おなかの具合いかがですか

腹  痛

味覚の秋、食欲の秋と食に縁のある季節になりました。夏に少し食べ過ぎた、飲み過ぎた、この時期になって、おなかの具合が悪いと感じられる方も少なくないかと存じますが、いかがでしょうか。

 おなかの症状・症候として食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)、腹痛、膨満感、嚥下困難、胸やけ、げっぷ、黄疸(おうだん)、放屁、吐血、下血、血便、粘液便、下痢、便秘などがあります。

 腹痛に関してお話しいたします。個人差による主観的なものが腹痛、人によって表現の仕方もさまざまです。腹痛の部位はその痛みの原因を知るための手掛かりとなります。内臓における病変部の痛みは、その内臓の位置に一致します。痛みが強い場合には放散痛・関連痛という病変部以外の部位で痛みが感じられます。胆石症では右肩、右背部へ放散します。

膵炎(すいえん)では左肩、左背部へ放散します。消化性潰瘍(かいよう)では背部へ放散します。

 痛みは身体に起きた異常を知らせる警告です。強い痛み(急性腹症)であれば誰もが医師の診療を受けます。しかし、我慢できる腹痛だからと放置していませんか。

 腹痛の原因疾患は、消化器系・腎尿路系・婦人科系・筋骨格器系・循環器系・精神生理学系など多くの分野にわたります。

 即刻入院や手術を要するような緊急性のある腹痛でも、初期段階であれば通院で治療できた疾病も多くあります。

 我慢できる腹痛こそ早期に医師の診察を受けないと、緊急性のある腹痛へと悪化する場合があります。

 医師の診察を受ける場合はできるだけ詳しく腹痛についてご説明ください。空腹時や夜間に起こり、食事を取ると軽減する心窩部痛は十二指腸潰瘍に多くあります。胃潰瘍では食後に起こることが多くあります。膵炎や胆石症の腹痛は高脂防食を摂った後に起こることが多くあります。膵炎はお酒を多量に飲んだ後にも起こります。サバ、イカなどの刺し身を摂った後の心窩部痛では、魚に寄生した虫による胃アニサキス症が疑われます。

 消炎鎮痛剤の服用後の心窩部痛は急性胃粘膜病変(俗に言う急性胃炎)が疑われます。急激に発症した腹痛では消化管の穿孔(せんこう)「胃や腸に穴が開くこと」、胆石症、尿路結石症の嵌頓(かんとん)「石が落下して尿管にはまり込むこと」、卵巣の軸捻「ねじれること」、腸の閉塞(へいそく)、腸間膜血管閉塞「血管が詰まること」などが疑われます。比較的急性に発症するものには虫垂炎・膵炎・腹膜炎、徐々に発症する腹痛では機能性異常によるものや炎症性疾患・腫瘍性疾患などが考えられます。

[下地英樹,下地内科外科]


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