過重労働と健康障害

 

世の中が大変厳しい状況になって各職場で人作費の削減が迫られ、多くの労働者がリストラの対象になり、人減らしは行われたけれど業務の量は変わらない、といった状況の中で、各職場に残った人たちにかかる労働負担が極めて大きくなっております。

平成14年の厚生労働省の統計によりますと、この1年間の過労死と認定された件数は160件と前年の2.8倍になっております。この中で、脳血管障害(脳出血および脳血栓症)、および心筋梗塞(こうそく)の発生やうつ病の発生と時間外労働の長さとの関連が明らかになっており、時閣外労働が月45時間を超過すると、これらの病気の発生が時間とともに多くなってくるようです。

このような過重労働の背景として、経営者経営状態極めて厳しくなったために労働者に過重労働を強いることを余儀なくされているという状況がありますが、一方で、日本の労働者が仕事中毒になりやすいという特性があるように思います。

仕事中毒とは、仕事をすべてに優先して、休むことや趣味や遊びを楽しむことに罪悪感を覚えることをいいます。このような傾向があると、家族とのコミュニケーションの時間が絶対的に少なくなり、また家族より仕事を重視する考えが家族にとって耐えられず、夫婦間の不和から離婚に至ったり、子供の成長にゆがみを来し、登校拒否や家庭内暴力を起こしたりして家庭の崩壊に結び付く可能性があります。

このような過重労働の健康障害の防止のために、厚生労働省では時間外労働をできる限り短縮し、さらに産業医の意見を聴いて適切な就業上の措置を総合的に講ずるように対策を進めています。このような対策を考慮した上で、経営者および過重労働に従事している人たち過重労働いかに健康を害し、最悪の総合、過労死や自殺につながることについて認識を深め、もう一度過重労働を減らす方策について各職場で考えてみる必要があるのではないでしょうか。

[松田幹人,松田内科クリニック]


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