脳卒中を防ぐために

戦後長らく日本人の死亡原因の第一位であった脳卒中は、危険因子の管理や生活習慣の改善などにより死亡率は減少しているものの、発症数からみれば三大死亡原因(癌、脳卒中、心疾患)の中で依然トップを占めています。また、身体的、知的機能低下が生じるため寝たきりや痴ほうの最大原因であり、医療費と介護費に占める割合が最も高い疾患でもあります。

従って、今後未曾有(みぞう)の高齢化社会に突入するわが国において、脳卒中の有効な予防法の確立はますます重要になっています。脳卒中には脳梗塞(こうそく)、脳出血、くも膜下出血がありますが、それぞれ成因や危険因子が異なるので、異なった予防対策が必要です。

@脳出血の危険因子と予防

脳出血は高血圧により血管がもろくなり脳血管が破れ、脳内に出血が起こって脳組織が破壊されるために生じます。従って、脳出血の予防には血圧のコントロールが最も重要であり、食事の塩分を制限し降圧剤(血圧降下剤)を内服することにより血圧を正常に保つ必要があります。飲酒は脳出血の危険因子となるので、控える必要があります。

また、低栄養による低コレステロール血症も脳出血の危険因子となることが知られているので、偏食を改め十分な脂肪やタンパク質を摂取するように心掛けてください。

A脳梗塞の危険因子と予防

脳梗塞は血栓による脳動脈の閉塞により生じ、高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙・心疾患が危険因子となります。高血圧は脳出血のみならず、脳梗塞においても最大の危険因子です。

高血圧自身は自覚症状がないため気付かれないか軽視されやすいのですが、放置すると動脈硬化は確実に進行し、いずれ脳梗塞を発症してしまいます。

糖尿病は食生活の欧米化により生活習慣病としてわが国でも爆発的に増加しており、脳梗塞の危険因子として極めて重要です。

高脂血症も飽食の時代にあって激増しております。コレステロールや中性脂肪の高い人は、コントロールして脳血栓症の原因となる動脈硬化の進行を予防する必要があります。

また、喫煙も脳梗塞の独立した危険因子として注目されています。たばこを1日何十本も吸うヘビースモーカーの血管を調べると、例外なく強い動脈硬化を認めます。一般にたばこ飲みの血液は、濃くドロドロとしています。日々の習慣として十分な水分摂取と万病の元であるストレスを除くための適度な運動をお勧めします。

Bくも膜下出血

 くも膜下出血は、脳動脈瘤(脳の動脈にできた瘤=こぶ)の破裂により生じます。脳動脈瘤は生まれつき血管の壁が弱い人に後天的要因が加わって生じると考えられています。くも膜下出血は家族性に発症しやすいので、近親者にくも膜下出血をおこした方がいる場合には脳ドックを受診して、脳動脈瘤の有無を検査してもらうことが望ましいと考えられます。

C脳ドック

脳の疾患はいったん発症してしまうと、取り返しがつかないことも少なくありません。ある日突然、一家の大黒柱を失ったり、家族の誰かが言葉の障害や手足の麻痺(まひ)を残すなど重大な結果を招く前に“積極的な予防処置”脳ドックを受けられることをお勧めします。

[佐藤宏之,大川原脳神経外科病院診療部長]


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