下垂体にできる腫瘍

 

下垂体(かすいたい)とは視床下部と呼ばれる脳底部分からぶら下がっている、1センチにも満たない小豆大の小さな器官です。トルコ鞍(あん)と呼ばれる骨のくぼみに埋まっています。骨のくぼみの底は鼻の奥の空洞と薄い骨で隔てられています。骨のくぼみには、ふたをするように視神経(目の神経)が覆っています。

下垂体はいろいろなホルモンをつくる、小粒ながらも非常に重要な内分泌器官です。ここでつくられるホルモンには@成長ホルモン(成長を促す)A甲状腺刺激ホルモン(甲状腺のホルモンを出させる)B副腎皮質刺激ホルモン(副腎のホルモンを出させる)C性腺刺激ホルモン(男性の睾=こう=丸や女性の卵巣を刺激して性ホルモンの調節を行う)Dプロラクチン(女性の乳汁分泌を調節する)E抗利尿ホルモン(尿の調節を行う)Fオキシトシン(分娩=ぶんべん=時の子宮収縮を行う)といったホルモンがあります。

下垂体の病気で最も多いのは腫瘍(しゅよう)、特に下垂体腺腫(せんしゅ)と呼ぱれる良性のできものです。腺腫には、ホルモンを過剰につくるタイプと全くつくらないタイプとがあります。

腺腫のサイズが大きくなるにしたがって、@ホルモン分泌過剰による症状(成長ホルモン過剰による巨人症や手足が大きくなる末端肥大症、プロラクチン過剰による乳汁分泌や無月経・不妊など)、あるいは分泌不足による症状(活動性の低下、疲れやすい、薄い尿がたくさん出過ぎるなど)A視神経が圧迫されて起こる症状(視力低下や視野の障害)B視床下部が圧迫されて起こる症状(体温・食欲の異常、急激なやせや肥満など)といった症状が出てきます。したがって、産婦人科や眼科を受診した結果、下垂体の腫瘍が疑われて脳神経外科に紹介になるケースが珍しくありません。MRI検査と血液中の下垂体ホルモンを調べることで、比較的容易に診断ができます。

治療法には@手術(鼻側からする方法と脳側からする方法とがあって、多くは前者)A薬B放射線のピンポイント照射(ガンマナイフ治療)の三つがありますが、腫瘍の性質や大きさなどにより、単独あるいは組み合わせて行われます。先に挙けたような症状があって心配のある方は、1度脳神経外科を受診されることをお勤めします。

[井上慶俊,大川原脳神経外科病院]


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