大腸癌の予防

大腸癌(がん)による死亡者数は年々増加の一途をたどり、2003年には女性ではついに胃癌を抜いて第1位になり、男性でも肺、胃、肝についで第4位であるが、近い将来消化器癌の中で第1位となると予想されている。

 大腸癌の発生には、遺伝的要因に加え、食習慣を含む生活習慣が深くかかわっていることが知られている。わが国においても、肉類や脂肪分の摂取増加が顕著であり、一部大腸癌増加の原因となっている可能性はある。しかし、現在は食事内容の変化より、エネルギーバランスの変化に伴う肥満(内臓肥満)、運動不足、糖尿病(耐糖能異常)が原因と考えられている。近年の糖尿病やメタボリック症候群の増加と大腸癌の増加は軌を一にしていると思われる。

このように大腸癌の一次予防は、単に食事内容だけでなく、全体としてのエネルギー適正摂取、運動の励行など、生活習慣病そのものに対する対策の重要性が示唆される。

 二次予防については、言うまでもなく早期発見、早期治療が原則である。このため、わが国では便潜血反応による大腸癌検診が既に施行され、検診による大腸癌の発見者数は年々増加してきている。しかし、検診率は依然として定率であり、大腸癌患者を減少させる効果をもたらすレベルに程遠いのが現状である。

せっかく検診で便潜血陽性を指摘されても、大腸内視鏡検査に対する心理的抵抗感等のため、精密検査受診率が低くなっている。便潜血検査は早期癌では3〜5割、進行癌では5〜9割は陽性となる。裏を返せば、早期癌で5〜7割、進行癌でも1〜5割は便潜血検査陰性である。従って、便潜血陽性の方はもちろん、陰性でも大腸癌家系の方、メタボリック症候群の方は一度大腸内視鏡検査を受けるのが望ましいと思われる。

大腸癌は早期発見することにより治癒が期待でき、さらに外科手術によらず内視鏡的治療で治癒する可能性のある疾患である。

[野尻秀一,野尻内科消化器科クリニック]


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