インフルエンザと風邪

雪が降り積もり、配達された牛乳が凍ってしまっているような寒い日が続いています。このような年は風邪やインフルエンザが例年よりはやりそうな嫌な予感がしています。

昨年の暮れにはインフルエンザの予防注射を受けた方も多いことと思います。マスコミなどで、高病原性鳥インフルエンザについて幾度も報道されたためか、いつもの年より予防接種を希望された方が多いような気がしました。残念ながら現在使用されているワクチンは、アジア各地でこれまで117名が感染し、約60名が死亡した高病原性鳥インフルエンザには効果があるとは言えないようです。

また、予防注射を受けて、その年は風邪一つひかなかったと感謝されることも時々経験しますが、インフルエンザの予防注射は同種の抗原性を持った株のインフルエンザに対してだけ効果があり、いわゆる風邪症候群には効果はないものと考えられています。

インフルエンザは、1、2日の潜伏期の後に突然38度から39度の発熱、筋肉痛、咳(せき)、咽頭(いんとう)痛などの症状が出現しますが、3〜4日くらいで解熱し、おおよそ10日ほどで治癒します。

数年前からは、抗インフルエンザ薬の処方が認められるようになり、発症48時間以内に使用しますとたいてい1日−2日で解熱することが認められています。ただし、症状の出現後48時間を過ぎますと、抗インフルエンザ薬の効果は期待できなくなります。

数年前からインフルエンザ診断キットが使用され、咽頭、あるいは鼻腔(びこう)拭(ぬぐ)い液を調べることにより、かなりの確率でインフルエンザかそうでないかを判定することができるようになりました。

昨年、抗インフルエンザ薬を服用して精神神経系に異常をきたし、死に至ったとされる事例が報道されていましたが、実際の因果関係はまだ分かっていないようです。しかしながら、世界で生産された抗インフルエンザ薬の7割から8割が、日本において使用されているという事実に、これで良いのかどうか考えさせられてしまいます。

何がいいのか悪いのか、いつも、分からなくなる風邪の治療です。暖かくして、水分と栄養をとり、良い睡眠を十分にとっていれば、やがてまた、風薫る季節が巡って来ることと思います。

[斉藤美知子,若草内科クリニック]


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