しいただいても結構ですので普段から“主治医”“かかりつけ医”とのコミニュニケーションをよく取っておいていただきたいものです。

[開田博之,開田医院]


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