病気は気から?

日本東洋医学会専門医の塩澤です。「病気は気から」の気とは、陰の気と陽の気のバランスが崩れて病気が起こるという、中国医学の考え方で、気持ちから病気になるという意味ではありません。中国の国名も中華人民共和国で北でも南でも悪く、真ん中が1番良いという意味を持っています。日本的に言えば「過ぎたるはなお及ばざるが如し」です。

例えば卵を1日に1個までなら体に良いが、それ以上食べるとコレステロールが上がるとか、しょうゆは少量なら味付けになるが、大量では自殺に使える。魚の油でもたくさん食べれば中性脂肪が上がる。山菜はミネラルが豊富でたくさん食べると、腎結石が増えるなど、言われてみれば当たり前のことです。

漢方薬はまだ残っている体力を利用して、このバランスを戻して病気を治そうというもので、免疫力、筋力、肝臓の力、などのいろんな体力が弱っている場合は治りが悪いことになります。

主に医療で使われるのはエキス製剤といわれる粉薬です。煎(せん)じ薬では煎じた(草の葉っぱや木の根っこ、木の皮、時にはセミの抜け殻、花などを時間ごとに沸騰したお湯に放り込み、500cc600ccのお湯が250ccになるまで煮詰めたものを布でこし、それをふうふうさましながら飲む)直後では薬の効果があるのですが、しばらく放置しておくと、薬の効き目が薄れてくるなど薬効果が不安定でした。

そこで、その煎じたものをフリーズドライしてインスタントコーヒーのようにしたのがエキス製剤で、そうした状態にすることで効き目が比較的安定化したため、医薬品として認められました。しかし、その材料も植物が多くその質もさまざまです。北海道に住んでいると山菜採りに出掛けられたことがあると思いますが、山で採れるものと畑で採れたものでは味が違いますね。

よく目にする正官荘高麗ニンジンの正官荘とは政府の畑という意味です。当然エキス量は少ない。近ごろ後発品(ジェネリック)が話題になっていますが、漢方薬では同じ名前の薬でも会社によって味さえ全然違っています。機会があれば葛根湯あたりで試してみてください。

もっと面倒なことに、中国では外貨獲得のため一流品は自分のところで漢方の注射薬として使い、二流品を日本に売り付けてくるそうです。ある日本の会社ではわざわざ中国に畑を作ったり、日本でできる物は日本に畑を作り、独自に経営している。また、同じ中国でも生産地によって質が違う。よって漢方では後発品も作りづらいし、安ければよいというわけでもありません。

[塩澤英光,東室蘭医院]


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