下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤(りゅう)は、ふくらはぎや太ももの表面を走る静脈が拡張、蛇行し、みみず腫れ状の盛り上がりができる病気です。立ち仕事をする人や、出産後の女性に多く、足がむくみ、進行すると患部に皮膚炎、色素沈着などを起こしてきます。特に女性の場合、短いスカートがはけないなど、美容上の悩みを抱えている方が少なくありません。

下肢静脈には、血液が下に戻らないように逆流を防ぐ弁がたくさん付いています。この弁が次々と壊れて表在(ひょうざい)静脈に血液の逆流が起きると、静脈がうっ血し、太くなって静脈瘤になります。下肢の静脈には骨のすぐ横を走る深部(しんぶ)静脈と皮下を走る表在静脈の2系統があり、両者はひざと股(こ)関節の高さで合流します。静脈瘤ができるのは表在静脈の方です。

診察では、触診や超音波検査などによって、どの部位の表在静脈が壊れているかを確かめます。

治療ですが、薬の内服では治りません。症状が軽い方、手術を希望されない方、何らかの理由で手術ができない方は、弾性ストッキング装用で静脈瘤を圧迫しながら経過を見ます。それ以外のケースが外科治療の適応となり、具体的には3種類の方法があります。

@硬化療法(こうかりょうほう)静脈瘤内に硬化剤という薬を注射して血管内に人為的に炎症を起こし、くっつけて潰してしまう方法です。

A高位結紮術(こういけっさつじゅつ)局所麻酔下に皮膚を小切開し、壊れた表在静脈を深部静脈と合流する直前の高い位置で糸で結んでしまう方法です。

B皮下抜去術(ひかばっきょじゅつ=ストリッピング)壊れた表在静脈に特殊なワイヤを通して引き抜いてしまう方法です。以前は腰椎(ようつい)麻酔で行っていましたが、最近は局所麻酔下に行われるようになりました。症例によって、このおのおのを単独で行ったり、@とA、@とBを組み合わせたりして行います。いずれも保険が適用されます。また、ほとんどの外科的治療は日帰りが可能です。通院期間は症例にもよりますが、およそ1か月前後です。

「太い静脈をつぶしたり結んだりして大丈夫ですか?」といった質問をよく受けます。先にも述べた通り、静脈には表在静脈と深部静脈があり、深部静脈が正常であれば、表在静脈を手術しても全く問題はありません。

静脈瘤化した表在静脈は深部静脈がせっかく持ち上げた血液を合流部から足先に逆流で戻していた訳ですから、治療によって血液の流れはむしろ改善されるのです。下肢静脈瘤でお悩みの方は、お近くの外科の先生に相談されるとよろしいかと思います

[堀尾昌司,堀尾医院]


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