手の震えについて

皆さんも重い荷物を長い時間持ったり、テレビゲ−ムをやり過ぎたとき、結婚式でスピーチをしたときなどに手が震えたりした経験はあると思います。このような運動負荷や精神的緊張に伴う震えは一過性のものであり、生理的な現象ですので心配はありません。

一方、この震えも食事、書字、着衣などの日常生活における通常の動作に伴う場合は、生活に支障を来してしまい、その背景に病気が隠れている場合もあるために注意が必要です。

震えが見られる病気には、本態性振戦、パーキソソソ病、甲状腺機能亢(こう)進症、脊髄(せきずい)小脳変性症などといろいろありますが、本態性振戦の頻度が多いようです。この病気の症状は、手や頭の震え(振戦)だけです。ペンを握って宇を書くとき、おはしやお茶わんを持って食事をするとき、上着のボタンをはめるときや手を前方へ伸ばしたときなど、動作や姿勢により震えが見られます。

また、人前などで緊張したときにはよりひどく震えてしまいます。発病は成人以降が多いようで、時に両親などの身内にも同じように震えている方か多いのも特徴です。この病気の原因はいまだ完全には解明されていませんが、自律神経系の中の交感神経の働きの亢進が病態とされています。そのため、治療にもこの交感神経系(アドレナリン系)の活動を抑える薬剤(β遮断薬)が用いられます。この薬は高血圧や不整脈などの治療に使われているもので、本態性振戦の患者さんにも、ある程度の効果があることか知られています。ただし、徐脈や気管支喘息(ぜんそく)をお持ちの患者さんは内服できない場合もありますので、医師と相談されてみてください。

[藤兼正明,ふじかね内科医院]


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