社会不安障害について

社会不安障害(SAD)とは、例えば結婚式のスピーチに強いプレッシャーを感じて出席ができなくなったり、他人との食事の席で料理がのどを通らないほど恥ずかしくなるなど、人目を浴びる行動への不安により強い苦痛を感じたり身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障を来すことを言います。

 思春期から成人早期にかけて発症することが多く、慢性的になり人前に出ることを恐れるようになると、「うつ病」などのさらなる精神疾患の引き金となることもあります。

 発生しやすい状況として、権威ある人と面談する、人前での行為や会話、知らない人との会話などがあります。現れやすい症状は、強い不安症状が自律神経に作用しさまざまな身体症状を呈し、人前でおなかが鳴る、顔が赤くほてる、脈が速くなり息苦しくなる、汗をかく、手足・全身・声の震えなどです。

 原因は残念ながらまだはっきりとは分かっていませんが、脳内にあるセロトニンのバランスが崩れてしまうことが発症にかかわっているのではないかと考えられています。脳にはおよそ140億個もの神経細胞があり、それらの神経細胞は、神経伝達物質の制御を受けることで、脳全体の機能を調節しています。セロトニンもそうした神経伝達物質の一つです。

 治療は、薬物療法と精神療法があり、二つの治療法は単独や併用して行われます。薬物療法は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを1年以上継続的に服用し、不安感情を抑えることを目的とし、学校や職場を避ける等の回避行動を減らし、不安時の身体症状の緩和を図ります。

 精神療法は、「認知療法」と「行動療法」を組み合わせて治療が行われるのが一般的です。認知療法は、不安な気持ちが起こるメカニズムを勉強し、不安を引き起こしてしまうパターンを修正できるようにします。行動療法は、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身をさらす「暴露療法」を行います。段階的な目標に沿って次第に身をならしていき、不安症状を改善していきます。

 SADは放っておくと治りづらい病気ですので、早めに精神科・神経科専門医の診察をお勧めします。

[千葉泰二,三愛病院]


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